15 誘拐
いないないないいない…
どこにもいないっ…!!!!
私は周辺を探し回った。
「はぁはぁっはぁっ…。」
なんであいつのためにこんなっ…。
私はなんでこんな一生懸命になってるんだ…。
≪ここを探しても無駄じゃ。気配が消えたんじゃからのう。≫
「くっ…一体だれが…、ここの学園の結界は完ぺきだ。そんな簡単に連れ出すのは難しいぞ…!」
≪そんなのわからんぜよ。完璧なものなどこの世にはないからのう。≫
額には汗をかきながら、周辺を探し回っていると「第3試合はじめ___」といった威勢のいい声が聞こえ始めた。
「ケイトや理事長はこんなときに何をやっているんだ…!」
試合に夢中でデオラデの気配が消えたことに気づかないのだろうか…?
≪ふふふ。それはなかろう。おっと、もしかしたら意図して消えたのかもしれぬなぁ。≫
「…っ!」
-------------------------------------------------
「こ、ここは…ここはどこ…?」
目覚めたら、暗いどこかにいた。
暗くて周りが見えなくて、怖かった。湿っぽくて、辺りには何もない。
ただただ暗い空間だった。
「やぁ、やっと目が覚めたかい。」
「っうわっ!」
さっきまで気配すらなかったのに、目の前にあいつが現れた。
この暗闇、そして彼が羽織る黒のマント。不気味さが増した。
「僕はやっぱり君のことを諦めきれないみたいだ。どうしても君の魔法が欲しい。
君が欲しい。」
彼は静かに囁く。
「契約をかわそう。もし、僕に君が宿している青い炎をくれたら…君の大事な大事な弟を甦らしてあげよう。くくくっ」
「…!そ、そんなこと…」
「できるさ。僕は君の弟の魂はもっているからね。身体がもう燃えちゃったけど、外見なんていくらでも作り直せるさ。」
「…っ!つくり…つくりなおせる…?」
僕がそう前のめりに尋ねたその時だった___
「はぁ~、ほんとうちの生徒を勝手に連れ出すの辞めて欲しいんですけど?」
さらっと揺らる金髪の髪、長身の白衣姿____
「けっケイトせんせい…!」
そこに現れたのは、いつも教室の檀上で話すケイト先生の姿だった。
「はははっ。ここまで追って来れるようになったんだね。すごいや。でも僕がこの実習試験合宿の結界を破ってしまうとは思わなかっただろうね。というか、見破ることが出来なかったようだね。ふふふ、まぁ破れてしまうような結界を作る方が悪いんだけどね。」
彼はケラケラと笑いながらそう言った。
「うちの大事な生徒に手を出すとはいい度胸をしているね、相変わらず。
デオラデくんおいで。」
ケイト先生はそう言うなり、僕の腕を強く引っ張った。
「だめだよ。もう僕のものになる予定なんだ。くくくっ。
いま契りをかわそうとしていたところなのさ。」
ケイト先生に←腕を掴まれ、もう片方の手をあいつにぐっと掴まれた。
お互いが強く掴むから、痛みを感じた。
「残念だったが、デオラデ君には随分と古い魔法がかけられている。お前の望み通りにはいかないぞ。」
「ほう。」
彼は一瞬耳がピクっとした。
「ぁっ…。」
ケイト先生は俺の腕を抱き寄せ、後ろから捕らえるように抱き寄せた。
そして、この前のようにケイト先生は僕の口を無理やりあけ、人差し指で舌を強く押した。
「いっ…いたい…」
無理やり開けられた口のせいで、呼吸がしにくかった。
「ほら、これが呪印だ。」
「…ははははっ。ほんとうだ。ふむ。これは面白いな。
それは予想外だった。」
「デオラデ君を捕まえたところで、この魔法が解けないと完全体なる彼の力は手に入れられないよ。」
完全体…ケイト先生のその言葉に胸がどきっとした。
ケイト先生は僕のこと…どこまで知っているんだろう。
「ふふふっ…手に入りそうで手に入らない。そこがまた僕の気持ちをヒートアップさせるね。
呪印を解く準備はまだ整っていないが、じきに整うだろう…。
もしくは、当の本人が説いてしまうかもしれないけどね___」
「…っ。」
「今回は…仕方がないね。まだ準備が整っていなかったようだ。
ケイトに譲ろう____。
じゃあね_____会いたくなったらいつでも呼ぶんだよ___。
君の願い、必ずかなえてあげるからね____。」
「わぁっ…!!!!!」
彼がそう言った瞬間、さっきまでの暗い空間から元の体育館裏に戻っていた。
もう彼の姿はない____




