20.本当に金が好きらしいな。
「加えて、一つの部門につき御用達は一つのみとして、どこを御用達に決めたかは広く公表します。偽装が不可能――というか、しても無駄な状態を作り出すんです。そうすれば――って、燕星さん、聞いてます?」
「はは」
何やら燕星が手元ではなく自分の顔を見つめているのに気づいて、蘭華が不満げにぶすくれた。
その拗ねたような口調に、燕星が思わず笑みをこぼした。
「本当に金が好きらしいな。子どもみたいだ」
燕星がおかしそうに笑う。
金のためなら自分の身を投げうつくせに、人を金勘定の道具のように見るくせに。
そういったところは子どもらしくないのに、金の正しい使い道を考えて輝く瞳は、間違いなく少女のそれで。
呆れるやら同情するやら、――恐ろしいやら、安心するやら。
一言では言い表せない感情に、燕星は思わず笑みを浮かべてしまっていた。
一言で言うなら――変なやつだ。
そう思ったのだ。
それがにじみ出ている燕星の視線を受けて、蘭華はさらに不満げに唇を尖らせる。
何だ、女子どもは無理をするな、とかどうこう言っていたくせに。
先に子ども扱いしたのは燕星なのに、なぜ今さらそんなことで笑われるのか。蘭華にはそれがわからなかった。
「ていうか、千人ってやっぱり多すぎませんか? 管理者の目が行き届かないから不正が起きるんですよ」
「後宮に入内している妃だけでも百人かそこらだからな。管理運営にも人手がいる」
「百人がそもそも多いんですって」
蘭華が顔を顰める。
初日に大広間に集まった妃たちの姿を思い出していた。
一番前の四人と、その後ろの二十人くらいまでは辛うじて顔が見えたが、その後ろなんて有象無象、何人いるかすら判然としない有様だった。
当然、どこの誰かも分からない。
何人か増えたり減ったりしても誰も気づかないんじゃないか。そのくらいの状況だった。
「そんなにいても、本物の帝が毎晩毎晩一生懸命通ったって、全員お手付きになんて出来ないじゃないですか」
「それは、そうだな」
「じゃあ無駄ですよ! 妃が減れば女官も減らせる、人件費削減ですよ!」
ふんふんと鼻息も荒く言う蘭華に、燕星がやれやれとため息をつく。
「だがいきなり辞めさせるわけにはいかない。妃にも女官にも給金を払う約束になっている」
「それですよ」
蘭華がぱちんと、指を鳴らした。
燕星はまさか給金を払わないと言い出すのかと思ったが――そして言いそうだなとも思ったが――蘭華が口にした言葉は、彼の予想とは異なるものだった。
「後宮より稼げるところがあるって分かったら、どうでしょう?」




