4-2 廃棄物処理
【今回の見どころ】
「一雄……来るな。お前じゃ、コイツには勝てん」
未来からの最強の回収員「大川新太郎」。サイボーグと化した最凶の男の前に、一雄の怒りは届かず、オヤッサンは無慈悲な“廃棄物処理”の光に飲まれて消え去ってしまう。
絶望の底で「ブースト一・四倍」を叫び、全てを懸けて突撃する一雄。しかし、最強の力の前に一雄は一瞬で叩き伏せられ、夜空を見上げる。
死の直前、一雄の視界に堕ちてきたのは、夜空を切り裂くひとつの光。
砂塵の向こうから現れた、橙のラインを宿す「赤い装甲の戦士」の正体とは――!?
【作品紹介】
本作は、noteで「フーデリオン」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。
本作は、38歳のおっさんフードデリバリー配達員が、配達で培った知識と未知数の鎧を纏い、未来からの襲撃者と戦う、音楽連動型の特撮風SF小説です。
【2作連動の仕掛け】
オヤッサンが一雄に告げた「歌は、やめるな」という言葉。なぜ彼は一雄の葛藤を見抜いていたのか?
そのすべての元凶となる、一雄の30年前の姿を描いた別世界線
▼ ▼ ▼
『魂のラブレターを運命のアイドルに直接届けたらストーカー対策会議の議題にされた件』
▲ ▲ ▲
と合わせて読むと、このセリフの本当の重みが突き刺さります。
【主題歌】
YouTube・noteにて順次公開!
①FoodFighter「紡ぐ意思〜フーデリオン〜」
作者が作詞しました。
ぜひ聴いて小説を楽しんでほしいです!
(リンクは後書きの下にあります)
【4-2 本文】
「オヤッサン!! 何してんだお前!!」
男が、こちらを見た。
目の奥で、何かが一度だけ絞られる音がした。
「おっと」
男は、吊り上げた手を少し持ち上げた。オヤッサンの首が、わずかに傾いた。
「それ以上近づくと、この死にぞこないが本当の死体になるぞ」
一雄は足を止めた。砂利が鳴って、止まった。
オヤッサンの口が動いた。声は出ていなかった。もう一度動いて、やっと音になった。
「一雄……来るな」
「オヤッサン」
「お前じゃ、コイツには勝てん」
喉の銀色の輪が、不自然な角度に曲がっていた。
「逃げろ」
一雄は、スクーターから足を降ろした。
「オヤッサン、大丈夫です」
ヘルメットの顎紐を締め直した。指が震えていて、二度やり直した。
「俺には奥の手があります。ピック――」
「やめろ!!」
それは、一雄が初めて聞く大きさだった。潰れた喉から出る音ではなかった。出してはいけない音だった。
オヤッサンが咳をした。垂れた腕の先から、血が砂利に落ちた。
「この男の名は、大川新太郎」
男は止めなかった。黙って聞いていた。
「元ユーパーイーツの幹部だった男だ」
「オヤッサン、喋らないで」
「ただでさえ有能な頭脳に、AIを埋め込んどる。体はサイボーグだ」
オヤッサンは、そこで一雄を見た。
「最強の回収員だ」
一雄は動けなかった。
「紹介してくれて、ありがとう」
男が言った。低い声だった。拡声されているような、どこか均された声だった。
「礼をしよう。最新の機能をお見せする」
男は、空いているほうの手をオヤッサンの胸に当てた。
一雄は走った。
嫌な機械音が響いた。一雄は顔をしかめ、一瞬まばたきをしながら、全力で走った。
そこにもう、オヤッサンはいなかった。
オヤッサンだった形が、なかった。
作業着が砂利の上に落ちていた。その下に、灰が薄く積もっていた。
「はっはっは!! 大成功だ!!」
男は自分の手を見ていた。
「廃棄物処理のために研究していたものを腕に組み込んでみたが、使えるな」
一雄は、砂利を見ていた。
さっきまで、そこに人がいた。首にタオルを巻いた、背の低い、肩と腕の太い人がいた。
砂利の上に、作業着があった。それだけだった。
「えっ……」
声が、喉の途中で止まった。
「オヤッサ……」
一雄は立ち上がった。立ち上がったつもりだった。膝が砂利を擦った。もう一度やって、立った。
「ピックアップ オン」
『声紋確認。フーデリオン・アーマー、装着します』
二秒。
銀色が貼りついた。顔の前に黒い板が降りて、視界が暗くなり、内側に枠が出た。目的地。距離。到着予定。何も入っていない空欄が、三つ並んでいた。
「おおかわぁぁぁぁ!!」
一雄は走った。
「ブースト 一・四倍!!」
体が前に出た。十五周走った体が、知っている速さで前に出た。この速さで槍をかわした。この速さで五人を振り切った。これが自分の全部だった。
拳を出した。
当たらなかった。
気づけば、一雄は空を見上げていた。
星が、いくつか見えた。
背中が砂利に埋まっていて、体のどこにも力が入らなかった。右の肩から先の感覚がない。口の中が鉄の味で満ちていた。
何が起きたのか、分からなかった。
走った。叫んだ。拳を出した。そこまでは覚えている。そのあとがない。
オヤッサンがいない。
いないのではなく、いなくなった。手のひらから下へ落ちて、風で流れた。
それを、さっき見た。
見たのに、考えが先へ進まなかった。砂利が背中に冷たくて、星が見えていて、自分が倒れていて、それだけが並んでいた。どれも繋がらなかった。
「遅いな」
男が、歩いてくる音がした。
「それで勝てると思ったのか」
砂利を踏む音が、すぐ横で止まった。
「まぁいい。コレで任務完了だな」
男が腕を上げた。
一雄は空を見ていた。
星が、一つ増えたように見えた。
増えたのではなかった。
落ちてきていた。
光が、男と一雄の間に落ちた。砂利が跳ねて、一雄の装甲を叩いた。
砂埃の中に、何かが立っていた。
人の形をしていた。片膝をついた姿勢から、ゆっくり立ち上がった。
赤い装甲だった。継ぎ目に、橙の線が走っていた。肩に、短い棘が二本ついている。
右手に、四角いものを持っていた。
男が、初めて一歩下がった。
「貴様」
赤い装甲は、男を見ていなかった。倒れている一雄を見下ろしていた。
シールドの奥から、声がした。
「あんたが、宇場一雄か」
【4-3へ続く】
第13話をお読みいただきありがとうございました!
明日の同じ時間に、第14話「4-3 ゴング・バースト」を投稿予定です。お楽しみに!
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【主題歌のお知らせ!!】
作者が作詞しAI(Suno)と制作した主題歌
『紡ぐ意思〜フーデリオン〜』YouTube・noteで公開中!
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