繋がる断片
ベルノア。
夜。
冒険者ギルド。
使者は魔封じの枷をつけられ、奥の部屋へ通される。
レオ、ルカ、ヴァル、セリス、リュシアン。
そしてベルノア組の四人も同席した。
静かな空間。
外ではまだ不安のざわめきが続いている。
ルカが口を開く。
「全部話してもらおうか」
使者は目を閉じる。
そして、ゆっくり語り始めた。
⸻
ルーコトス。
重厚な石造りの屋敷。
若い領主が、机を叩きつける。
「どうしてだ!」
書類が床に散らばる。
彼の目は赤く、焦りに満ちていた。
「父上なら簡単にできたことだろう!」
誰も答えない。
侍従はただ頭を下げる。
先代は天才だった。
何もせずとも成果を出し、国からも一目置かれた存在。
だが息子は違った。
努力しても届かない。
理解してもらえない。
何より——
父は、彼の苦しみを本気で理解していなかった。
「短期間で成果を出せばいいだけだ」
そう言われた日から、彼は壊れ始めた。
その時だった。
黒衣の男が現れたのは。
「力をお貸ししましょう」
甘い声。
「ベルノアを弱らせれば、あなたの名は国中に知れ渡る」
「……どうやって」
「三十年前、失敗した術式があります」
若い領主の目が揺れる。
「失敗?」
「制御できなかっただけです」
低く笑う声。
「今回は違う」
その時の彼は、疑う余裕もなかった。
ただ認められたかった。
ただ、証明したかった。
⸻
部屋の空気は重い。
レオンが拳を握る。
「……愚かだ」
使者は静かに言う。
「だが、彼は悪人ではない」
「だから止めに来たのか」
「はい」
ヴァルが短く息を吐く。
「問題はそこじゃない」
全員の視線が集まる。
セリスが言う。
「三十年前の術式です」
ルカも頷く。
「俺たちが見た記録、途中が抜けていた」
セリスの頭の中で、点が繋がる。
「封印、侵食、魔力変質……」
断片だった資料が、一つの形になる。
彼女の目が鋭くなる。
「これは領地争いではありません」
リュシアンが問う。
「ではどう考える」
セリスは静かに言う。
「封印の破壊が目的です」
ルカが低く続ける。
「ベルノアは、その“鍵”の土地だ」
使者が息をのむ。
「……そこまで」
セリスは資料の断片を思い出していた。
「三十年前、ベルノアを狙った国」
沈黙。
そして彼女は言った。
「その国は、今も存在しています」
ヴァルが聞く。
「どこだ」
セリスは答える。
「封印対象と同系統の魔力研究を続けている国家」
ルカが頷く。
「……ああ。間違いない」
その名を口にする前に、
外で鐘が鳴った。
異常警報。
次の異変が、すぐそこまで迫っていた。
ギルドの鐘が、夜のベルノアに響き渡る。
重く、何度も。
外のざわめきが一気に大きくなった。
ルカが立ち上がる。
「……来たな」
リュシアンも頷く。
「封印の異常、というわけだな」
セリスは息を呑んだ。
「場所は……」
レオンが答える。
「地下だ。ベルノアの中央部」
ヴァルが眉間に皺を寄せ、短く言う。
「全員で行くぞ」
読んでいただきありがとうございました。
なろう異世界ファンタジーフェス!2026「夏休みチャレンジ★毎日投稿しよう!」の為、いつもとは予定を変更して、8/1〜8/5までの5日間は連続投稿いたしました。
クエストはここで一区切りですが、『蒼影の灯火』はまだ続きます。
次回からは、いつも通り毎週金曜日21時頃更新予定です。
よろしくお願いいたします。




