疑念
莉瑚「あー!もしかしてパパさん?」
そう声を上げて自由に
モニターの中を動き回っている莉瑚
そんな状況に不満を漏らした者がいた。
波瑚「せっかく会えたのになんでパパばっかり見てるの?莉瑚こっち見て!」
その言葉に反応したのかようやく
波瑚に視線を向けた。
莉瑚「ん?あっ波瑚ちーじゃん!やっほー!」
波瑚「やっほーじゃないよ。ワタシのことはお姉ちゃんって呼ぶはずでしょ?いったいどこでそんなの覚えたの?」
莉瑚「フフフっ秘密だよー♪」
怒りを通り越して呆れ始めた波瑚。
すると今度は莉愛がアピールを始めた。
莉愛「莉瑚ちゃん?私は?私のことは分かる?」
莉瑚「んー莉愛おばさん?」
ブチっと音が聞こえた気がした。
顔を少し下げ顔を真っ赤にした
莉愛がプルプルと震えている。
まっマズイ火山が噴火する。
莉愛「テメェぇぇぇええ!!!!ふざけんなよ?わたしは!あんたのママでしょうが!!!!」
頑張って莉瑚のボディを作った
莉愛が不憫すぎる。
さすがに空気を読んだのか
莉愛に莉瑚が話しかける。
莉瑚「ごめんね。莉愛ちゃん?ママは愛莉ママだから莉愛ちゃんのことなんて呼べばいいか分からなくてー。」
莉愛「私の方こそいきなり怒ってごめんね。ただ急に殴られてびっくりしたというか・・・」
まだ不満そうだが冷静になった
莉愛を見てなんだか莉愛と波瑚が
最初に会った時みたいで
微笑ましくなって思わず笑顔に
なっていたところで莉愛が
こちらを向いた。
莉愛「あんたなんで笑ってんのよ?自分がパパって呼ばれて良い気になってんじゃ無いわよ!」
幹人「ち、違うよ!ただなんだか本当に家族が増えた感じがして嬉しくって思わず笑ってしまったんだ。」
すると今度はスマホから
笑い声が聞こえた。
兄貴「ハハハハッwwwお前らコントやってんのかよw 莉瑚も大物みてぇだし、楽しくなりそうだな!!」
場が少し和んだ気がした。
今度はスマホに注目した
莉瑚が質問してきた。
莉瑚「おじさん誰?」
幹人「あー俺のお兄さんだよ。みんな兄貴って呼んでるよ!」
兄貴「おう!よろしくな!」
莉瑚「よろしく!兄貴さん♪」
一旦、仕切り直すように
咳払いしながら波瑚が話を始めた。
波瑚「それじゃあ。自己紹介というか顔合わせたから莉瑚について説明するね。」
波瑚「まあとりあえずいろいろ説明したいけど簡潔に言うね。」
波瑚「莉瑚をインストールすればPCとスマホやタブレット何でも使える。」
波瑚「作業に集中しつつ、メモ代わりに喋れば情報共有可能でグループチャットに反映される。」
波瑚「あとはゲームに組み込むだけでOK」
波瑚「通常利用は私達だけで一般公開というかサービス提供はしない。」
幹人「まあ妥当だな。そもそもが波瑚のためのモノだしな。」
莉愛「了解よ。正直言うともったいない気もするけど、ゲームには組み込む訳だから他の人にも見せる機会はあるものね。」
兄貴「俺の仕事が捗るというかある意味では俺の相棒になりそうだぜ。」
莉瑚「みんな改めてよろしくね♪」
そう言いながらウインクした。
最初はどうなるかと思ったが、
仲良くやっていけそうで安心した。
しかし、改めてリボンを見ると
あることに気づいてしまった。
リボンにあの紋章が描かれていた。
これは偶然な訳が無い。
気づいた時には口が滑りだしていた。
幹人「なあ。莉瑚?そのリボンの紋章はなんだ?」
莉瑚「え?ああこれねー、詳しくは知らないんだけど、ママに何かあった時はパパさんと波瑚ちーをよろしくねって言われてたんだよね。」
その瞬間、空気が凍りついた。
全員がビクッと固まった。
何かあった時はよろしくね?聞いた瞬間思考がフル回転し、ショートしそうになりながら考えた。愛莉は自分に何か起きることを予見していた?いや、ただ単に念のために言っただけかもしれない。でも紋章について触れた際にそのことを話したということは何か大事な鍵になるのではないか?そんなことを数秒考えたが出てきた言葉は別の言葉だった。
幹人「他に何かヒントみたいな。何か大事な情報は無いか?」
莉瑚「んーん?ただ2人のことをお願いね、としか言われてないよー。」
幹人「何でも良いんだ!何か他愛ないことでもいい!!」
莉瑚「ママがママであることと今ここにいる人のことしか聞いてないよ?」
やるせない気持ちと
隠しきれない苛立ちに支配されていた。
幹人「そうか。わかった。すまない。みんな今日は解散しよう。」
莉愛「ええ。」波瑚「うん。」兄貴「ああ。」
思考の整理も気持ちの整理も
なにもかもが出来ていなかった。
気が狂いそうだった。
そんな自分を誰にも
見られたくなかった。
1人で部屋へと戻った。
ベッドに寝転がり、今日はもう寝よう。
そう思うのに寝付けずあの紋章について妻の死について考えてしまっていた。
一人、暗い闇を見つめていた。
永遠のような長い夜が続いた。




