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エピローグ スウィートバウム少女石化事件(完)

  その後、事件の結末も書かねばなるまい。


 まずパーカス邸での戦いの後、イチは注射された毒のためしばらく自力で歩けなかったもののそれ以外生命に別状はなく、バジリールに壁に叩きつけられた際に首と背中を痛めた程度の傷で済んだ。

エルビアニカとミュルガルデも同様である。

一息ついたイチが最低限の事情を説明しエルビアニカが石化された他の少女の安否を確認しにいくと、生身の身体に戻ったはいいが既に息のない者、完全に石化したまま戻らない者の二者に分かれたが、生きて帰れた者がいないという事に関して結末は同じだった。

フェーンは石化させられたまま戻らなかった。

どうやら石化させられた後の末路は、その者の魔法抵抗の才によって変わるようである。

パーカスの悪行を目の当たりにしたエルビアニカはその日のうちに冒険者ギルドに事情を報告し、翌日に冒険者ギルドによる本格的な調査が開始された。パーカス邸は冒険者ギルドのモーリン・アッテナ主導の調査隊が組まれ邸宅内は徹底的に調査された。


 その調査記録が残されており以下にその一部を残す。



____________




パーカス・エン・ジオルコルサイ邸宅内調査に関する報告



発行日: バルティゴ都市国家連邦歴18年6月23日

発行者: モーリン・アッテナ

対象: 冒険者の報告に基づく、少女失踪および少女石化事件の概要と背景



1. 調査概要

連邦歴18年6月21日、パーカス・エン・ジオルコルサイ邸宅内地下室にて、石化被害者12名を発見。その12名はスウィートバウムおよびセクサティギーで行方不明となっていた少女達と同一と推定される。


2. 調査経過および発見事項


被害者状況


地下室で完全に石化させられた者、石化後に絶命したと推定される者が12名確認された。

被害者の特定により、スウィートバウムおよびセクサティギーで行方不明となっていた一部少女達と一致することが判明。


(略)


・特記事項


失踪していたフェーン・カーコの捜索中に、狼階級の冒険者イチとエルビアニカ・サーカッチが邸内に侵入。

2人の証言によると、軍鶏の仮面を被ったトカゲ人族の怪人が関与。イチはゲロクソバカガイの毒を用いた後、エルビアニカ・サーカッチが怪人の胸部に拳銃弾を2発撃ち込んだとされる。

怪人の遺体は未発見。倒れていたとされるカーペット上に瞬間的に高温の炎が発生した痕跡が確認された。

仮面を被った怪人との情報から、ブラックペタルスの関与が推測される。


(以下略)


____________〆


 この件がイチ達とバルティゴ連邦崩壊の一因となった地下組織『ブラックペタルス』との因縁の始まりになるのだが、それに関してはまた章を改めるべきであろう。


 ギーミッツは依頼の結果として、完全に石化したフェーンと対面した。

その時彼は泣く事もなく、途方に暮れた表情のまま何かを呟いていたという。

結局その後、身元引き受け人のいないフェーンはギーミッツが引き取る事になった。

彼の想像とは違う形になったが、彼がフェーンの為に借りた新居は無駄にならなかったようである。


 セクサティギーの面々はどうなったか。


 まずハピネスの女店主であるセーゲンだが、イチは事件解決後にフェーンの事を知らせる為に一通の手紙を出した。

返信は期待していなかったが、7日後に綺麗な便箋にフェーンの事を報せてくれた感謝と、ジョキューが居なくなったという事、店の経営は順調だということを綴っていた。

最後に、「何か困った事があったら頼ってくると良い」と小さく書かれていた。

彼女も鬼人族の例に漏れず一度友情を感じた相手には義理堅いようであった。


 ジョキューの行方は知れない。


 クロッフはその後も夜の商売を続けていたらしいが、詳しい事は語られていない。


 パーカスはミュルガルデの処置で一旦は一命を取り留めたが、結局は傷から発生した細菌感染により病院で死んだ。

死ぬ前にミュルガルデに対する感謝の言葉を残し、喋れる範囲で冒険者ギルドに情報を提供したが、その彼の心情はわからない。

彼の遺産はその後、冒険者ギルドに押収される事となる。


 イチは事件解決後、フェーン捜索依頼の報酬を受け取った。

ギーミッツはフェーンと望んだ形での再会はできなかったが報酬を渋る事はなかったようだ。

受け取った報酬は、パーカスから渡された金と合わせて仲間たちで分けた。

立ち向かった困難に見合った報酬とは言い難い金額ではあったが、不満を言う者はいなかった。


 最後に、この事件の発端とも言えるミュウであるが、バジリールが死んだ事により辛うじて一命を取り留めた。

生身に戻った彼女はほとんど喋る事も身体を動かす事もできなかったが、暫く療養すれば回復するとミュルガルデが話していた。

彼女の闘志と生命力は永久に続くと錯覚する石化の苦しみの中で決して生命を諦める事をせず、再び光の世界に戻ってきた。





 冒険者達の友誼と信念が、ひとりの少女の生命を救ったのである。





 バルティゴ都市国家連邦歴18年の6月下旬。

夏が迫る季節の事であった。


 『スウィートバウム少女石化事件・完』


皆さまの感想やレビュー、評価が作品の方針に良い影響を与えます。


小説も、読者様と物語のコミュニケーションですからね。


1話完結なのでイチ達のこんな姿が見たいなどの要望などもあれば是非!

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