↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/48

歪められた森


森の空気はまだ張り詰めていた。


ざわざわと葉の擦れる音がやけに耳に残る。


倒れた変異個体の周囲を、誰もすぐには動こうとしなかった。


ルカが低く言う。


「……妙だな」


リュシアンも同意するように頷く。


「自然変異ではない。魔力の流れが歪みすぎている」


セリスが膝をつき、魔獣の体をじっくりと観察する。


装置を起動すると淡い光が走り、魔力の測定値が浮かび上がった。


「……これは」


レオンが眉を寄せる。


「何か分かったのか」


「体内に人工的な魔力の痕跡があります」


ミレイが目を見開く。

その拳は強く握られていた。


「人工……?」


「はい。外部から注入された可能性が高いです」


ガルドが顔をしかめる。


「つまり、誰かの仕業ってことか」


空気が一段と重くなる。


ヴァルはゆっくりと森を見渡した。


なんの変哲もない緑の森だったが、直感が告げた。


「……この辺り、探るぞ」


シアが静かに頷いた。


「同感だ」


レオンも剣を握り直す。


「手分けは危険だ。全員で動く」


ルカが肩をすくめる。


「ようやく意見が一致したな」


⸻


少し進んだ先の森の奥。


木々の間に、不自然な空間があった。


「……結界か?」


リュシアンがぼそりとこぼす。


目に見えないが、確かに魔力の膜を感じる。


セリスが装置を操作する。


「擬装はされていますが、簡易的です。これなら突破できます」


ミレイが眉間に皺を寄せ、警戒する。


「罠の可能性もあるのでは?」


ヴァルがサッと前に出る。


「なら、俺が行く」


リュシアンが即座に制止する。


「単独行動は——」


「盾、頼む」


そう告げたヴァルの黒髪の影から、ピアスがキラリと顔を出す。


リュシアンは片方の口角を綺麗にあげ、そして頷いた。


「分かった」


その信頼に、レオンが目を細める。


二人の呼吸は、戦闘後でも崩れていない。


リュシアンが結界の前に立つ。


盾に魔力を集中させた。


「今だ」


ヴァルが地面を強く踏み込む。


双剣が魔力の膜を切り裂く。


結界が砕ける。


空気がわずかに歪み、生暖かい風が吹いた。


その奥にあったのは——


小さな祭壇だった。


全員が息を呑む。


石で作られた簡素な台。


だが、その上に置かれているものが異様だった。


黒く濁った精霊石。

そして刻まれた紋様。


ミレイの顔から見る見るうちに赤が消えていく。


「……こんなもの、こんなものっ!ベルノアには存在しません!!」


右手で左の腕を掴む、その声は震えていた。


セリスが近づき、慎重に観察する。


「精霊石を汚染し、周囲の魔力を歪める装置のようです」


ガルドが眉をひそめ、低く言う。


「誰が、こんなことを……」


レオンがぎりぎりと拳を握る。


「目的があるはずだ」


セリスは少し考え、答えた。


「大規模な魔力撹乱。森、農地、流通……すべてに影響を与える……?」


ルカが吐き捨てる。


「町を内側から壊すつもりか」


シアが周囲を警戒する。


「まだ近くにいる可能性がある」


ヴァルは祭壇を睨む。


胸の奥に、嫌な予感が広がる。


ベルノアの異変は、偶然ではない。


誰かの意思だ。


その時。


リュシアンが静かに言った。


「証拠として持ち帰るべきだな」


ミレイが平静を装いつつ頷く。


「ええ。神殿にも報告が必要です」


レオンがルカを見る。


少しだけ迷い——


「……町へ戻ろう。合同で」


ルカがにやりと笑う。


「やっと言ったな」


レオが元気よく拳を上げる。


「よし!今日は大仕事した感じ!」


ガルドが笑う。


「さっきまで死にかけてたのに元気だな!」


森を抜ける帰り道。


気づけば、九人は一つの隊列になっていた。


だが——


ヴァルは最後尾で振り返る。


誰もいない。


それでも——


視線を感じた気がした。


森の奥の霧の向こう。


何かが、確かにこちらを見ていた。



読んでいただきありがとうございました。評価いただけると励みになります。

毎週金曜日21時頃更新予定です。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。