1-3 十日間
【今回の見どころ】
バイクの修理にかかった期間は「十日間」。一雄は満身創痍の身体で自転車デリバリーを余儀なくされる。そんな中、ついに修理が明けた愛車。オヤッサンが施した「細工」と、一雄の喉に迫る決定的な言葉とは――?
【作品紹介】
本作は、noteで「フーデリオン」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
本作は、38歳のおっさんフードデリバリー配達員が、配達で培った知識と未知数の鎧を纏い、未来からの襲撃者と戦う、音楽連動型の特撮風SF小説です。
【2作連動の仕掛け】
オヤッサンが一雄に告げた「歌は、やめるな」という言葉。なぜ彼は一雄の葛藤を見抜いていたのか?
そのすべての元凶となる、一雄の30年前の姿を描いた別世界線
▼ ▼ ▼
『魂のラブレターを運命のアイドルに直接届けたらストーカー対策会議の議題にされた件』
▲ ▲ ▲
と合わせて読むと、このセリフの本当の重みが突き刺さります。
【主題歌】
YouTube・noteにて順次公開!
①FoodFighter「紡ぐ意思〜フーデリオン〜」
作者が作詞しました。
ぜひ聴いて小説を楽しんでほしいです!
(リンクは後書きの下にあります)
修理には十日かかった。
その十日、一雄は自転車で配達した。三十八歳の身体、七十六キロ、左手首は固定具。坂道を立ち漕ぎするたびに、自分の腹が太腿に当たるのがわかる。
一件あたりの単価は下がり、移動距離は伸びない。一日走って稼げる額は、バイクの半分もなかった。雨の日は稼ぎたくても稼げない。稼げない日は音楽の機材のローンが重くなる。重くなると、専属契約のメールを開いてしまう。
「時給一八〇〇円保証」という文字を、一雄は夜中に何度も読んだ。
それは要するに、歌をやめろという条件だった。専属契約書の第八条に、こう書いてあった。副業の届出義務。SNSでの発信内容の事前承認。
itiという名前を届け出て、承認をもらって、歌う。
十日目の朝、オヤッサンから電話があった。
「上がったぞ。取りに来い」
店に行くと、一雄のスクーターが妙に低い位置で光っていた。
レバーもミラーも新品だ。だが、それだけではなかった。擦り傷のあったカウルは、まるごと違う質感のものに換わっていた。塗装ではない。素材そのものが、見る角度によって鈍い銀色に沈む。
「オヤッサン、これ……」
「ついでだ。取っといたカウルがあったんだよ」
「ついで? ミラーとレバーだけって話じゃ」
「サービスだ」
「いくら?」
「レバーとミラーの部品代だけでいい。四千二百円」
一雄は財布を出しながら、どうしても引っかかった。四千二百円の修理で、十日はかからない。
「オヤッサン。本当に何したの」
「細工だよ」
オヤッサンはウエスで手を拭いた。
「一雄。もし、どうにも困ったことになったら」
「なったら?」
「バイクに向かって、『ピックアップオン』って叫べ」
一雄は数秒黙った。
「……何それ。新手のオイル交換のキャンペーン?」
「覚えとけ。ピックアップオンだ」
「いやオヤッサン、それ何かのパスワード? あ、わかった、特撮のやつだろ。昔の。俺も好きだけどさ」
「覚えとけって言ってんだよ」
オヤッサンの声の低さに、一雄は笑うのをやめた。
「……わかったよ。ピックアップオン。覚えた」
「声に出せ」
「え?」
「小さくてもいい。ちゃんと、お前の声で言え」
意味がわからなかったが、一雄は言った。
「ピックアップオン」
オヤッサンは、少しだけ目を細めた。それから、満足したように頷いた。
「よし。気をつけて帰れ」
シャッターが下りる直前、オヤッサンがもう一度言った。
「一雄。歌は、やめるな」
一雄は、言われた意味がわからなかった。専属契約のことを、そんなふうに解釈されるとは思っていなかった。だいたい、あのメールのことを話したのは一度だけだ。第八条のことは、一言も言っていない。
第一章 〜完〜
第3話をお読みいただきありがとうございました!
明日の同じ時間に、第二章に突入!第4話「2-1 くたばりなっ!」を投稿予定です。お楽しみに!
少しでも面白いと思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】でのポイント応援や、ブックマーク登録をぜひよろしくお願いいたします!
【主題歌のお知らせ!!】
作者が作詞しAI(Suno)と制作した主題歌
『紡ぐ意思〜フーデリオン〜』YouTube・noteで公開中!
アプリから閲覧している方はお手数ですが
YouTube・noteから「なおパパ」で検索をお願いします!!
▼▼▼このアイコンが目印▼▼▼
サイトから閲覧している方は
▼▼もっと下に楽曲・noteリンクがあるよ▼▼




