9 ルソーと呼ばれるその男は
「私のスキルも上がったもんだな。」
次々と倒していく怪物の残骸を見て、少し嬉し気に呟いた。
1人行動をしている私は次々と怪物を倒し、休むことなく戦い続けた。
森を駆け抜け、見つけ次第怪物をどんどん倒していく___
ゲームみたいでもはや楽しいと感じていた。
「今回も理事長とのミッションを守れそうだな…。」
本実習で私だけに与えられたミッション…それをクリアするには申し分ないくらいのペースで
怪物を倒してきている。
恐らく今は14時くらいだろうか…。
太陽の位置を見ながらそんなことを考えていた矢先______
「だれだっ!」
背後で気配を感じて、すぐに私は振り返った。
「…っ!」
振り返った先で見た姿があまりにも…あまりにも予想外で言葉が出なかった。
「な、なんでおまえがここに…。」
「くくくっ。お久しぶりですね。」
長身で黒いマントをかぶるこの男は、フードの奥で顔をちらっと見せて薄気味悪く笑った。
相変わらず酷いクマが印象的だった。
「ルアー…なんでおまえがここに…。」
私は背後にいたその男と距離を取りたくて____すっと後ろに下がった。
久しぶりに会うルアーは相変わらず年齢不詳な見た目をして佇んでいた。
全身を覆う大きなマントから少しだけらちらつく細い足が目立った。
「いやぁね、久しぶりに良い魔法がゲットできると聞いたので
潜入してみた次第なのさ。くくくっ」
「…。何を言っているんだ。そんな恰好でいたら他の生徒に…」
「そんな心配はご無用です。うまくすり抜けるのは得意ですので。」
彼は真顔で答えた。
私はくっと奥歯を嚙み締めた。
もう彼とは話したいとは思わなかったのだが、どうしても口から言葉が出てしまった。
それは昔、彼との記憶があるから____
「…世の中に良い魔法も悪い魔法もない。私にとっては魔法は全て悪だ。
魔法はこの世に災いをもたらす。」
「くくくっ。まだ言っているんですね。僕はあなたのその理論が好きですよ。えぇ、とっても。くくくっ。
」
「…おまえはなんで魔法に固執する。魔法集めなんて趣味が悪い。」
「趣味が悪い?いやいや、まさかハレベルさんに言われてしまうとは。
でも…僕とハレベルさんが組むことはとっても素敵なことだなって常々思うんですけどね。」
「なっ…。」
彼がそう言うと、私の気づけないスピードで目の前に立ちはだかった。
先ほどまで200メートルは取っていた距離から0距離に。
背が高く、私を覆いつくすような形で上から見下ろされている。
この暗い瞳とマントに包み込まれて闇に消えてしまいそうだった。
「理事長のペットなんかやめて、僕のもとに来なよ。
僕も女の子のお世話は得意だよ。」」
私の目の前には彼の顔があった。
顔と顔がくっつきそうなくらい顔を近づけられ、思わずあとずさりして地面に座りこんでしまった。
じっと見つめてきた彼の瞳は漆黒で奥に何も見えなかった。
思わず目を背け、下を向いた。
「やめろ…っ!!私は…私は…野望を叶えるんだ…。
そのために…、理事長は…私の願いの手助けをしてくれるって…!!」
「くくくくくっ。ははははっ。ハレベルさんは本当に面白いね。まだまだ君が可愛くて安心したよ。」
彼は純粋に面白いといった感じで笑うと、私の顎を彼の右手で強くつかんだ。
「いいかい?モノやヒト…何か1つを強く信仰してしまうのは危険だよ。
視野が狭くなってしまうからね…。」
「だまれ。私はそんなんじゃない…!」
私は不意にかすかな炎を彼のマントに付けた。
「おっと…!こわいこわい。それでは、もう無駄話はここまでだね。
いや、無駄な話は1つもなかったね。くくくっ。それではまた会おう。」
「おっ、おいまて…!!」
私がこいつを掴もうとした瞬間には姿形は消え去っていた。
「なんなんだあいつ…。なんであいつがここに…。」
私はもう怪物狩りに集中したいので、もうルアーのことなど考えたくなかった。
ただでさえ彼との時間はロスに感じた。
だが、どうしてもなんであいつがここにいたのか考えざるおえなくなった。
「っ…!ま、まさか…。」
私は…一度考え付いたことが確信に変わり、その途端ここにはいてもたってもいられなくなった。
「良い魔法がゲットできるので___」そう言った彼の言葉が頭の中でよぎった。
すぐさまこの場を移動し、目的地へ向かった。
それは、あいつらがいるところ_____
「…っデオラデっ…!」
-------------------------------------------------




