レオ番外編——ロックド・グルーヴ
更新日ではありませんが、今夜は七夕ということで、一つ恋にまつわる小話を書いてみました。
もしよろしければ、お付き合いくださいませ。
それは、今日みたいな暑い午後のことだった。
高く登った太陽が周りの木々と俺の影を足元に黒く落としていた。
冒険者という職業柄、一箇所に留まることは少ない。
それでも隙を見つけては彼女の待つ街へ足を運んでいた。
「待っていたけど、いつ帰るかも分からなくて……ずっと不安で寂しかった」
そう言って頬を濡らす彼女の涙を拭ったのは、俺ではなかった。
俺は踵を返した。
もうあの街へ戻る事はなかった。
太陽の光を反射して、キラキラと輝く彼女の癖っ毛を忘れたことはない。
もう二度と触れることができない微笑みも——。
「ねぇ!レオ?」
軽いノリのその声に現実に引き戻される。
「ごめんごめん!クロエ。で、なんだっけ?」
「だーかーら!今日は家に泊まってくでしょ?」
「勿論!屋台でなんかうまいもん買ってこーぜー」
広場では屋台がズラリと並び、あちこちから漂ってくる香ばしい香りに食欲がそそられる。
「あ!これ、クロエが好きなやつじゃん!買おう」
「え?でもレオ、それ匂いが苦手って言ってたじゃん!?」
「いーのいーの!おじさん、これ一つ」
出来立てのアップルパイを受け取り、ニカッと笑ってクロエへ手渡す。
クロエは髪の毛を耳にかけながら、アップルパイに顔を近づけて嬉しそうに笑っている。
こうしてこの街に滞在している間はクロエと楽しい日々を過ごした。
二ヶ月後——出発の朝。
「レオ、ありがとう!また寄ることがあったら遊ぼうよ」
「こちらこそありがとう!めっちゃ楽しかった!」
俺は満面の笑みで手を振り、パーティが待つ宿へと向かって走る。
顔に張り付いたままの笑顔が、俺の心をどんどん干からびさせていく。
この二ヶ月間彼女の好きな部分、尊敬できる部分もたくさん見つけた。
だからこそ俺は——
また何も始めなかった。
二ヶ月前まで肌を焼きつけていた陽射しはすっかり和らいで、秋風が頬を撫でる。
乾いた空気が、また、肌を引き攣らせた。
本編はいつも通り金曜日の21:00公開となっております。
もうしばらくお待ちくださいませ。
いつも読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。




