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魔剣蒐集録Ⅱ  作者: 健康な人
3章:飽和と正しさの寓話
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【自分の先を歩く影】

【自分の先を歩く影】


 字を書くのが遅い学者は、ある時考えていた。

 どうやって皆よりも評価してもらえるのだろうか、と。

 何を言っているんだ、と笑われる悩みだろう。

 しかし、学者にとっては真剣だった。


 これは会心の出来だ、と思って論文を執筆していても、

 似たような研究内容が発表されてしまうことばかりなのだ。

 事実として、学者の目の前にある論文も、

 似たような理論を先に発表されてしまってゴミになった。


 ――知識と権利は、早い者勝ちなのである。

 それが、学者の人生観だった。

 しかし、その人生観に照らし合わせてしまうと、学者に勝ち目がない。


 どうしたものだと悩みぬき、

 学者は一つの解決策を思いついた。

 ――そうだ。言葉を文字にしてしまえば良いのだ。


 学者は筆を進めるのは遅かったが、話す速度は普通だった。

 結果学者は成功し、己の論文を世間に発表することになる。

 最初に発表したのはこの研究成果で、

 彼は自信満々にこう言った。

 ――皆が平等に機会を与えられるのです!


 それからしばらくして、学者の研究結果が学会に行き渡り。

 評価は、今でも平等に行われている。

 研究を発表した学者は、今でも評価され続けている。

 彼の論文は高度過ぎて、本当に読まれているのか怪しいような気はするのだが。



 ~~~~~~~~~~~~~~~


 この魔剣を使えば、執筆を早く終わらせる事ができるらしい。

 ただ早く終わりすぎるが故に、問題が起こるのだとも伝わっている。

 いつか、人は評価だけを見るようになる。

 きっとその時、誰もそれを不自由だとは感じない。


 ~~~~~~~~~~~~~~~



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