【自分の先を歩く影】
【自分の先を歩く影】
字を書くのが遅い学者は、ある時考えていた。
どうやって皆よりも評価してもらえるのだろうか、と。
何を言っているんだ、と笑われる悩みだろう。
しかし、学者にとっては真剣だった。
これは会心の出来だ、と思って論文を執筆していても、
似たような研究内容が発表されてしまうことばかりなのだ。
事実として、学者の目の前にある論文も、
似たような理論を先に発表されてしまってゴミになった。
――知識と権利は、早い者勝ちなのである。
それが、学者の人生観だった。
しかし、その人生観に照らし合わせてしまうと、学者に勝ち目がない。
どうしたものだと悩みぬき、
学者は一つの解決策を思いついた。
――そうだ。言葉を文字にしてしまえば良いのだ。
学者は筆を進めるのは遅かったが、話す速度は普通だった。
結果学者は成功し、己の論文を世間に発表することになる。
最初に発表したのはこの研究成果で、
彼は自信満々にこう言った。
――皆が平等に機会を与えられるのです!
それからしばらくして、学者の研究結果が学会に行き渡り。
評価は、今でも平等に行われている。
研究を発表した学者は、今でも評価され続けている。
彼の論文は高度過ぎて、本当に読まれているのか怪しいような気はするのだが。
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この魔剣を使えば、執筆を早く終わらせる事ができるらしい。
ただ早く終わりすぎるが故に、問題が起こるのだとも伝わっている。
いつか、人は評価だけを見るようになる。
きっとその時、誰もそれを不自由だとは感じない。
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