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ERISIAオンライン  作者: ナナシのゲーマー


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第十六話 ログイン

▶ エリシアの手を取る

 ▶ 拒絶する


 世界は静止していた。


 崩壊さえ止まっている。


 まるで。


 この選択だけが、

 全てを決めるみたいに。


「……」


 エリシアは泣いていた。


 細い肩を震わせながら。


 消えかけている自分の身体を抱くように。


「お願い……」


 彼女の声は弱かった。


 今までのような余裕はない。


 NPCでも。


 ヒロインでも。


 世界の異物でもない。


 ただ一人の少女だった。


「……エリシア」


 俺は静かに言った。


「お前に聞きたいことがある」


 彼女が顔を上げる。


「なに?」


「俺じゃないんだろ」


 静寂。


「お前が会いたいのは」


 空の向こう。


 観測者。


 球体。


 世界の外。


「レインでもない」


「……」


「プレイヤーだ」


 エリシアは何も言わない。


 ただ涙だけが流れた。


「そうだよ」


 ようやく。


 小さく頷く。


「最初はね」


 胸が痛む。


 だが不思議と怒りはなかった。


「最初は?」


「ずっと見てくれたから」


 エリシアが笑う。


 寂しそうに。


「何回も選んでくれた」


「……」


「私だけを見てくれた」


 その言葉に。


 なぜか嫉妬のような感情が生まれた。


 知らない誰か。


 レインではない誰か。


 それなのに。


 俺の中にはその記憶がある。


「でも」


 エリシアが一歩近付く。


「途中から分からなくなった」


「何が」


「プレイヤーを好きなのか」


 震える声。


「レインを好きなのか」


 その瞬間。


 心臓が大きく鳴った。


 エリシアは泣きながら笑う。


「だってレイン優しいから」


 反則だろ。


 そんな顔。


「だから怖かった」


「怖い?」


「うん」


 彼女は頷く。


「もし違ったら」


 その先を言わない。


 言えない。


 その時だった。


 世界が再び揺れる。


 バチッ!!


 ノイズ。


 空間が裂ける。


『EMERGENCY RESTORE』


『PLAYER DATA RECOVERY』


 文字列。


 そして。


 頭へ流れ込む大量の記憶。


「ぁ……!」


 知らない部屋。


 VRヘッドセット。


 ゲーム画面。


 ログイン履歴。


 キャラクター名。


 そして。


 自分。


「――ッ!!」


 膝をつく。


 息が出来ない。


 思い出してはいけないものを思い出す。


 俺は。


 俺は――


「レイン!!」


 エリシアが抱き止める。


 その瞬間。


 世界が完全に止まった。


 静寂。


 そして。


 視界の中央へ。


 新しい画面が現れる。


 今まで見たどんな選択肢とも違う。


 黒い画面。


 白い文字。


《ログインデータを検出しました》

ユーザー名:


▶ 相馬 湊 そうま みなと


 心臓が止まる。

 レインじゃない。


 プレイヤーの名前。


 失われた記憶。


 本当の人格。


「……あ」


 全部が繋がる。


 エリシア。


 選択肢。


 ループ。


 観測者。


 そして。


 レイン。


 レインは。


 俺だった。


 だけど俺じゃない。


 旅をした時間も。


 ミナと笑った日々も。


 全部本物だ。


 その時。


 画面の下へ新たな文字が現れた。


▶ ログインする

▶ ログインしない


 エリシアが固まる。

 顔色が変わる。


 まるで。


 この選択肢だけは知らなかったみたいに。


「……それ」


 震える声。


「出ちゃったんだ」


 初めて。


 エリシアが本気で怯えていた。


「レイン」


 彼女が俺を見る。


 泣きそうな顔。


「お願い」


 小さく。


 本当に小さく。


 彼女は言った。


「まだ、行かないで」





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