【完璧を切り裂いた魔剣】
【完璧を切り裂いた魔剣】
ある時、英雄と呼ばれる男がいた。
彼は強かった。
何でもできた。
足が速く、力が強く、反射神経に優れ。
知性があって、思いやりがあり、ユーモアもあった。
そんな英雄に、人は真の英雄を幻視した。
しかし人は、やがて英雄に注目しなくなった。
理由は、分からない。
しかし足元に積み上がったものに、人々は注目を始めていた。
――あの怪物が産まれたことには、何か理由があったのでは?
――きっとあの悪徳には、理由があったに違いない。
――討たれた悪は、本当に悪だったのか?
まだ、英雄は英雄である。
まだ、人々は彼を讃えている。
しかし、讃える声は減ったような気がした。
そして英雄は、この魔剣によって傷を付けられた。
どうしてと聞かれた時、英雄はこう答えたそうだ。
――実は、私も悩んでいたのだ。
英雄は、再び英雄と呼ばれるようになった。
少しだけ、傷を受けただけなのに。
英雄の完璧は、魔剣によって傷つけられた。
しかし誰に望まれたのかを知るのは、きっと英雄だけなのだろう。
なにしろ、彼は完璧である。
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英雄は、完璧である。
かつて、完璧な英雄はそう言った。
しかし、英雄はこの魔剣によって傷を負った。
きっと、英雄は気が付いてしまったのだ。
完璧ではないことが、完璧なのだと。
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