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解決編2 ブリーフィング スウィートバウム連続下着泥棒事件11

  26日。イチ達はルーナハイムのリビングでブルーセラーノ邸の襲撃計画を立てた。

大テーブルの上にはエルビアニカが描いた正確なブルーセラーノ邸の地図が広げられており、7人が立ったままそれを眺めている。


 既に前日にイチ、エルビアニカ、イルハ、タオ・メイメイで戦術を話し合い、最良と思われるプランを決めてある。

そのプランを仲間と共有し、目標とそれぞれの役割を把握させるのがブリーフィングの目的である。


 イチは地図の上に敵や目標に見立てたチェスの駒を置きながらそれぞれの顔を見回した。

(※下にブルーセラーノ邸の地図を記しておく。邸宅は現在も残っており、大日国の投資家が住んでいるらしい)

挿絵(By みてみん)


 「まず、我々の目標は第一にブルーセラーノを確保し、冒険者ギルド某支部まで連行する事。第二に現場を制圧し、下着泥棒、及び盗品の転売の証拠をそのまま残す事だ」


 そういってイチは地図上の黒い人型の駒を指さした。


 「これは推測もあるが、高い確率でブルーセラーノはここにいるはずだ」


 「何故わかるんですか?」


 シーナが口を挟む。

なるほど、確かにブルーセラーノ鄭の見取り図を見てもイチが黒い駒を置かれている保証はない。

が、イチは迷いなく答える。


 「ここにピアノが置いてある。これはかなりの大きさで、移動は難しいはずだ。そうであれば、オークション参加者(中央の白いコマが並んでいる場所)が中央に集まったとして、窓側にオークショニア(司会進行)を配置する公算が高い」


 「なるほど。万一、予想が外れたらどうします?」


 そう口を挟んだのはミュルガルデ。


 「そうなっても良いように別のプランも練ってある。続けるぞ」


 イチは今度は地図上に黒い凸型の駒を置いた。


 「恐らく最低でも護衛はこの数をこう配置しているはずだ。恐らく闇冒険者が中心だろうな。戦力としてそこまでの脅威はないとは思うが、油断するな」


 敵を表す駒は、玄関、窓、リビングの入り口、そしてリビングの中の四隅に配置してある。

この護衛は外敵の襲撃も勿論だが、万一オークション参加者の中に不審な者がいた場合も想定し会場内を見渡せるように配置するだろう。というのがイチ達が昨夜話し合って出した結論だった。


 イチは彼女らに見立てた色を塗った駒を地図上に配置して説明を続ける。

(※下記の画像を参照されたし)

挿絵(By みてみん)


 「まず、イルハとタオ・メイメイは玄関の護衛を無力化。これは音を立てるな。一撃で、それも一瞬で決めてもらう。」


 イチはイルハの顔を見た。イルハは「僕の出番ですね」と言って頷いた。


 イルハという少女はブレイブバウムから離れた最北の都市、デーニズの農村からやってきた少女で、その村に古くから伝わる古式剣術を極め騎士として認められた少女である。

彼女は冒険者としてはまだ中堅ではあるが、切り込みの速さから某支部の冒険者達からもその剣術を認められていた。

短く切った黒髪と普段胸につけているプレートメイルのせいで少年と見間違えられる事が多いが、意外とバストは豊満である。


 「イルハが玄関の敵を無力化したら、イルハはそのままリビングの入り口を固めてくれ。2階に敵が潜んでいるとも限らないからな。メイメイはそのまま進行して、玄関の敵を無力化。無力化に成功したらそのままリビングに突入。正面に控えている敵を無力化してくれ」


  イチの言葉にタオ・メイメイは腕を組んだまま鼻を鳴らした。

態度こそ反抗的ではあるが、彼女なりに納得しているのだろう。


 タオ・メイメイがこの役に選ばれたのには彼女が普段扱っている武器によるところが大きい。


彼女の得物は特に優れた一品で、タオ・メイメイがマナを伝導させれば岩を粉々にする威力を発揮する。

イチのカーペイトと同じく球を込めずとも気功弾の発射が可能で、その威力は大柄な男に体当たりされるのと同じくらいの威力がある。

闇冒険者程度の相手であれば面制圧には滅法強い。


 「メイメイの突入に合わせて私とエルビアニカで窓から強襲。私が窓側の護衛を無力化し、オークション参加者ら非戦闘員を押さえる。その後、エルビアニカはそのままブルーセラーノを連行する」


 「あたしらは、どーすんだよ」


 そう言ったのはヘルヒャン・バッドフット。

人族とコボルト族の間に生まれた少女で、コボルトの血が強くフォルムこそ人に近いが金色の体毛は全身に生えており、顔も犬顔のコボルト族と人族の遺伝子が上手い具合に合わさっている。

どうやら不良に憧れているらしく、髪にあたる体毛の一部に赤いメッシュをいれている。


 「ヘルヒャンは万一に備えて屋敷の外で警戒を頼みたい」


 コボルト族のハーフであるヘルヒャンは嗅覚も聴覚も人族より優れている。

ヘルヒャンを外で待機させることによって外からの不意打ちを防げるのだ。


 「ミュルガルデは敷地外で待機。万一私たちが作戦に失敗した場合、応援をよこしてくれ」


 イチの言葉を聞いてミュルガルデは安堵した。

ミュルガルデはミノタウロス族の少女ではあるが、争いを嫌っている。ヘルヒャンは特に何も言わなかったが、別に不満もないようだ。


 「はいはいはい! イチさん、質問! 質問です!」


 シーナが騒がしく手を挙げる。

未だ役割が与えられていないのはシーナだけである。


 「私は何をしたらいいですか? 魔法ですか? 私の魔法で闇冒険者達に一泡吹かせてやりますか?」


 目をキラキラさせて言葉を待つシーナ。

しかしイチの言葉にシーナは失望する事になる。


 「シーナは某支部で待機。万一私たちに危機があった場合、ミュルガルデに信号弾を上げてもらう。それを確認したらすぐに応援をよこしてくれ」


 この言葉はシーナにとっては戦力外通告のようなものであった。当然シーナは猛抗議する。

シーナは仲間外れにされる事を酷く嫌う少女だった。


 「えーーーーーー! お留守番なんて嫌です! シーナ絶対役に立ちますよ! 連れてかないと絶対後悔しますよ! 嫌です! 連れてってくれないと泣きます! 毎日泣いて、イチさんがお手洗いに行ってる時にドアの前でシクシク泣き続けますよ!」


 思わず耳を押さえるイチ。

イチとしても意地悪でシーナを置いてけぼりにするわけではない。

事実として万一の場合、速やかに応援を呼べる体制は作っておきたかったし、それ以上に今回の作戦ではシーナを活躍させてやれる場面が思い浮かばない。

シーナは魔法使いであり、魔法とはマナを集積させこの世界の法則さえ捻じ曲げる神秘の力である。

冒険の際、不可能を可能にさせるが、決して戦闘に向いているわけではない。

まず、魔法は発動させるまでに詠唱などの時間を必要とする。

かつて大魔術師ラプダンジーが腕を振っただけで柱を破壊する魔術を描写したが、詠唱もなしにあれだけの破壊を起こせる者は歴史上でも5人といないだろう。

また、仮にシーナの魔法のために詠唱の時間を確保して戦力に組み込んだとしてもシーナが戦闘で使う魔法は火炎の魔法であったり稲妻の魔法であったりする。

ブルーセラーノ邸の中で発動させれば下手をしなくても死人が出るし、イチたちの身も危ない。

イチとエルビアニカとしては味方は勿論、敵にも死者を出したくなかった。

ではせめて見張り役くらい…、とも思うがミュルガルデやヘルヒャンと違いシーナには自衛能力がない。万一人質にでもとられてしまったらそれこそ盤面がひっくり返る。


 「シーナちゃん。あんたが某支部で待機してくれるからあたしらは安心して襲撃ができるんだ。別に役立たずに思ってないし、勿論某支部の適当な冒険者を連絡役に雇う事も考えたけど、シーナちゃんと同じくらい信用できる奴もいないしさ」


 エルビアニカは文句を垂れ続けるシーナをそう言って宥めた。流石、エルビアニカは皆のまとめ役だけあって彼女の扱いにも慣れている。

最終的にシーナは渋々納得した。


 「質問はないな。以上だ。明日、突入のタイミングを合わせるためのシュミレーションをする。では、解散」


 その日はそこでブリーフィングを終え、後日ルーナハイムの中を屋敷に見立ててのシュミレーションが行われた。

そして、遂に28日。ブルーセラーノ邸に怪しげな連中が集まり始めたのである。


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