表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/60

第33話 役割分担

 五人以上。


 散らばった負傷者達。


 崩れた建物。


 狭い通路。


 不安定な足場。


 第三班は立ち止まった。


「どうする?」


 ディルクが聞く。


 前回までなら。


 まず自分で決めていたはずだった。


 だが今は違う。


 カナトは周囲を見回した。


「まず情報が欲しい」


「情報?」


 エミールが聞き返す。


「見えてる範囲だけじゃ足りない」


 カナトは頷いた。


「誰が重症か分からない」


「誰が危険な場所にいるかも分からない」


 その時だった。


「私が見てくる」


 ミレナが口を開く。


 全員がそちらを見る。


「行けるの?」


「見てくるだけ」


 短い返答。


 ディルクが周囲を確認する。


「十分以内に戻れ」


「了解」


 そう言うとミレナは軽やかに瓦礫の上へ飛び乗った。


 まるで猫のような身軽さだった。


 エミールが感心したように呟く。


「すごい……」


「あいつは実技でも身軽なやつだったからな」


 ディルクが言う。


「視野確保も仕事だ」


 カナトは少し意外そうな顔をした。


 ディルクなりに仲間の役割を理解しているらしい。


 数分後。


 ミレナが戻ってきた。


「報告」


 息一つ乱れていない。


「負傷者六名」


 全員が端末を開く。


「北側二名」


「南側一名」


「中央三名」


 簡潔な報告。


 だが必要な情報は揃っていた。


「北側」


 ミレナが続ける。


「一人は脚部損傷」


「もう一人は意識なし」


「南側」


「腕部外傷」


「中央」


「一人は出血多い」


「二人は軽傷」


 カナトは整理する。


 数秒。


 そして結論を出した。


「中央の出血多量が最優先」


 ディルクが頷く。


 異論はないらしい。


「次に北側の意識なし」


「その後で残り」


 エミールが手を挙げた。


「あの」


「どうしたの?」


「一班で全部回れますか?」


 その疑問はもっともだった。


 六人。


 しかも散らばっている。


 時間は有限だ。


 ディルクも地図を見ている。


「厳しいな」


 率直な意見だった。


「なら二手に分かれる?」


 カナトが提案する。


 エミールが顔を上げる。


 だが。


「駄目だ」


 即座に否定したのはディルクだった。


「どうして?」


「人数だ」


 ディルクは地図を指差した。


「四人しかいない」


「それはそうだけど」


「前衛が一人」


 そこでカナトも気付いた。


 もし二手に分かれるなら。


 どちらかに前衛がいなくなる。


「危険区域だ」


 ディルクは続ける。


「試験だからって何も起きない保証はない」


 「魔物が出る可能性も捨てきれない」


「搬送、護衛も必要」


「四人で二手は無理だ」


 エミールが何度も頷いている。


 確かに。


 理論上は分けられる。


 だが現場では違う。


「じゃあ順番に回る?」


「それも違う」


 ディルクは首を振った。


「中央を終わらせたら俺とミレナで北へ行く」


「カナトとエミールは中央の残りを処理」


 カナトが顔を上げた。


「二手に分かれるじゃないか」


「違う」


 ディルクは即答する。


「その時点で危険区域を抜けてる」


 なるほど。


 完全な分散ではない。


 安全を確保した後の分担。


 戦術的には合理的だった。


 カナトは思わず笑う。


「また君が正しいね」


「当たり前だ」


 即答だった。


 だが。


 前回ほど棘はない。


 エミールが小さく笑った。


 ミレナも僅かに口元を緩める。


 初めてだった。


 第三班の会話が。


 少しだけ班らしくなったのは。


「行くぞ」


 ディルクが先頭に立つ。


 今度は誰も反論しなかった。


 そして第三班は中央区域へ向かう。


 だが。


 そこに待っていた光景を見て。


 全員が足を止めることになる。


「……これは」


 エミールの顔が青ざめた。


 中央にいた三人。


 そのうち一人が。


 既に動かなくなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ