第二十八話 残り二日
物語終了まで
残り2日
朝だった。
だが太陽は半分欠けていた。
空もおかしい。
雲が止まっている。
風も吹かない。
世界そのものが疲れているようだった。
「あと二日か」
レインが呟く。
誰も返事をしない。
言葉にすると。
本当に終わりそうだったから。
王都の中央広場。
噴水は止まっていた。
水が宙に浮いたまま固まっている。
時間が壊れていた。
「綺麗」
ミナが言った。
「綺麗か?」
「うん」
少し笑う。
「終わりそうだから」
レインは意味が分からなかった。
だが。
エリシアは理解しているようだった。
「物語ってね」
彼女が噴水を見る。
「終わる直前が一番綺麗なんだよ」
「なんだそれ」
「知らない」
苦笑する。
「でもそんな気がする」
その時だった。
空にノイズが走る。
バチッ。
バチッ。
世界が揺れる。
「またか」
レインが顔を上げる。
しかし。
いつもと違った。
ノイズの中に。
映像が映っていた。
教室。
誰もいない。
夕焼け。
窓際。
そして。
制服姿の少女。
未来のエリシア。
「!」
全員が立ち上がる。
映像が鮮明になる。
未来のエリシアは何かを書いていた。
ノートだ。
必死に。
何かを残そうとしている。
「何してるんだ」
レインが呟く。
すると。
未来のエリシアが顔を上げた。
こちらを見た。
まるで。
本当に見えているみたいに。
『聞こえる?』
文字。
ノートへ浮かぶ文字。
エリシアが息を呑む。
「会話してる……?」
ありえない。
未来は閉じたはずだ。
だが。
未来のエリシアは必死だった。
『思い出しちゃダメ』
レインの顔色が変わる。
『私みたいになる』
「何をだ」
叫ぶ。
だが届かない。
未来のエリシアは続ける。
『観測者の正体』
セレナが言っていた。
知りすぎると壊れる。
未来のエリシアは。
全部知ってしまった。
『だから』
震える文字。
『お願い』
その時だった。
教室の後ろの扉が開いた。
ガラッ。
静かな音。
未来のエリシアの身体が硬直する。
振り向かない。
振り向けない。
怯えている。
心の底から。
「……誰だ」
レインが呟く。
扉の向こう。
人影。
逆光で見えない。
だが。
確実にいる。
そして。
そいつは。
ゆっくり教室へ入ってきた。
未来のエリシアが震える。
涙を流しながら。
『見ないで』
意味が分からない。
『絶対に見ちゃダメ』
だが。
人影は近付く。
一歩。
また一歩。
そして。
顔が見えそうになった瞬間。
ERROR
映像が砕け散った。
教室も。
未来のエリシアも。
全て消える。
残ったのは。
彼女の最後の言葉だけ。
『あれは読者じゃない』
静寂。
誰も喋らない。
エリシアの顔は真っ青だった。
ミナも震えている。
レインは拳を握った。
「……何なんだよ」
未来で。
エリシアを追い詰めている存在。
観測者ですらない何か。
その正体が。
少しずつ近付いていた。
物語終了まで
残り1日
カウントが進む。
無情なほど静かに。




