第8話 はぐれそうな市場
わいわい、ガヤガヤ…!
─ここはグランゼで一番賑わっているという、タンタ市場。
「うわっ…すごい人だ…」
昨日見た、街道よりも多くの人が歩いていて、はぐれそうだ。
あ、あれだ、あの…エジプトの市場。ええと…
「ハン・ハリーリみたいだな、ここ。レストランみたいなのや、水タバコ屋や、香辛料とか、あと…なんだあれ?絹織物…?」
來瑠「…ピラミッドで有名な国…エジプトの市場だっけ?たしかに、ちょっと似てるかも。スリとか、ぼったくりとか、結構見えないところで犯罪があったりするし…」
こわッ。
フツーにぼったくりとかあるんだ?
???「ヘイ!そこのお兄さん!ちょっと見ていかないかい?」
おっさんに手を引っ張られる。
來瑠「ちょっ!?ケンヤ、掴んで!」
差し出されるクルの手。
俺は咄嗟に掴んだ。
來瑠「人混み、抜けるよ!」
「わ、わかった」
來瑠「私が引っ張るからついてきて。魔導具屋さんはこっち」
クルの思うままに手を引っ張られ、人混みをかき分けて。
露天商「安いよ安いよー!今だけ貴重なエリコンが2000セリング!」
女露天商「香辛料なんかよりこっちこっち!バシャミが一匹100セリング!ほら、安いでしょ!」
強い香り。
どうやら、エリコンっていうのはウコンみたいな香辛料みたいだ。
バシャミは…サンマみたいな大きさの魚だ。
なるほどね。建物以外にも、露天商もあるわけか。意外にいいもの売ってたりして。 …いや、ぼったくられそう。
─40分くらい経ち、人混みを抜けて。
來瑠「やっと抜けた〜!今日はまだ短くてよかった〜!」
「これで短い方なのか!?」
來瑠「うん」
は、はあぁぁ?
これ、す、すごいなぁ…。
來瑠「…ほら、ここがカリナさんが言ってた魔道具屋さん『ペアマジト』。私も店主さんに剣の修理依頼をしてたから。ちょっと様子を見れるし、よかった〜」
「折ったな?」
來瑠「仕方ないでしょ。消耗品なんだから」
立派なお店だ。
店の中から時々
カンッ…!カンッ…!
って音がするから、多分工房と一緒なんだろうな。
ギィィィィ!
カランカラン…。
ドアにつけた呼び鈴がなったらしい。
店のカウンターからひょっこりとヒゲモジャのおっさんが出てきた。
來瑠「あの人が店主のタージモさん。ドワーフだよ」(小声)
この人が店主さんか。
タージモ「いらっしゃい。クル。今日は剣を…。…と、そっちのぼうやは新しいお客さんか?」
來瑠「こんにちは、タージモさん。そうなんです。彼は私の友人で、新しい冒険者として魔導具を買いに」
「初めまして。ケンヤ=ホーリです。ギルドの受付、カリナさんに紹介されてここに足を運びました。それにしても…立派なお店ですね」
タージモ「そうかい。嬉しいなぁ。聞いているかもしれないが、俺はタージモ=ペアマジト。あんたのことは、ケンヤ、と呼んでもいいか?」
くしゃっとした笑顔。
ほっこりする。
「構いませんよ。ペアマジトさん」
タージモ「いや、タージモでいい。あんたは、どんな魔導具が欲しいんだい?それと…あんたたちは手を堅く繋ぐくらい、仲がいいんだな」
俺&來瑠「「えっ」」
タージモ「店に入ってきた時からずっと、恋人繋ぎをしているじゃないか」
─気づかなかった。
どうも俺はさっきの市場から、ずっと手を繋いだままだったらしい。
バッ…!!!!
同時に手を離した。
來瑠「い、いや…これはその…あは。違うというか、ほら!ケ、ケンヤが市場ではぐれそうだったので、引っ張ったまんまだったんですっ!でしょ?!ね!?ケンヤ!!」
「そうそう!そうですよっ!お、俺も気づかなかったし…別に意識して繋ごうとか…!むしろ俺は女の子がちょっと苦手っていうか…!」
クルの顔は真っ赤。おそらく俺も真っ赤。
タージモさんはむしろ面白がってそうな顔。
タージモ「…ふーむ。一応聞くが…婚約しているわけではないよな?」
俺&來瑠「「なっ…当たり前じゃないですかッ!!!!」」
タージモ「息ぴったりだな」
俺&來瑠「「だからッ…!クル(ケンヤ)はただのとm…」」
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ん?待て、俺とクルって友達か?
今までまともに話したことないし…。
來瑠(…友達…だよねっ!?一応)(目配せ)
俺 (…そういうことにしとくか…?)(目配せ)
(この間、約0.4秒)
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俺&來瑠「「だちですッ!」」
タージモ「なるほどな。そこまでいうなら、そういうことにしとくか」
ちょっ…絶対誤解、解けてない!!!
聞いてください!




