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4-1 圏外

挿絵(By みてみん)


【今回の見どころ】


「オヤッサン。今の、二分早かったです」

いつもと変わらぬ深夜のデリバリーを終えた一雄。しかし、耳元の無線から返ってくるはずの頑固な声は消え、不穏な沈黙だけが響いていた。

胸騒ぎを覚えながら、夜の街を急行した一雄が目撃したのは――跡形もなく破壊され、もとの空き地へと戻されてしまった「モトショップ ウバ」の無残な姿だった。

立ち込める暗雲の中、街灯の下に佇む“あの屋上の男”。

その片手に無慈悲に吊り上げられたオヤッサン。

ついに一雄の日常を完全に粉砕する、未来からの“真の絶望”が牙を剥く――!


【作品紹介】


本作は、noteで「フーデリオン」として執筆している小説を、小説を読もう!用に投稿しました。


本作は、38歳のおっさんフードデリバリー配達員が、配達で培った知識と未知数の鎧を纏い、未来からの襲撃者と戦う、音楽連動型の特撮風SF小説です。



【2作連動の仕掛け】


オヤッサンが一雄に告げた「歌は、やめるな」という言葉。なぜ彼は一雄の葛藤を見抜いていたのか?


そのすべての元凶となる、一雄の30年前の姿を描いた別世界線

     ▼ ▼ ▼

『魂のラブレターを運命のアイドルに直接届けたらストーカー対策会議の議題にされた件』

     ▲ ▲ ▲

と合わせて読むと、このセリフの本当の重みが突き刺さります。



【主題歌】

YouTube・noteにて順次公開!

①FoodFighter「紡ぐ意思〜フーデリオン〜」


作者が作詞しました。

ぜひ聴いて小説を楽しんでほしいです!


(リンクは後書きの下にあります)


【4-1 本文】


五月二日。午後九時十二分。


六人目は、駐車場の入口で待っていた。


一雄はスクーターを停めなかった。そのまま横を抜けて、ブロック塀の切れ目へ入った。槍の先が、ミラーをかすめて落ちた。


『右だ』


「分かってます」


『そのまま川沿いへ出ろ。人目のあるほうへ行け』


「それ、もう三回聞きました」


『四回言う』


一雄は笑った。笑いながら、右へ曲がった。


街灯の列に出た。コンビニの白い光が、路面を濡らしたように照らしている。自販機の前に高校生が二人いた。足音が止まった。回収員は、明かりのある場所には出てこない。


『止まるな。そのまま配達先まで行け』


「はい」


『数字は』


「〇・八キロです」


『気をつけて行け』


一雄はアクセルを開けた。背中の保温バッグに、まだ温かいものが入っている。鶏の唐揚げ弁当が二つ。到着予定は九時二十一分。


九時十九分に着いた。二分早い。


アパートの二階。インターホンを押すと、二十代くらいの男が出てきて、黙って受け取って、黙ってドアを閉めた。それでいい。十年やっていれば、そういう家のほうが多い。


階段を降りながら、一雄はヘルメットの中で言った。


「オヤッサン。今の、二分早かったです」


返事がなかった。


「オヤッサン」


耳元が、静かだった。


接続音もしなかった。切れた音ではない。切れた音がしないまま、ただ何もなくなっていた。


一雄は階段の途中で止まった。ヘルメットの顎の内側を、指で押した。マイクはそこにある。


「オヤッサン。聞こえますか」


一雄はスクーターに跨った。エンジンをかけて、スピーカーの線を見た。繋がっている。抜けていない。


アプリを見た。次の依頼が来ている。受けなかった。


店までの距離を出した。一・六キロ。


三分三十秒。


一雄は走った。


急いでいた。橋の先の信号を、速度を落とさずに曲がりたかった。普段より早めに右のウィンカーを出した。少し強引でも構わなかった。


対向車がパッシングした。先に行けという合図だった。


ありがたい、と片手を上げ車体を倒し右折した。


この角を曲がれば、店の看板が見える。夜でも電気を消さない看板だ。一度それを言ったことがある。電気代がもったいないですよと言ったら、見えなくなるだろうと言われた。誰に、とは訊かなかった。


角を曲がった。


看板がなかった。



一雄はブレーキを握った。タイヤが鳴って、スクーターが斜めに止まった。


店がなかった。


シャッターがあった場所に、壁がない。二階の床が斜めに落ちて、工具棚ごと歩道にはみ出している。並んでいたバイクが、潰れて重なっていた。砂利の駐車場と、建物のあった場所の区別がつかない。三週間前に開いた店が、もとの空き地に戻っていた。


煙が上がっていなかった。燃えたのではない。壊されていた。


街灯が一本だけ残っていて、その下に男が立っていた。


右腕の肘から先が、風でもないのに低く鳴っていた。


男は片手を上げていた。その手の先に、オヤッサンがいた。


首のタオルがない。片方の腕が、肩から下へ垂れている。足が地面についていない。七十九歳の体が、片手で吊られていた。


挿絵(By みてみん)


一雄はヘルメットを脱がなかった。


「オヤッサン!! 何してんだお前!!」


男が、こちらを見た。


目の奥で、何かが一度だけ絞られる音がした。



【4-2へ続く】

第12話をお読みいただきありがとうございました!

明日の同じ時間に、第2話「4-2 廃棄物処理」を投稿予定です。お楽しみに!


少しでも面白いと思ってくださったら、ページ下部の【☆☆☆☆☆】でのポイント応援や、ブックマーク登録をぜひよろしくお願いいたします!


【主題歌のお知らせ!!】

作者が作詞しAI(Suno)と制作した主題歌

『紡ぐ意思〜フーデリオン〜』YouTube・noteで公開中!


アプリから閲覧している方はお手数ですが

YouTube・noteから「なおパパ」で検索をお願いします!!


▼▼▼このアイコンが目印▼▼▼

挿絵(By みてみん)


サイトから閲覧している方は

▼▼もっと下に楽曲・noteリンクがあるよ▼▼

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