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4-11 言わないで

挿絵(By みてみん)


【前回の振り返り】


大川に完敗し、オヤッサンを失った冷徹な現実。


作業台の上の不格好な「雪だるま」を動かしながら、一雄は圧倒的な無力感と悔しさに直面します。


「死んだら次の判断はできない」

厳しい言葉の裏で、絶対に一雄を死なせないという陸の強い意志、そして不器用な蓮の優しさに触れ、一雄は戦士としての大切な一歩を踏み出しました。


そしてその夜。工場の照明が半分落ちた暗闇の中で、物語は静かに動き出します――。





【作品紹介】


本作は、noteで「フーデリオン」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。


本作は、38歳のおっさんフードデリバリー配達員が、配達で培った知識と未知数の鎧を纏い、未来からの襲撃者と戦う、音楽連動型の特撮風SF小説です。



【2作連動の仕掛け】


オヤッサンが一雄に告げた「歌は、やめるな」という言葉。なぜ彼は一雄の葛藤を見抜いていたのか?


そのすべての元凶となる、一雄の30年前の姿を描いた別世界線

     ▼ ▼ ▼

『魂のラブレターを運命のアイドルに直接届けたらストーカー対策会議の議題にされた件』

     ▲ ▲ ▲

と合わせて読むと、このセリフの本当の重みが突き刺さります。



【主題歌】

YouTube・noteにて順次公開!


①オープニングテーマソング

FoodFighter「紡ぐ意思〜フーデリオン〜」


②エンディングテーマソング

FoodFighter「流星」



作者が作詞しました。

ぜひ聴いて小説を楽しんでほしいです!


(リンクは後書きの下にあります)

【4-11 本文】


五月七日。


陸の座学は、二日目も続いた。


作業台の上には、赤いボタンと雪だるまが並んでいる。蓮は敵役の赤いボタンを動かし、一雄は左手で雪だるまを動かした。


「ここで一雄が前に出る」


「また俺が殴られるやつ?」


「そうならないための練習だ」


「座ったまま殴られる練習って、あんまり聞かないな」


「じゃあ立つか? 肩が治ってからな」


「……座学でお願いします」


蓮が雪だるまを、作業台の端へ動かした。


「ほら。そこから逃げ道を探す」


「そっちは塞がってる。こっちなら抜けられる」


一雄は、工具を一本ずらした。


「じゃあ、こっちに人がいたら?」


「その人をどかす。無理なら、別の道を探す」


「よし」


「先生みたいだね」


蓮が陸を見た。


「お前も聞いてるんだろ」


「聞いてるよ。雪だるまが一雄ってこともね」


「そこは忘れていいよ」


「忘れないよ。似てるもん」


「似てない」


陸は赤いボタンを指で弾いた。ボタンは作業台の上を転がり、一雄の雪だるまにぶつかった。


「大川が来たらどうする」


「ボタンを投げつける」


「当たったら?」


「奇跡を祈る」


「祈るな」


蓮が笑った。


「でも、投げるのはありかも。相手の目を引ける」


「一瞬だけな。その間に逃げる」


陸はボタンを拾い、今度は作業台の端に置いた。


「戦うのは、勝つためだけじゃない。逃げる時間を作るためでもある」


「うん」


一雄は頷いた。右肩はまだ痛む。腕を動かさずに、頭の中で動きを追った。


その日の座学は、そこで終わった。


次の日も、その次の日も、陸は違う状況を作った。敵の数を変え、道を塞ぎ、逃げ道を一つだけ残す。一雄と蓮は、部品を動かしながら答えを探した。


正解は一つではなかった。


だが、陸は一つだけ、何度も言った。


「止まるな。考えて、動け」


その夜、一雄は水を飲みに作業台を離れた。


工場の照明は、半分ほど落ちていた。奥のほうでは、機械が低く唸っている。陸と蓮の姿は見えなかった。


蛇口をひねると、水道管が短く鳴った。


その音のあとに、息を詰めるような音がした。


一雄は蛇口を止めた。


工場の奥に、陸がいた。


作業台の陰に腰を下ろし、顔を伏せている。片手で目元を覆い、もう片方の手を膝の上で握っていた。


肩が、小さく震えている。


「助け…なかった……ごめんよ……」


声はとても小さく、全部は聞き取れなかった。


一雄は、名前を呼ぼうとした。


「陸……」


そのとき、後ろから袖を引かれた。


蓮だった。


一雄は声を止めた。


蓮は陸を見ていた。驚いた様子はなかった。ただ、陸に気づかれないように、一雄の袖をつかんでいる。


「言わないであげて」


小さな声だった。


一雄は頷いた。


陸は顔を上げなかった。しばらくして、手の甲で目元を拭い、何事もなかったように立ち上がった。


「爺。明日の部品、確認しておいてくれ」


『了解した』


陸は作業台へ戻っていった。


蓮は、一雄の袖から手を離した。


二人は何も言わず、工場の反対側へ戻った。


一雄は、さっき陸を呼びかけた声を胸の中にしまった。


陸の背中は、いつもと同じように見えた。


同じように見せているのだと、一雄は思った。



【4-12へ続く】

ep.22 4-11「言わないで」をお読みいただき、ありがとうございました!


半分照明の落ちた夜の工場で、一雄が偶然にも目撃してしまった光景。


いつも強くて頼れる兄貴分である陸の、胸の奥底に隠されていた本当の傷と、それを無言で包み込もうとする蓮の不器用な優しさに胸が締め付けられる回でした。


蓮が口にした「言わないであげて」という言葉の重みが、静かに心に響きます。



【次回 ep.23 4-12「僕の秘密」明日18:00公開予定!】


張り詰めたシリアスな空気から一転、一雄の右肩のリハビリを兼ねて、3人の「息抜き」が始まります!


蓮からのとんでもない無茶振りに、一雄が語り出したフードデリバリー業界の謎の専門用語『地蔵』。そして工場の壁が動き、まさかの簡易ステージが出現!?


一雄がギターを抱えて披露する、あまりにもおかしな「ある秘密」とは――。


3人の絆が最高にコミカルに、そして温かく交錯する絶対に見逃せない日常神回です。明日も18:00に全力でお届けします!




【作者からのお願い m(_ _;)m】


「おもしろい!」「続きが気になる!」と思ってくださったら、

ページの一番下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にタップして、ポイント応援(評価)をいただけるとめちゃくちゃ励みになります!


また、スマートフォンの画面の上か下にある【ブックマークに追加】ボタンをぽちっと押していただくだけで、明日の18時の更新が最速であなたの本棚に届くようになります。どうか応援よろしくお願いいたします!




【主題歌のお知らせ!!】

作者が作詞しAI(Suno)と制作した楽曲

YouTube・noteで順次公開中!


オープニングテーマソング

『紡ぐ意思〜フーデリオン〜』


エンディングテーマソング

『流星』


アプリから閲覧している方はお手数ですが

YouTube・noteから「なおパパ」で検索をお願いします!!


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挿絵(By みてみん)


サイトから閲覧している方は

▼▼もっと下に楽曲・noteリンクがあるよ▼▼

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