第3話 異世界・ダクメアリア
ありえない。
「あの、これ、どう考えても一軒家に入る部屋のサイズじゃないよな!?」
來瑠「そうだよ。だってこの扉は…異空扉なんだから。君はもう、私たちの世界に足を踏み入れてしまったのだよ!ふははは!」
なんか1人で盛り上がってるよ麻湯さん。
「で、ここは麻湯さんの部屋ってこと?…まるでヴェルサイユ宮殿じゃん。異世界ってこーいうの貴族とか王族とかが住んでるイメージあるんだけど。この世界はそーいうわけじゃないってことか?」
來瑠「ふふっ…まぁとりあえず、入ってきて。この世界…気になるんでしょ?」
「お、おう…お邪魔します…」
広い。
マジで広い。
尋ねたいことはいっぱいあるが、まずは外が気になる。
ガラッ…!と窓を…開かない!
はめ殺しのガラス窓かよ。
仕方ない…。
窓から直接見よう… 。
「おおおおぉぉ!!」
やべ、大声出た。
「これが…異世界…!!」
色とりどりの屋根が続く、巨大な城塞都市。
この建物は高台にあるらしく、城壁の向こうの山や川が見えた。
來瑠「綺麗でしょ?鳳梨くん。この街は政令都市『グランゼ』。王都から一番近くの大都市なんだ。このお屋敷は街の中心にあるよ」
グランゼ…?って俺の妄想地図のエリリュード王国で、王都の2番目に栄えている城塞都市じゃないか!
そのままである。つまりここはエリリュード王国…?
まさか本当に異世界に来てしまうとは…!
「で、なんでこのお屋敷は街の中心にあるんだ…?」
コンコン…。
來瑠「……」
來瑠「─入りなさい」
ガチャ!ギィィィィ…。
???「おかえりなさいませ、クルお嬢様。午後の公務の支度ができましたが…おや?そちらの正装をした貴公子は一体どこのお方で?」
執事?と思いたくなる黒い燕尾服の長身のおじいちゃんだ。
來瑠「ランファル。よく聞きなさい。この方はケンヤ。友人よ。私が…向こうの世界から招待したの。くれぐれも、失礼のないように」
麻湯さん…?!いつもの口調はどこ言った?変わりすぎだろ。
とりあえず執事さんに挨拶しとくか。
「謙也です。ちなみに苗字は鳳梨です」
ランファル「なるほど、あなたはケンヤ殿と仰るのですね。私はランファル=ド=フォンデ。このアサユ家の使用人筆頭で、そちらのクルお嬢様の専属執事を務める者です」
長い名前だなぁ。
というか、使用人?
「麻湯さんって…もしかして貴族?」
來瑠「ふふっ。今更何を言っているの?私は1000年前の勇者・カイト=アサユの血を引く一族として、王国一の名門アサユ家の次女、クル=アサユ!あなたは貴族である私に、特別待遇で招待されたの!誇りに思いなさい」
おい待て、マジで貴族?
クラスメイトの女子は異世界の住人で…その身分は王国一の貴族の娘??!!
情報量バグりすぎ!!!
しかも勇者の家系とか、属性強いなぁ!?
「は、はぁ…ありがとうございます」
來瑠「いや別にあなたまで丁寧語にならなくてもいいのよ?」
ランファル「まぁまぁ、私が言うのもなんですが…。ケンヤ殿は向こうの世界…ニッポンでのご学友なのでありましょう?今日の今日まで、お嬢様の本当の姿を存じ上げていられなかったでしょうし、むしろ今まで通りの接し方の方が、お嬢様も歯痒くないでしょう」
まあ、いっか。知らなかったし。
ランファル「ところでお嬢様。公務の準備はよろしいでしょうか?見たところまだニッポンの制服ですね。もうすぐ、馬車が出発しますよ。お早くに」
ランファル「それにケンヤ殿は…この世界にいらっしゃってからまだすぐでしょう?お嬢様さえよろしければ、巡回するルートに切り替えて、グランゼの街を存分に見てもらった方g…」
來瑠「手配しなさい」
即答かよ。
ランファル「承知いたしました。ではまた後ほど。失礼します」
ギィィィィ…ガチャ…!
ドアが閉まる。
來瑠「…はぁ…あのクソジジイ」
…麻湯さん?
來瑠「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「うおぅ!?びっくりした!!
來瑠「…やだ!もうこの口調やだぁ!」
口調、すでに崩れてますよ。
來瑠「…ランファルはブツブツガミガミ口うるさいし、お父様もお母様もこの口調強いてくるからほんと疲れるんだけど?!どうしてくれるの鳳梨くん!」
いや知らんがな。
「俺に文句言わないでくれ。疲れる」
來瑠「ひど〜い!せっかくこの世界に連れてきてあげたのに!」
來瑠「ちょっとは分かってよねこの大変さ!他の人に初めて話したよこんなこと!」
「分かるかよ!?そんな悩み!!誰が異世界貴族の相談に乗ったことがあると思うか?!」
全く…。
というか、この世界ではクルお嬢様と言われているみたいだ。
どうやら、学校での生活態度が素すらしい。
「初めて話したって、他のやつは誰も知らないのか?ほら、天川さんとか、条宮さんとか。いつもつるんでる人たち」
來瑠「知らないよ。私が『れなっち』(天川)や『かな子』(条宮)にそんなこと言うわけないじゃん。それにあの子たちは、私が充実したニッポンの高校生活を送るための存在だから」
來瑠「…こっちの事情には、巻き込みたくないっていうか」
現在進行形で、俺、巻き込まれてるんだよね〜。
「まぁいいか…。…あと麻湯さん、俺を連れてきたからには…」
「そろそろこの街の案内をしてくれない?」
來瑠「オッケー!じゃあ、これに着替えて!これは実質異世界コスチュームと言っても過言じゃないから〜」
渡されたのは、革でできた上質な上下の服。
…高そう。
來瑠「じゃあ、私、着替えるから…部屋を出ててね」
來瑠「…くれぐれも覗かないでね?」
「覗かんわ!」
──俺の“妄想だったはずの地図”は、どうやら現実らしい。
想像もできない世界が、きっと待ってるだろう!!!
とりあえずは死なないようにしたいなぁ。




