第5話 正体バレを防げ!呼び方編!
─翌日。
学校を終えた俺たちは、当たり前のように麻湯さん家へ向かっていた。
來瑠「今日はさ、ギルドと…市場へ行く予定だったよね?」
麻湯さんはタオルを首にかけて、手をパタパタ。
梅雨が明けて、季節は夏。暑い。
「そーだな。この格好だと汗臭いし目立つから、ちょっと麻湯さん家で革の服に着替えるよ。向こうの世界は比較的涼しかったし」
馬車の中は暑かったが。
來瑠「うんうん。そうしなよー。私は向こうの世界で着替えるから、転移したらすぐ部屋を出てね」
「はいはい」
來瑠「はいは一回!」
「…わかったよ。はい」
〜〜〜〜〜〜〜〜
來瑠「鳳梨くーん!着替えた〜?!」
「着替えたぞ」
ここは麻湯さん家の脱衣所。
あくまで仮の家なので、使ってないまま。
でも掃除だけはしてあるらしい。
前にも言ったけど、正直引っ越したいくらい綺麗だ。
來瑠「早く行こ。ギルドしまっちゃう」
「ええ〜!?本気で言ってる?急ご!」
ドタバタドタバタ…!
ギィィィィ!
パタン!
─お屋敷。
「麻湯さん、そういえばギルドって歩いて向かうんだよな?どのぐらい時間かかるんだ?あと…麻湯さんってそういう冒険者登録?みたいなのしてるのか?」
來瑠「クル」
「え?」
來瑠「クルって呼んで。私のこと」
いやいやいや!なんでそう大して仲良くもない女子を下の名前で呼ばなきゃいけないんだよ。恥ずかしいじゃん。
「な、なんでだよ…」
麻湯さんは心外そうだ。
來瑠「ええ?なんでうろたえてるの?私はただ、アサユ家のお嬢様っていう身分が街の人にバレたくないから頼んでるだけだよ〜?ふふ」
來瑠「クルって名前、意外にいそうなもんでしょ?あ、もしかして鳳梨くん…」
げっ。
來瑠「あんまり女子を下の名前で呼びたくない感じ〜?」
はい。その通りです。図星です。
來瑠「あっ、顔赤くなってる〜。ははっ。そういうとこ、面白いよね〜」
「うるさいなぁ」
來瑠「…とにかく私は人前でアサユ様とか言われたらちょー困っちゃうわけ。鳳梨くん、お願い!私は、恥ずかしいのを我慢して君のことをケンヤって呼ぶからさ!ね?これでお互い様でしょ!ほ〜ら!」
ぐぬぬ…。背に腹は変えられないか…。
「…わかったよ、麻湯さ…クルさん」
來瑠「かったいなぁ…いいよ、別にさん付けしなくても」
「俺が慣れないんだよ」
來瑠「慣れてよ」
「…ぐっ…無理」
來瑠「無理じゃない」
「クルさん」
來瑠「クル」
「クルさん!」
來瑠「クル!」
わかったよ!言えばいいんだろ!!
「クル、早く行くぞ」
來瑠「え、う、うん。…鳳梨く…ケンヤ」
なんで麻湯さ…クルの方が顔真っ赤なってんだよ。
來瑠「なんか、ごめんね。鳳梨く…ケンヤ。私も普通に恥ずかったし」
「いいよ、麻湯さ…クル。早く行こうぜ」
來瑠「そうだね!あ、さっきの質問の答えだけど、歩いてここから20分!私も一応、『冒険者』の職業を持ってるよ!じゃあギルドへレッツゴー!」
お互いぎこちなくなった雰囲気。それは…流れないまま。
異世界ファンタジーって…
…こんなんだったっけ?
─街道。
來瑠「ごめん、もう一回クルって言ってくれない?なんか…ほら、慣れといた方がいいじゃん?」
「わかった。…………クル」
來瑠「ひぅ…」
「…クル」
來瑠「ひゃっ!鳳梨く…ケンヤ、やめてぇ…」
「うぐ…」
來瑠「あ。ケンヤが照れた…!…ケンヤ」
「…クル」
來瑠「ってだからぁ…!やめ…!ちょっ強要したの謝るから…。いじったの謝るからぁ…!名前攻めはやめてぇ…!恥ずかしい…!」
「…ごめん。でもさ、ちょっと面白いから続けていい?…クル」
來瑠「うわぁ…女子が苦手とか絶対ウソだよぅこの人ぉ…」
許せ、麻湯さ…クル。俺も女子からケンヤと呼ばれて恥ずいんだ。




