第十三話 接続エラー
『PLAYER CONNECTION ERROR』
ノイズ混じりの声が、
部屋全体へ響いた。
次の瞬間。
世界が完全に止まる。
空気。
光。
音。
全部。
凍り付いたみたいに動かない。
「……っ」
呼吸すら重い。
ミナは床へ倒れたまま、
微動だにしない。
セレナも動けなくなっていた。
「レイン……」
かろうじて声を出したのは、
エリシアだけだった。
だが。
彼女の表情は、
初めて見るものだった。
焦り。
恐怖。
怯え。
「なんで……」
エリシアが震えた声を漏らす。
「なんで接続が切れるの……?」
その瞬間。
視界が激しく乱れた。
バチッ!!
ノイズ。
そして。
知らない光景が流れ込む。
暗い部屋。
ヘッドギア。
机の上の飲みかけの缶。
光るモニター。
そして。
ゲームタイトル。
『Elysia Online』
「――ッ!?」
頭が割れそうになる。
「ぁ……あああッ!!」
膝をつく。
脳の奥へ、
無理やり記憶を押し込まれるみたいだった。
知らないはずなのに知っている。
触ったこともないはずなのに覚えている。
キーボード。
ログイン画面。
キャラクターメイク。
そして。
銀髪の少女。
『初期パートナーを選択してください』
ノイズ。
エリシアの笑顔。
『このキャラクターを選択しますか?』
「やめて……」
エリシアが小さく呟く。
「思い出さないで」
だが記憶は止まらない。
次々と流れ込んでくる。
戦闘。
周回。
選択肢。
そして。
何度も。
何度も。
エリシアを選んでいた。
「……なんだよ」
呼吸が乱れる。
「俺……お前を……」
その瞬間。
エリシアが泣きそうな顔をした。
「違う」
「……え?」
「違うの」
彼女は首を横に振る。
「レインは違う」
涙が零れる。
「あなたは優しかった」
世界が軋む。
壁が崩れる。
ノイズ。
文字化け。
空間そのものが壊れていく。
「でも、“あの人”は違った」
その言葉で、
心臓が嫌な音を立てた。
「あの人……?」
「プレイヤー」
エリシアは、
まっすぐこちらを見る。
いや。
違う。
その向こう。
もっと遠く。
「私を最後まで見てくれた人」
ゾッとした。
「……お前」
「レインじゃない」
エリシアが近付く。
一歩。
また一歩。
「でも似てるの」
震える指先が、
俺の頬へ触れる。
「だから好きになっちゃった」
その瞬間。
世界が激しく明滅した。
バチバチバチッ!!
天井が消える。
空が剥がれる。
その向こう側に見えたのは。
黒。
無限の黒。
そして。
そこに浮かぶ、
巨大な球体。
目だった。
世界を覗き込む、
巨大な視線。
「――見つけた」
エリシアが笑う。
本当に嬉しそうに。
恋した少女みたいに。
「やっと、見てくれた」




