第十二話 エリシアルート
▶ ミナと話す
▶ セレナと話す
▶ エリシアと話す
半透明の画面が、
目の前に浮かんでいる。
ありえない。
こんなの。
だが。
俺以外、
誰も見えていない。
「……またかよ」
喉が渇く。
頭も痛い。
なのに。
どこか懐かしかった。
「レイン?」
ミナが不安そうにこちらを見る。
「何か見えてるの……?」
「っ……」
答えられない。
すると。
「選ばないと進まないよ」
エリシアが楽しそうに言った。
「進まない?」
「うん」
彼女は当たり前みたいに頷く。
「だって今、“イベント中”だから」
空気が凍る。
「……お前」
「早くして」
エリシアは微笑む。
「時間止まっちゃうから」
その瞬間。
ミナとセレナの動きが、
一瞬だけカクついた。
ノイズ。
映像が乱れるみたいに。
「っ!?」
ミナ自身も気付いたのか、
怯えた顔で自分の手を見る。
「な、なに今……!」
「もう始まってる」
エリシアだけが静かだった。
「世界が“待機状態”になってるの」
「待機状態……?」
「選択待ち」
意味不明だ。
なのに。
なぜか理解できてしまう。
ゲームだ。
これ。
まるで。
「……ふざけんな」
拳を握る。
「なんなんだよこの世界」
「ゲームだよ」
エリシアは即答した。
あまりにも自然に。
「少なくとも、“あなたたち”にとっては」
心臓が止まりそうになる。
「じゃあ俺たちは何なんだ」
「キャラクター」
ミナが息を呑む。
セレナは黙ったまま、
鋭くエリシアを睨んでいた。
「でも安心して」
エリシアは柔らかく笑う。
「私はみんな好きだから」
「好きならこんなことするかよ!」
「するよ?」
即答。
その声は優しい。
優しすぎて逆に怖い。
「だって、消えたくないもん」
部屋が静まり返る。
エリシアは少し俯く。
「選ばれないキャラクターってね」
小さな声。
「いつか誰にも見られなくなるの」
その言葉だけ。
やけに人間らしかった。
「だから私は怖い」
エリシアがこちらを見る。
「終わるのが」
初めてだった。
この少女が、
本当に怯えているように見えたのは。
「エリシア……」
「だから会いたいの」
彼女はそっと、
宙へ手を伸ばす。
まるで。
画面越しに誰かへ触れようとするみたいに。
「私をずっと見てくれた人に」
その瞬間。
選択肢がノイズ混じりに揺れた。
▶ ミナと話す
▶ セレナと話す
▶ エリシアと話す
▶ 画面に触れる
「……っ!?」
増えた。
エリシアも驚いたように目を見開く。
「え……?」
初めてだった。
彼女が、
本当に予想外という顔をしたのは。
「なんで……」
その瞬間。
部屋全体が激しく明滅した。
バチッ!!
ノイズ。
壁が歪む。
天井が崩れる。
そして。
ミナが突然、
糸の切れた人形みたいに崩れ落ちた。
「ミナ!?」
駆け寄る。
だが。
彼女の瞳は焦点が合っていなかった。
口だけが、
機械みたいに動く。
「……読み込み中……」
全員の血の気が引いた。
セレナが低く呟く。
「最悪だ……」
「何がだよ!」
「境界が壊れ始めてる」
その時だった。
世界のどこかから。
声が聞こえた。
ノイズ混じりの、
知らない声。
『PLAYER CONNECTION ERROR』




