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インターミッション5 水着を買いに

  歴史的インターミッション5


 「ヘルヒャンは操舵、ミュルガルデはヘルヒャンの側について補助と、万一怪我人が出た時の救護を頼む」


 バルティゴ都市国家連邦歴18年6月30日。

梅雨が開け、今年も例年通り暑い夏が訪れていた。

この日の夜、イチはルーナハイムのリビングにて次に挑む依頼の為のブリーフィングを行っていた。

今回はエルビアニカ、タオ・メイメイ、シーナ、イルハ、ヘルヒャン、ミュルガルデの全員が揃って各々ソファに着いていた。夜なので皆、下着姿であったり部屋着姿であったりする。

男の目のない女子寮の現実などこんなものだ。全裸の者がいないだけマシであろう。

そう言えば7人全員が揃って依頼に臨むのは連続下着泥棒事件以来か。


 「私とメイメイ、エルビアニカが中心になって獲物を狙う。イルハとシーナは補助してくれ」


 イチは机の上に魔導漁船の俯瞰図を広げ、それぞれに見立てて駒を配置している


 「獲物を一匹確保したら、頭を切り取って網に入れる。イルハには手間をかける事になるかもな。基本は大者狙いだ。雑魚はそのまま海に捨て置く方針でいこう」


 イチの表情は真剣そのものである。

彼女はどんな依頼を前にしても油断する事なく事前計画を立てていたと伝えられている。

それは2日後に控える依頼でも同じ事だった。


 「相手は単細胞生物だが、油断すれば海から帰ってこれなくなるぞ。各自気を抜かず、役割を果たす事。_____いいな!?」


 イチは図面から顔を上げて一同に喝を入れるために問うた。

問うたのだが、しかし。


 「メイメイさん水着はどうしますか? シーナお気に入りがありすぎてどうしようか今から迷います〜! 可愛いワンピースタイプにしようか、大胆にビキニなんか新調しちゃったりして、………それで素敵な殿方にナンパされたりして、あ〜ん! シーナどうしたらいいのでしょうか!?」


 これはおさげ髪のシーナ・アハトゼヘル。

彼女は喧しい事で有名だ。部屋着姿。


 「知らないわよ。勝手にすればいいじゃない」


 つんけんと答えたのはハーフエルフのタオ・メイメイ。

彼女はツンデレである。部屋着姿。


 「あんた達、若いからって気を抜いてるとすぐシミができるよ! 日焼け止めを忘れるんじゃないよ!」


 これはエルビアニカ。彼女は今回の事件で活躍したひとり。

ショーツとタオルだけの半裸。


 「あの、あの、パラソルも用意しなきゃですよね」


 これはミュルガルデ。彼女も今回の事件で出番があったが、活躍の場面は少なかった。部屋着姿。


 「荷物持ちはお任せください! 僕、こういう時の為に鍛えてるんですから!」


 目を輝かせてそう言うのはイルハ。一人称は僕だがグラマラスな少女だ。下は部屋着、上は下着だけ。


 「あーしが開発した新兵器、早速試せるとなると楽しみだぜ」


 ハーフコボルトのヘルヒャンは技師である。どうやら次の依頼の為に新兵器を開発したらしい。Tシャツにショーツというスタイル。


 以上、イチの冒険者仲間6人。

誰もちゃんとイチの話を聞いていなかったのである。


 「お前ら、ちゃんと人の話を聞けってば!」


 イチは思わずいわゆる涙目状態で大声を出した。


 「けどよぉ、去年一昨年と同じだろ?」


 そう言うのはヘルヒャン。

彼女の言う通り、今回の依頼は海の害獣駆除で、これは何度か受けた事のある依頼で、難易度も高くない。

どちらかと言うと恒例行事のお祭りのようなノリで冒険者達が参加する性質のものなのだが、詳しくは次章を読んでいただきたい。


 「それでもブリーフィングは大切なんだ! 毎年同じ内容でもやらないといけないんだ!」


 イチの言っている事は正しい。正しいのだが客観的に見て、どちらかと言えばイチのほうがダダをこねているように見えるのは不思議である。


 「イチちゃん、気持ちはわかるけど大丈夫だって。もうみんな慣れてんだから。それよりせっかく海にバカンスなんだから、楽しい事考えようぜい」


 そう言ってエルビアニカは明日自分が被る予定の麦わら帽子をイチに被せて笑った。


 「今バカンスって言ったな! 依頼だぞ! 遊びじゃないんだぞ!」


 イチは麦わら帽子を被ったままダンダンと机を叩いた。


 「遊べる依頼って事でしょ。知らないけど」


 事も無げに言うタオ・メイメイ。余談ながら彼女はこの時の為に水中ゴーグルとシュノーケルを新しく買っていた。


 「遊び半分で行って、危ない目に遭っても知らないからな! 明日、準備を怠らないように! ブリーフィング、終わり!」


 イチはそれだけ言うと両手で机を叩いて立ち上がり、エルビアニカの麦わら帽子を被ったまま肩を怒らせ大股で自分の部屋に戻って行ってしまった。


 「大丈夫でしょうか? イチさん、お怒りでしたよ?」


 不安気な顔をするミュルガルデにエルビアニカは笑って言った。


 「大丈夫さ。あんな風に見えて、実は一番楽しみにしてるのはあの子なんだから。嘘だと思うなら、明日イチが出かけたら尾行してみな。面白いもんが見れるよ」


 「はぁ………?」


 首を捻るミュルガルデ。

そしてそのエルビアニカとミュルガルデの会話をさりげなく聞いている者がいたのである。



 その翌日、昼過ぎ。

スウィートバウム冒険者通りにあるヘルメェス・ランジェリーショップ。

ここは将来的に若い婦女子に絶大な支持を集める事となる下着商店だが、この時は一部を除いてまだ無名と言って差し支えなかった。

店主のヘルメェスは男でありながらランジェリーを愛するあまり己の肉体を切り落とした漢の中の漢である。


 「な、なあヘルメェス、この水着はどうだろう?少し派手じゃないかな」


 「舐めてんじゃないわよ! そんなお乳の谷間も見えない水着、派手も糞もないわよ!」


 そのヘルメェス・ランジェリーショップ奥にある更衣室のカーテンが開き水着姿のイチが登場した。

ヘルメェスがデザインしたイチの水着は見事な仕上がりであった。


 それはイチがヘルメェスにオーダーした通り、冒険時の機能性を重視しつつ、あまり露出はさせないで、尚且つ可愛いさも確保した紺色の水着で、

上はホルターネック式になっていて、胸の谷間が見えないように露出を抑えつつ、肩から手首までをカバーする生地や腰回りの生地は部分的にガンベルトやポーチを取り付けても水着が破損しないように補強されており、更に大胆にハイレグカットされた股間部分が可愛らしさとエッチさを演出している。

イチの要求を全て満たしていた完璧な仕上がりであった。


 「しかし、これは、食い込みが……、尻が落ち着かないんだが」


 イチは一回転しながら鏡に映った自分の水着姿を見てみた。

キュキュっとお尻を保持している紺色をしたV字の生地が絶妙に彼女の小ぶりな肉を持ち上げていてたまらん感じである。


 「あに言ってんのよ! 太腿周りなんて肌が見えてりゃ見えてるだけ足捌きが良くなるんだから!」


 この、足捌きが良くなるというのはこの時代の女性冒険者の間に広まっていた迷信であるが、

鼠蹊部から太腿周りは露出したほうが脚の動きが良くなるというものだった。

現実に、この時代の女性冒険者にはショートパンツやブルマーを着用している者が少なくない。


 「それにあんた、そのハイレグのおかげでバチバチに可愛いわよ。完璧だわ」


 「そ、そうかなぁ……」


 ヘルメェスが言う完璧と言うには、彼が彼自身の仕事ぶりを評価して言った言葉なのだがイチは自分への評価と勘違いした。


 「完璧よ。自信持ちなさい。………っと、あら、お客さんだわ! さ、満足したならさっさと着替えて頂戴」


 店の扉が開き、吊るしていたベルがカラカラと音を立てたのでイチは更衣室を閉めた。

水着を脱ぐ前にもう一度鏡に映った自分の水着姿を眺め、フフッと笑って喜んだ。

そして水着を脱ごうとした時である。


 「………おや、な、なかなか固いなあ」


 ヘルメェスの作った水着はイチの欲求を完璧に満たし、余計な水が中に入ってこないように極限まで肌に密着するように仕立てられていたので脱ぐのにコツが必要だった。


 「ふ……く………むむむむむ!」


 しばらく格闘したが上手く脱げず、ヘルメェスの助言を得なければ難しいと思い、ひとまずヘルメェスの手が開くまで待とうとしたイチだったが、次の瞬間どこかで聞き覚えのある声と、ヘルメェスが慌てた様子の声を出すのを聞いてしまった。


 「更衣室お借りしますね! こんな素敵な水着、早速着てみたいですもの! どうしましょう、サイズが合うなら全部買っちゃってもいいかもです〜!」


 「あ、ちょちょ、ちょっと! 更衣室にはまだ人が!」


 シャッ、という音がして更衣室のカーテンが開かれた。

そこには顔をニヤニヤと歪ませたシーナ・アハトゼヘルが山ほどの水着を抱えてイチを見ていたのである。


 「おやおや、イチさん。昨日はあんな不機嫌そうに見えたのに、そんな可愛らしい水着を新調するくらいには明日の海を楽しみにしていたんですねぇ」


 





 次回、第6話 『海だ!水着だ!丸呑みだ! 丸呑みシーサペント大量発生事件』


次回、水着回です。ポロリはありません。

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