空いた席
森を出て町へ戻る頃には、日が高くなっていた。
ギラギラと照りつける日差しが5人を容赦なくドロドロと溶かしていくようだった。
帰りがけに討伐したのはコッカトリス。
鶏に似た姿をした魔獣で、この地域では食用にもなる種類だ。
「今日はあれ、唐揚げになるな」
レオがにやりと笑う。
だがヴァルは短く言った。
「悪い。昼はパス」
足を止めず、そのまま町の方へ向かう。
「は?」
レオが濃いグレーの瞳を丸くする。
「なんでだよ。お前いつも一緒に食うだろ」
「気分じゃない」
振り返らずにそう言葉を置いていった。
その背中が、少しだけ硬い。
ルカは何も言わず見送った。
リュシアンは一瞬だけ視線を向けるが、追わない。
そしてセリスにチラリと視線をやる。
セリスは、その背中を見つめたまま、ぎこちない手つきで水筒の水を飲んだ。
⸻
宿に戻ると、台所はすでに賑やかだった。
油の弾ける音が心が踊る。
食堂にを満たす香ばしい香りに、喉がなった。
やがて運ばれてきた皿には、黄金色に揚がったコッカトリスの唐揚げ。
衣は軽く、湯気をまとっている。
横には薄く切られた果実。
「これがレモーネだ」
ザンブルが誇らしげに言う。
「最近入ってきた果実でな。絞るとうまいぞ」
レオは豪快にかじる。
衣がザクリッと音を立てる。
「う〜まっ!なにこれ!」
レモーネを絞ると、爽やかな香りが立ちのぼる。
酸味が油を引き締め、肉の旨味を一層引き立てる。
ルカも頷いた。
「悪くないな」
リュシアンは静かに一口。
「……悪くない」
短い評価だが説得力がある。
セリスも口に運ぶ。
温かい。
衣の食感も伝わる。
だが——
(……味が、わからない)
酸味も、旨味も。
頭では理解しているのに、舌に届かない。
胸の奥に沈んだ重みが五感を鈍らせる。
「ヴァル、ほんとに来ないのか……?」
レオが唐揚げを前に残念そうにぼそりと言う。
誰も答えない。
セリスは、味のしない唐揚げを静かに飲み込んだ。
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