安心
ネルアはレヴィを仰ぎ見る。
ネルアは動きをピタリと止めた。
(あ、あれ? ……なんでだろう)
目が離せない。
レヴィから目が離せない。
気恥ずかしさを忘れて見つめてしまう。
ネルアの口は開いたままだった。
一切の動きを止めてしまう。
レヴィは腰を落とし、片膝をつく。
そして落ちているネルアの銃をそっと拾った。
「随分と頑張ったようだな」
レヴィは銃の重さから弾切れを理解した。
ネルアはレヴィの言葉にしっかり耳を傾ける。瞳孔の開いた目で彼の十字の瞳をじっと見つめたまま。
ネルアは姿勢を崩さず放心状態になってしまった。
背後では警察官の焦りが聞こえてくる。
「何している! 早く心臓を回収しろ!」
「了か──────────」
警察官の返事が途中で消えた。
そしてどさりと音が聞こえる。
(後ろで何が起きているんだろう)
ネルアの背後で何かが起きている。
聞こえる声は悲鳴ばかり。
「お、おれを撃つな、やめ──────」
「は、はぁ!? 何で、さっきまであっちを狙っていたのに─────」
「嫌だ、嫌だ! 死にたくな──────────」
「な、何が起こって」
どさり、どさりと人が倒れる音がする。それに慌てた銃声が無数に響き渡る。
しかしネルアは振り返らなかった。
(この人から目を逸らしたくない)
ネルアは一度だけ瞬きをした。
その瞬間に自覚する。
(ああ………………この感情は安心だ)
レヴィが来た。もう大丈夫。そう安心してしまう。
ネルアは彼を理解が及ばないほど圧倒的だと知っている。初めて会った時から。
そんな存在が自分の元に来た。
安堵感が押し寄せる。
呼吸が楽になっていく。
肩の力が抜け、落ち着く。
「少し休憩をしよう」
レヴィが低く落ち着いた声で話す。
「き、休憩……?」
「ああ。その間に全てが片付く」
レヴィはいつも通りに微笑んだ。
「その時間は好きに、お前は自由でいればいい」
ネルアがレヴィと目を合わせたままキョトンと目を丸くする。
(……オレが思う自由? 好きにしていいってこと?)
ネルアはそのまま考えた。
「撤退だ! 今すぐ──────────」
傷の男の声が途切れた。
その後、足音がドタドタと遠のいていく。
が、その足音も倒れる『どさり』という音に変わる。
ネルアのいる木の後ろに一人、倒れている警察官がいた。
その警察官がピクリと動く。
警察官は地を這いつつ、銃を持った。
「しっ、指令はぜっ、たいに……」
揺めきながらネルアへ銃を向ける。
その時だった。
レヴィが左手で横の腰から銃を取り出す。
その銃は見たことのない硝子の銃だった。
地を這う警察官が弾を撃つ。
同時にレヴィが銃弾を発射させた。その弾は硝子でできた透明だった。
警察官の銃弾がこちらへ向かう。一直線で。
そして硝子銃から飛び出した硝子の銃弾が警察官へと向かう。
硝子の弾は警察官が撃った弾に衝突する。
そして警察官の銃弾が弾け飛んだ。アリゾレッド製の銃弾は負けた。
強度が勝った硝子の弾。その弾は飛ぶのをやめない。そのまま向かった。
警察官は目を瞑る暇もなく──────────撃たれた。
弾は警察官の頭蓋骨を貫通する。同時に脳を覆っていた脳脊髄液と血が共に飛ぶ。
警察官の脳がそのままの状態で外に吹き飛んだ。
その反動でバタリと後ろへと倒れる。警察官はそのまま動かなくなった。




