彼の意見
包帯ではなくチョーカーであることには理由があった。
ネルアは頑固な正しさ大好き人間だ。彼は『包帯など毎度変えるのなんて勿体無い。加えて付け替えの手間を考えたら非効率的でしかない』と言うだろう。
レヴィはその考えに先回りした。
チョーカーという回答に至ったのは配慮である。
レヴィは器用さを表すかのようにチョーカーを簡単に留める。猟奇的な内出血は姿を隠した。
傷を隠し終わるとレヴィは一歩下がる。そしてネルアの表情を見た。
頑固な正しさ大好き人間は納得のいかない顔をしている。
何故傷を隠す必要があるのか分からないまま悩んでいた。
「患者の中には負傷が恐怖の対象な者も多い。だから隠すんだ」
レヴィがネルアの表情を読み、回答を述べる。
その答えを聞いたネルアの眉がピクリと動いた。
「怖さなんて心の持ち様でしょう?」
「お前の場合はそうかもしれない」
ネルアの答えは純なる答えである。他人を馬鹿にするためでも蹴落とすためでもない。本当にそう思っていることを正直に述べている。
そのことをレヴィは理解していた。
「恐怖という負の感情は生来備わった自分を守るための能力だろう」
レヴィはネルアに感情的ではない答えを提示する。
(患者は傷を見ると恐怖が発動するのから自己防衛のためにオレから離れていく?)
ネルアは目を細め、考える。
「つまり傷を見せると患者からは信頼を得られないということですか?」
「そうだ」
「……共感できません」
「別にしなくていいさ」
「でも」
ネルアはハムスターのように頬を膨らませた。
可愛げはなくムッスリと。
「レヴィさんは?」
「俺?」
「あなた自身はオレの傷を嫌に思いますか?」
ネルアはレヴィの目をじっと見つめて聞いた。
(この人の私的な意見が聞きたい)
レヴィを初めて会った時から『特別』という言葉が似合う存在だと感じた。
顔や異能の使用の上手さ、そういった点だけじゃない。
(何に対しても世界を引いて見ているようなところ。いつだって淡々と余裕があるところ)
考えれば考えるほど彼のカリスマ性を自覚してしまう。
圧倒的な彼。特別視してしまうのは当然のことだった。
(高位な存在。そう感覚的に思ってしまう)
ネルアは彼の本心を聞きたいと心の底から望む。どんな小さなことでも彼の答えが聞きたくてたまらなかった。
レヴィは微笑みの表情を変えることなく口を開く。
「取るに足らんな。傷があろうがなかろうがどちらでも構わない」
ネルアは黙った。
やはりレヴィの話し方には無駄な感情が作用しない。会話をしていて疲れることが絶対にない。
たとえ彼が話す内容が冷たい物であっても落ち着きがあり平穏に寄り添う言葉に感じてしまう。
「……そうですか」
しかし、ネルアには相手の言葉に順応する会話力はない。
そんな自分はどうすればいいのかと眉がハの字になってしまう。
ネルアは腕を組み、また一人悩み出す。
「お前が患者の前で共感も理解もできなかろうと否定だけしなければそれでいい」
レヴィがネルアの目を離さず告げた。
そう一つのことを難しくする必要はない、とレヴィは言う。
その言葉は簡単にネルアを安心させた。
ネルアが自分なりにその言葉を受け入れる。
何も思わずとも聞き入れるだけでいいと解釈する。レヴィの言葉で恐怖から傷を隠すことまでの納得をした。
レヴィは仕事を開始しようと扉を開いて廊下へと出る。
ネルアも追って部屋を出る。
ヤーシャは部屋に一人残された。
表情は疲れ切りしょぼしょぼになっている。
「な、仲が良いなぁ二人とも…………ボクを置いていかなでぇ……あっ、ボクの持ち場ここだった……」
と声にならない声を放つ。
ヤーシャは少し寂しさを感じながら席に着いた。 包帯ではなくチョーカーであることには理由があった。
ネルアは頑固な正しさ大好き人間だ。彼は『包帯など毎度変えるのなんて勿体無い。加えて付け替えの手間を考えたら非効率的でしかない』と言うだろう。
レヴィはその考えに先回りした。
チョーカーという回答に至ったのは配慮である。
レヴィは器用さを表すかのようにチョーカーを簡単に留める。猟奇的な内出血は姿を隠した。
傷を隠し終わるとレヴィは一歩下がる。そしてネルアの表情を見た。
頑固な正しさ大好き人間は納得のいかない顔をしている。
何故傷を隠す必要があるのか分からないまま悩んでいた。
「患者の中には負傷が恐怖の対象な者も多い。だから隠すんだ」
レヴィがネルアの表情を読み、回答を述べる。
その答えを聞いたネルアの眉がピクリと動いた。
「怖さなんて心の持ち様でしょう?」
「お前の場合はそうかもしれない」
ネルアの答えは純なる答えである。他人を馬鹿にするためでも蹴落とすためでもない。本当にそう思っていることを正直に述べている。
そのことをレヴィは理解していた。
「恐怖という負の感情は生来備わった自分を守るための能力だろう」
レヴィはネルアに感情的ではない答えを提示する。
(患者は傷を見ると恐怖が発動するのから自己防衛のためにオレから離れていく?)
ネルアは目を細め、考える。
「つまり傷を見せると患者からは信頼を得られないということですか?」
「そうだ」
「……共感できません」
「別にしなくていいさ」
「でも」
ネルアはハムスターのように頬を膨らませた。
可愛げはなくムッスリと。
「レヴィさんは?」
「俺?」
「あなた自身はオレの傷を嫌に思いますか?」
ネルアはレヴィの目をじっと見つめて聞いた。
(この人の私的な意見が聞きたい)
レヴィを初めて会った時から『特別』という言葉が似合う存在だと感じた。
顔や異能の使用の上手さ、そういった点だけじゃない。
(何に対しても世界を引いて見ているようなところ。いつだって淡々と余裕があるところ)
考えれば考えるほど彼のカリスマ性を自覚してしまう。
圧倒的な彼。特別視してしまうのは当然のことだった。
(高位な存在。そう感覚的に思ってしまう)
ネルアは彼の本心を聞きたいと心の底から望む。どんな小さなことでも彼の答えが聞きたくてたまらなかった。
レヴィは微笑みの表情を変えることなく口を開く。
「取るに足らんな。傷があろうがなかろうがどちらでも構わない」
ネルアは黙った。
やはりレヴィの話し方には無駄な感情が作用しない。会話をしていて疲れることが絶対にない。
たとえ彼が話す内容が冷たい物であっても落ち着きがあり平穏に寄り添う言葉に感じてしまう。
「……そうですか」
しかし、ネルアには相手の言葉に順応する会話力はない。
そんな自分はどうすればいいのかと眉がハの字になってしまう。
ネルアは腕を組み、また一人悩み出す。
「お前が患者の前で共感も理解もできなかろうと否定だけしなければそれでいい」
レヴィがネルアの目を離さず告げた。
そう一つのことを難しくする必要はない、とレヴィは言う。
その言葉は簡単にネルアを安心させた。
ネルアが自分なりにその言葉を受け入れる。
何も思わずとも聞き入れるだけでいいと解釈する。レヴィの言葉で恐怖から傷を隠すことまでの納得をした。
レヴィは仕事を開始しようと扉を開いて廊下へと出る。
ネルアも追って部屋を出る。
ヤーシャは部屋に一人残された。
表情は疲れ切りしょぼしょぼになっている。
「な、仲が良いなぁ二人とも…………ボクを置いていかなでぇ……あっ、ボクの持ち場ここだった……」
と声にならない声を放つ。
ヤーシャは少し寂しさを感じながら席に着いた。




