第十話 変化、その果てに
〜祓魔メモ〜
暗闇影男
趣味:メガネ拭き、自分の影の長さを測ること
武功:暗流影功
年齢:25歳
身長:178cm
特筆事項:龍神虎徹の代わりに零夜たちの実戦を指導した。
あいつ⋯手を上に掲げて何をする気だ⋯?
この距離から先程の技を出したら十中八九私たちに当たるぞ⋯?
ー蓮華真珠功 黄昏ー
何本もの雷鎚が落ち、最後の一撃、特大の雷鎚により怪魔の動きが沈黙した。
「零夜⋯!まじか⋯!」
「あいつ⋯!掴んだのか⋯!」
「今のうちだお前ら!とどめを刺s⋯!」
ドサッ!叫んだ直後、零夜は倒れた。
「零夜!」
一体何が起きたんだ?!
何にせよ零夜が作ってくれた好機!無駄にしてなるものか!
沈黙している怪魔へと五右衛門と拳心が走っていく。
拳心が拳に力を込め、五右衛門が刀に霊力を入れたまさにその時⋯!
怪魔の周りに黒き稲妻が現れた。
怪魔の体から発せられる黒き瘴気に2人は吹き飛ばされる。
「ぬっ…!」
「くっ…!」
なんだ今のは?あの黒い瘴気は一体…
瘴気が晴れたとき、2人は驚きを隠さずにはいられなかった。
「ブゥォォォォォオオオオオオオオオオ!!」
なんと怪魔の形態が変わり、今までの傷が全快していたのだ。
「そんな馬鹿な…」
全身が黒く染まり、体長は20メートル以上になっていた。それに加えて両腕に変化前よりも巨大な金棒を携えていた。その巨体からは禍々しいオーラが出ている。
怪魔が倒される直前に第二形態へと進化するだって…そんなの聞いたことないぞ?!
否、巨大化して強くなったのかもしれないが、それと同時に当たるポイントも大きくなったはずだ。
それならまだ勝機は…
「拳心…!」
「あぁまだ諦めちゃいないさ!」
「違う!そうじゃない!上だ!!」
「え?」
見ると先程まで拳心の目の前にいたはずの怪魔が宙に舞っていた。すでに両腕の金棒を振り上げている。
あんな鈍重そうな見た目しといて、その軽やかな動きは…
「反則だろ…w」
ーバゴォォォォォォン!ー
成すすべもなく拳心は2本の金棒の餌食となった。
「拳心…!」
「おのれ…!」
五右衛門が怪魔の方を向いて斬りかかろうとすると…
ーカッ!ー
怪魔の眼光が鋭く五右衛門を睨みつけた。
なっ!か、体が…動かん…!
瞬きをした次の瞬間、怪魔は五右衛門の眼前へと迫っていた。
ニタァ…
こいつ…今笑っ…
ーガシッ!ー
怪魔が五右衛門の首を掴み拳心の方へと投げ飛ばす。
「あ…あぁ…あ…」
3人ともやられちゃった…もう…だめだ…これが特級……
怪魔が近づいてきて、その剛腕がゆっくりと優莉香を掴み上げた。
そして怪魔が大きく口を開く。
ごめんねみんな…やっぱり私…出来損ないだった…
「やめろおおおぉぉぉぉぉぉ!」
零夜…目が覚めたんだね…他の二人もなんとか結界で守ったから死んではいなそうだね…3人とも一瞬だけど私を守ってくれて…助けてくれてありがとう…
クソクソクソクソッ!
許さない…!殺す!殺す!コロス!コロスコロスコロス!コロシテヤル!
零夜の体から黒き稲妻と瘴気が現れ、目が赫くなり始める。
俺の命と引き換えにでもあいつをコロス!
大きな憎悪の渦に飲まれ、自我を失いかけたその時だった。
ースパァァァァァン!ザシュッ!ー
「イギャァァァッァァッッァ!」
優莉香を掴んでいた腕が切り落とされる。
あれはまさか…
「暗闇先生……!」
「全く…ずいぶん…派手に…やられましたねぇ…まぁ…このレベルなら…仕方のない…ことでしょうが…」
ふむ…神代君は肋骨が数本、玲瓏座君は腕と内臓その他何箇所か複雑骨折、伊邪那岐君も同様、御守さんは
軽い打撲で済んでいますか…
「それでも…特級相手に…第一形態を…突破したことは…素直に褒めても…いいでしょう…」
暗闇先生が優莉香を抱えて零夜のところへと歩いてくる。
「来るのが遅いって先生…というか相手は特級だぜ?!先生でも流石に…」
怪魔が腕を再生させ、零夜の前に立つ暗闇先生へとターゲットを変え突っ込んでくる。
「えぇ…そうですね…格の違いを…見せつけられると…思いますよ…」
やっぱり…だめか暗闇先生1人じゃ……
「あなたがね…」
暗闇先生が突っ込んでくる怪魔の方を一瞥する。
ー暗流影功 第二技 死に染まる影ー
暗闇先生の手の先から影のようなものが出て、怪魔の足に巻き付いたかと思うと一気に足が風化して崩れていった。
そして暗闇先生は跳び上がり怪魔の腹へと回転蹴りをお見舞いした。
広場の奥まで飛ばされる怪魔。
「す、すげぇ…」
心の底から純粋に出た言葉だった。
気づけば拳心と五右衛門も目を覚ましその戦いを凝視していた。
「『死に染まる影』は徐々に…相手の肉体を…風化させていきます。いくら再生しようが…その効果は…持続されます。」
怒りに満ちた怪魔が再び暗闇先生のもとへと来て金棒を振り回す。
しかし、そのどれも一切暗闇先生には当たらない。
その間にもどんどん肉体は風化していく。
「グォォォォォォ!」
「なんという…なんという強さだ…私には目の前で起きていることがまるで信じられん…」
「それと玲瓏座君…蹴りというものは…こうやってやるもの…ですよ…?」
そう言い怪魔の顎を思い切り蹴り上げる。
武功無しで俺の煌昇脚より威力が…マジか…
「さて…少し遊びすぎましたかね…そろそろ殺りましょうか…」
空へと高く飛び上がり、怪魔の真上へと来る。
ー暗流影功 第五技 宵闇ー
空高く飛び上がった暗闇先生から紫色の太いレーザーのようなものが勢いよく怪魔へと垂直に放たれた。
「オォォォォォオオォォォ…」
レーザーの中で怪魔が悶え苦しむ。
なんとか耐え切ろうとするもその努力虚しく、肉体が崩れ、もうレーザーの中に怪魔の姿は見えなかった。
やがてレーザーが細くなり消え、暗闇先生が地上へと舞い降りてくると特級怪魔の魂が出現した。
しかし、暗闇先生はそれを無視し、4人の元へと歩いてくる。
「先生は…いったい何級なんですか…?」
拳心が地面に伏せたまま問いを投げかける。
「私ですか…私は…」
「極級」
静かに、しかし重い響きのある言葉で暗闇先生は返答した。
「さっきの戦い、本当なら…一撃で片付けられましたよね…?」
今度は五右衛門が質問する。
「まぁ…はい…その観察眼は素晴らしいですね…ですが…私は単に怪魔を…討伐するために…ここにいるわけでは…ないのです。もし…そうなら…祓魔塾講師ではなく…普通の祓魔師として…活動していますよ…」
ん?それはどういう意味なんだ?
「いい機会なので…祓魔師の成り方を…この世界をまだよく知らない神代君に…教えておきましょう…。祓魔師になるには…2つの方法が…あります…。1つ目は…君たちのように…祓魔塾に入塾して…3年間学び、卒業試験を経て…祓魔師になる方法…。2つ目は…説明するのが疲れたのでやめときます…」
「いやちょっと待てぃ!俺が知りたいのは2つ目の方なんだけど?!ぎゃあ!叫んだら肋骨が痛ぇ…!」
「まぁ…話しますか…2つ目は…祓魔連合が年に一度だけ開催する…試験に合格することです…。
若くして…武功に目覚めなかった者は…祓魔塾に入れません…。だからその試験を受けるんです…。
まぁ…それだけだと若い人材が育成できないので…祓魔塾ができた、という流れですがね…」
「な、なるほど…」
ーキェェェェェイー
突然離れた場所で変な鳴き声がする。
「話していたら…ちょうど来ましたね…」
「な、何が?」
「祓魔師専門治療部隊、通称『専治』が…」
見ると森の奥から4台の鳥車がやってくる。
「失礼します!『専治』です!」
隊長と思われる女の人が丁寧にお辞儀をする。
「怪我人はかなりの重症!虹龍都への帰還の間にも治療を進めよ!」
鳥車から人がぞろぞろと出てきて、4人を別々の鳥車へと運んだ。
みんなは無事か…良かった…
零夜以外の3人は力尽きたのか先に気絶している。
俺m…
零夜も鳥車に乗せられてすぐに気絶した。
「それでは…虹龍都まで…よろしくお願いします…ここら一帯の怪魔はすでに討伐済みなので…」
「はっ!責任を持って送り届けさせていただきます!」
4台の鳥車と専治が去って行くのを見届けた暗闇先生は拳をギュッと握りしめた。
それにしても…いくら人喰いの森とはいえ…事前に調査したときには…こんなに強い怪魔はいなかったはず…。それに…ここまで大きくなるまで…私の探知に引っかからなかった…。まさか…人為的に強化された…?何にせよ…彼らをより強くしなければ…
私たちの知らない場所で…何かの歯車が回り始めたのかもしれませんね…
静かだがどこか不気味な風が森の木々を揺らしていた。
「クックックッ…こんなに早くあいつがやられてしまうとは意外でしたねぇ…それなりに強化したんですけど…まぁ雑魚に毛が生えた程度のやつにはそもそも期待はしていませんでしたが。
神代零夜…あの方の手を煩わせるまでもなく私が消し去ってやる。無論あなたにも手伝ってもらいますよ、
✕✕✕さん…」
「はい…」
―シュンッ―
セカンドアース某所にて2人の人間が闇に消えた。
第十話読んでくださりありがとうございます!
実戦指導が無事に(?)終わった零夜一行。
その裏で暗躍する謎の人物。彼らは一体何者なのか。
そして極級祓魔師の実力を知った彼らは何を思うのか。
次回 第十一話 圧倒的強者 2026/10/2 20:00公開




