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五月蝿い男の乱入

 ドォォオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーンッ! と、かなりの音が響き渡った。

 ケシェニカとソゾンは瞬時に扉の方を向く。

 扉はスライドされる。猛烈な速度で。

 動かされた扉は二度目の大きな反動に耐えられなかった。

 傷ついた扉は衝撃によりガタンッとレールから外れてしまう。

 そして空中を落下していく。

 一枚の扉が地に着く瞬間、そこからは轟音が響き渡った。


挿絵(By みてみん)


 更に《космос(コスマス)》の一員が加わる。

 ソゾンは片手で帽子の上から頭を抱えた。そして多大なため息を吐く。

 同時にケシェニカも頭を抱えた。そして多大なため息を吐く。

 二人の口元には歯がしっかり見えるほど怒りと呆れが示されていた。


「ヤぁヤぁヤぁ!! 見つけました、エェ、見つけましたよお二人サーマ! ふふっっ、ワタクシの布教演説を楽しみにしていた顔ですねぇ……そうでしょう Everyone(エブリワン)? ハーイ!」


 一人の男の乱入。その人間はニタリと口の端を吊り上がらせた笑みを浮かべている。

「呼んでねぇ、帰れよ」

「ならばご一緒に帰りましょう! ケシェニカさァん? ワタクシと有意義なお喋りをいたしましょうネぇ!」

「テメェと話すことなんざねぇよ!!」


 ケシェニカは冷静にツッコミを入れた。それでも男はニヘニヘと笑うことをやめない。

 ケシェニカは二度目の大きな舌打ちを鳴らした。

「……あいつを呼び出したのかよ。ソゾン、テメェクソだな」

「わたしは彼を呼んでなどいない。パステルザーク、(ただ)ちに帰りたまえ」


 パステルザークという五月蝿(うるさ)い人間。その人間は倒れた扉の上へと立った。勿論(もちろん)、カッカッと足音を鳴らせて。

 彼はその薄い高さの段を自身のステージだと思い込んでいる。

 右手を胸に置き、満面の笑みでソゾンを見た。

「我が主であり推し、フロール・フェリック様の会話の香りがしましてねぇ。あぁ、します。しますよォオオ!! しますよネ? えっスルヨネ!? このままどんどん濃くしましょう!」


 ケシェニカが拳を握った。その拳はパステルザークが五月蝿く、本気で目障りなために掲げられたものである。


「さぁさぁ! まずはMr.(ミスター)ネルアとは何処(どこ)ぞの誰だね。教えなされ、お二人さ──────」

 ケシェニカがパステルザークの胸ぐらに左手をかけた。

 短気な彼にとってパステルザークは一番嫌いな人である。

 ケシェニカはぎゅっと右手を強く握った。その腕は助走をつけるように後ろ側へ引かれ、筋肉の線が分かるほどの力が込められている。

「ひでぇ打撲で見た目を混血にでもしてやるよ」

 殴るための右拳が向かう。パステルザークの顔面へと勢いよく向かった。

「はっはっはっはぁ!! 痛いのヤダ! ダイスキ! 嘘、大嫌イィ!! た、たぁーすけって! 助けてっ、ハイ♪ 試作品(マイドール)No.07ぢゃぁん!」

 パステルザークが早口で唱える。およそ三秒ほどで発せられた言葉はとても大声であった。

 そのかん高い耳障りな言葉がケシェニカの更なる苛立ちを引き起こさせる。


 しかし、パステルザークの唱えた言葉から微かな違和感を感じ取った。

 違和感は的中する。

 微かな歪な足音。

 ドドドドドッと迫る音が扉の方から聞こえ出し、その足音は段々とこちらに向かってきていた。



「やめたまえぇっ!!」



 ソゾンの否定が大きく、フロア中を反響する。吐く息の量によって一時的に帽子が上がる程の大声だった。

 ケシェニカとパステルザークはソゾンの口を見た。

 普段顔を隠し、帽子と布の影で表情さえ見えないソゾンが表情を見せた。

 ケシェニカは驚いた後、渋々手を止める。加えて、パステルザークが唱えて発生した足音もピタリと止まった。


 ソゾンはため息をこれでもかと吐き散らす。

「話の続きだが……ケシェニカ、あの個体をどこへやった。アレは成功体だぞ」

「知らねぇよ。なんだその成功体ってのは」

「アレ=ネルアさぁん? 誰それー」


 パステルザークが口を大きく開いて発言する。彼は高速的な(まばた)きをしつつ疑問を述べていた。

 動きまで五月蝿(うるさ)い彼をケシェニカとソゾンはアホと決めつけた。

 珍しいことに、二人はパステルザークのことになれば気が合っている。

 しかし、人外の二人はそのことにも苛立ちを覚えた。マイペースすぎる彼を無視して話を続ける。


「アレは国家機密機器【因果支配権(ドミニエレン)】の成功体だ。アレが手元になければ我々《космос(コスマス)》が存在する理由もない」

「はぁ? 意味わかんねぇ。そんな大それた話聞いたこたぁないね。パスだ、おれぁ帰る」

 ケシェニカはソゾンに背を向けて足を扉へと向けた。

「この計画は元々、私とフロールとの間で進めていた─────」

「ふっ、フロール様ぁァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァアアアアっ!」 

 ケシェニカとソゾンの聴覚にキーンと煩わしい声が響く。二人は分かりやすく聴覚を抑えた。

 ケシェニカは『フロール』という名を聞き、立ち止まった。

「……るせぇな。このアホのようにおれは知らねぇが……フロールつー奴はあれだろ、第三次のときの部下の信用も得られず落ちぶれたろくでなし。そいつがなんだ、百年前の人物が生きてるわけねぇだろ。オカルトかよ、ソゾンまでイマジナリーでも見てんのか」

「彼はろくでなしではないっ!!」

 バンッと机が叩かれる。

 ソゾンが(またた)く間に大きな口を見せつつ、机を殴った。

 その行為にパステルザークはパァーっと元気を顔から放つ。次第に彼は腕を組み、直ちに深い相槌を何度も行った。『うんうん、そうだ、そうですぞ、フロール様ぁ、オホホ』と言わんばかりにの相槌を打っていた。


 ゴホン、とソゾンが咳払いをする。

「パステルザークのように崇拝対象ではないが……彼はよくやっている。今も尚、()()して。[願叶有機体(ドミニエル)]はフロールの最高傑作なのだから」

「待て待て待て。そいつが当然のようにいる前提で話すな。死人だろ? 転生? 現実見ろって」

「ふ、フフフフッ、フロォォオオル様ぁぁあ! 彼はワタクシの中で未来永劫生き続けており──────────アうッ!」

 ケシェニカは手刀をキメた。パステルザークの首の後ろに。

 あくまで軽い威力の手刀である。が、貧弱なパステルザークにとっては多大なダメージであることに変わりはなかった。

 パステルザークは笑顔のまま倒れ、扉の上で伸びた。

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