5 変身
「さぁさぁ、これで1ポイントゲットね!幸先は明るいわ!」
フィリアさんの切り替えは早く、「ここは離れて森の中を探検してみましょう!」と言った。
僕たちはその言葉に従い、森の中へ入り少し歩いた。
「あぁそうえいばデオラデ、俺は殺傷能力がないからな。やられたら、やられるぜ。」
不意に平然とした顔でラムソ君は呟いた。
「あらやだ、とはいえラムソ君はかなり武道が得意なのよ。怪物だって、素手で倒しちゃうんだから!」
「えぇ、それはすごい…!」
そういわれてみれば確かに、ラムソ君はとても良い体格をしているなと思った。
肩幅も広くて筋肉質で、たしかに武道が得意そう…。
「ん~。まぁ、小さい頃から叩き込まれたからなぁ。
でも俺の場合、医者の卵で治癒魔法を専門とするわけで…、お前らみたいに殺傷能力は基本的にはない。」
「まぁそうよね~。ラムソ君はケイト先生の後を継いでこの学園の先生にでもなるの?」
「はぁ!?それはない。ぜったい嫌だぜそんなの!」
「ふ~ん。てっきりケイト先生には従順だから、ラブな関係なのかと思っちゃった!」
そう言ってフィリアさんはてへっと舌を出して微笑んだ。
「ラブな関係ってどういう意味だよ…寒気がするぜ…!」
そんな他愛もない話を幾度か繰り返していた時に、すっと目の前に_____
「やぁ、順調か?」
「は、ハレベルさん!」
不意に現れたハレベルさんは軽そうな身体をふんわりと地面に降ろした。
「あら、戻ってくるのが早かったわね。」
「…おまえら…もう結構時間は立ってるぞ。」
「えへへへ~、たしかに少し薄暗くなってきたわね!随分と話し込んでいたみたいだわ。」
辺りを見回してみると、確かに薄暗くはなっていた。
森を探検したり、お話上手のフィリアさんと3人で会話をしていたら
時間があっという間に過ぎてしまっていた。
「今日はもういい…。暗くなる前にご飯と…寝るところを見つける。
みんなで1つの寝床を見つけよう。」
「あらあら、でもその前に______」
フィリアさんがそう呟くと、一瞬シーンとした空気が流れ
時が止まったようだった。
「あなたはどちら様?」
「えっ、ふぃ、フィリアさん!?」
「フィリア気が合うなぁ。俺も同じこと思っていたぜ。
姿形を変身できる…魔法の使い手ってとこなんだろうが、ハレベルの性格までは真似できなかったようだな!」
「___________くくくくくっ。残念だなぁ。」
ハレベルさんの姿をしていた何かは…不敵な笑いを浮かべるとにやにやと笑っていた。
そして、ハレベルさんの姿から恐らく元の姿へ…青黒い長い髪をした長身の男性に変わった。
全身を覆う黒いマントはまるでカラスみたいで不気味だったし、ちらちらと見える細すぎる腕が怖かった。
目の下のクマが目立ち、とても不健康そうな顔をしていた。
「ダブリン魔法学園のやつじゃねーな。」
僕も見たことないな…と思った。
こんな独特な雰囲気の人が教室にいたら、一発で覚えることが出来そうと思った。
「実に残念だな…。くくくっ。」
「あんたねぇ、私とハレベルちゃんとの絆を見誤らないでくれる!?
ハレベルちゃんが戻ってくるのはだいたい深夜!こんな早い時間に戻ってくるわけないし、私たちと一緒に寝床を探すなんてことは絶対しません!!」
たしかに、ハレベルさんがこんな早くに怪物狩りを切り上げて戻ってくるなんてことは
なさそうだなと思った。
真面目な彼女なら、早いうちにノルマを達成するために深夜まで戦うだろうなと思った。
でも、僕は全く気づけなかった。
姿形はハレベルさんそのものだし、声だって変わらなかった。
僕一人だったら確実に騙されていただろうと思うと、背筋が凍った。
「え~と、てゆうかなんの冗談?他校のやつがハレベルに変身して意味あんのか?」
ラムソ君は強い視線でストレートに言った。すると目の前の彼は、また「くくくっ」と不敵な笑みを浮かべた。
「はぁ~しょうがないから強行突破と行こうかな。」
彼はとても低い声でそう言い放った。




