忘却と崩壊の狭間
あれから考えても
答えがどうにもならないことを
考えまいと作業に没頭している。
なにせゲーム内のどんな行動にも
テキストありきだし、
それが無いと始まらない。
仕様が固まりきっていない部分の
職業やそのパラメータも
最初は自分だけで考えなくては
いけないと思考が凝り固まっていたが、
マスターデータやアトランダムにする
閾値などは素直にプログラミング
の出来る波瑚に任せることにした。
本来であれば半ばプロデューサー
のような立ち位置である
自分がやるべきかもしれないが、
天才とはいえ娘に頼りきるみたいで
躊躇しそうになったが
やはり特化した才能を持つ者に
凡人が遠慮や行き過ぎた配慮はすべきではないと悟った。
シナリオに関しては人の思いつかない
発想や自分らしさが出せる自信があったが、数値や細かい調整は人並みに出来ると思うが、実際のゲーム画面やプレイしてみないといまいち想定仕切れない、いわばユーザー視点のクオリティになりかねないため、もしくはそれすらに届かない崩壊したゲームバランスに成りかねないので断念した。
妻や娘の存在は良くも悪くも特別なのだ。今回のゲーム製作で身に沁みた所詮自分は天才には叶わない凡人なのだと分からせられた、妻の時から感じていた、劣等感から続く良くない感情を半分の年数も生きていない娘に対して悔しさと羨ましいという感情すら抱いていた。
凄すぎて感情を麻痺させ、悔しいとすら惨めだとすら考えないようにしていた感情が妻が残した高すぎる壁のような謎を封じた代償に今漏れ出そうとしていた。
正気を失うな。幹人。お前は父親だ。しっかりしなければいけない。娘が妻のために自分の未来のために頑張っているのにお前が感情に自分の弱さに情けなさに飲み込まれてどうする?自分に言い聞かそうとしても自分の理性が脆さが音を立てて崩れそうになる。
このままじゃいけない。
こういう時は素直に気持ちを吐き出さなくてはならない。
作業を抜ける旨をチャットに打ち込み。
すぐさま兄貴に電話した。
幹人「もしもし、兄貴か。悪いんだけど飲みに行かないか?話したいことというか感情の整理がしたくて」
兄貴「おっ!珍しいな!たまには飲みに行くか!」
幹人「ありがとう、兄貴。」
兄貴との温度差に少し恥ずかしくなりつつも感謝の気持ちで早くも気が楽になった気がした。
行きつけというにはそこまで通ってないが、行きつけの居酒屋についた。ここは個室があって良い。人前で大声で話せないような話も出来る。
予約名を告げるとどうやら先に
兄貴がいるみたいだ。
部屋の前に行くと察したのか
扉が開いて兄貴が顔を出した。
兄貴「よう!まあとりあえず上がりな。」
頷いてから靴を脱いで、座敷に上がる。
畳っぽい座る部分はあるが、
机の下には穴が開いていて
そこに足を下ろせるタイプだ。
正直に言うと胡座も正座も苦手だから
このタイプは助かる。
お互い席に着いて注文を済ませた。
料理とお酒が届いて、食べ始める。
二人「いただきます。」
とりあえず唐揚げを食べた。
野菜から食べた方が良いのは知っているが今は健康より心の健康が大事だ。
料理を食べ、酒を飲み干すと不思議と解放的な気分になる実は兄貴はあんまり酔えないタイプで酒を飲んでも眠くなるだけのタイプだ。ただどれだけ飲んでも理性的で記憶がはっきりと残るから信頼して今日はとことん甘えることにした。
幹人「兄貴!!俺は自分が情けないんだ!今までも愛莉に頼りきりだったけど今度は娘にまで頼るしかなくて自分の力不足を直視出来なくて不甲斐ない。」
兄貴「おう、そうか。でも頼るってことは自分が出来る範囲が理解出来ていて、他の人を信じられるって証じゃねぇか?何でもかんでも1人で出来る人なんていないし、他よりずば抜けた人を羨んでも比べても見劣りするのは当然だろう。」
幹人「確かにそうかもしれないけど俺は頑張りたいし、悔しいんだ。負けを認めてすぐ諦めてしまう自分自身の弱さが憎たらしくて忌々しい。」
兄貴「自分の限界を嘆くより、自分の出来ることを精一杯やって少しずつ限界を超えれば良い。少しずつ出来ることを増やせば良い。お前ならそれが出来るはずだって俺は信じてる。」
幹人「兄貴・・・」
それから何十分か経っただろうか。
幹人「兄貴!俺は俺は・・・」
そう言いながら幹人は眠りについた。
実は幹人はめちゃくちゃ酒に弱かった。
数杯飲んだだけでベロベロに
なるくらいには弱かった。
きっと今日か明日には色々なモノと一緒に辛い気持ちを吐き出してスッキリするだろう。
そんなことを弟を介抱しながら兄貴は思い、幹人を家まで届けるのであった。




