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Miracle Dance Princess  作者: ロマンス王子
第三章 最終決戦編
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第二十八話 明かされる秘密

 何処にでもいるはずの女性、桜間(さくらま)依乃里(いのり)はひょんなことから戦士となった。依乃里ら戦士達は戦士としての資格を失ってしまう。それと同時に、四年前の戦士が続々と力を取り戻す。四年前の戦いで命を落としたエメラルディアも復活し、全員でスノアを倒す。そして戦士の資格は再び依乃里達に渡るが、鈴木(すずき)林檎(りんご)だけは黒崎(くろさき)真理紗(まりさ)にアメジストの指輪を渡すことを渋る。林檎は指輪と引き換えに真理紗の知っている全てを知ろうとするのだった。

「いいわ、私が四年前に知り得た全てを教えてあげる。」

「お願い、このまま誰も何も知らないのはまずいと思うから。」


 真理紗は皆に全てを話すことを決める。四年前のアメジストの戦士である林檎も改めて真理紗にお願いする。そしてその場にいる全員が真理紗を真剣に見つめていた。


「まず私は四年前、あなた達がママーハハを倒した時に居合わせていたわ。」

「うん……。」


 真理紗の言葉に依乃里は頷く。真理紗は嘗て美姫達がママーハハを倒した瞬間を目撃していた。


「最初は何が起きているのかわからなかった。しかし指輪が役目を終えて消滅した時、私は指輪に導かれ全てを知ったわ。」

「全てとは何だ?」


 真理紗は全てを知ったと言い、四年前のルビーの戦士である桃井(ももい)剣二(けんじ)は全てという言葉の真意を尋ねる。


「悪の組織の成り立ち、宝石の産まれた意味、四年前の戦士ですら知り得なかった全てよ。」


 真理紗は四年前の戦士も知り得ずに終わった力の根源について知ったと明かす。


「教えてもらえる?この力が何なのか。」

「ええ、ここまで来たのなら仕方がないわね。」


 林檎は真理紗に指輪の力について尋ねる。その場にいた全員が真理紗を見つめる中、真理紗は嫌々な様子でゆっくりと語り出す。


「むかーしむかし人間が文明を築き上げた頃、人間には領土や食料を我が物にしようという悪意が芽生え始めました。」

「ん、何で昔話口調?」


 四年前のアクアマリンの戦士、水原(みずはら)夜衣魚(よしみ)は突然の真理紗の昔話口調に首を傾げる。しかし他の皆も首を傾げているのを横目に真理紗は話を続ける。


「人間の悪意は日に日に大きくなりました。それは人間が生き抜く上で自然に芽生えた物。そしていつしか人間の悪意は世界を侵攻しようとする大いなる意思となりました。」

「世界を侵攻しようとする意思、それが(わたくし)達の敵……。」


 四年前のガーネットの戦士、三浦(みうら)竹月(たかつき)は真理紗の話から悪の組織の生い立ちを察する。


「そう、悪の組織は人間の悪意から生まれ人間の悪意を力の源とする。それは決して尽きることのない存在なのよ。」


 真理紗は端的に悪の組織がどんな存在かを表す。悪の組織は人間の悪意が存在するからこそ存在しているのだ。


「すると、ダークストーリーズを倒したにも関わらずダークサイレンスが現れたのも偶然ではなく必然。もしダークサイレンスを倒したとしても……。」

「そうよ、人間に悪意がある限り悪の組織は生まれ続ける。ダークサイレンスを倒してもまた新たな悪の組織が姿を現すのよ。」

「マジ⁉」


 リーナは悪の組織の誕生が循環していることを察する。そしてリーナの察した通り真理紗は人間に悪意がある限り悪の組織が生まれ続けると明かす。(みのり)はそのことに驚く。


「でも、人間は悪意だけじゃない。そうだろ?」

「その通りよ。人間には悪意を正す心、善意が存在する。人間の悪意によって悪の組織が生まれた時、その存在を許さない善意は対抗するための力を宝石に宿したのよ。」

「それが戦士の力というわけか。」


 四年前のサファイアの戦士、浦賀(うらが)輝弓(きゆみ)は人間には悪意だけじゃないと言い、真理紗もそれが正しいと答え悪の組織に対抗するための善意が宝石に力を宿したことを明かす。四年前のシトリンの戦士、金山(かなやま)依斧(いおの)もそれが戦士の力だと理解する。


「人間に悪意がある限り悪の組織は生まれ続ける。同時に善意もある限り宝石は戦士を導き続けるわ。」

「なるほど、悪の組織が現れる度に誰が戦士になるということか。」


 真理紗は悪の組織と同時に戦士が現れると話す。その言葉に、四年前のオパールの戦士である双見(ふたみ)アラモードは誰かが自動的に戦士になると察する。


「さあ、私が知っていることは全て話したわ。指輪を返してもらえるかしら?」

「ああ、うん。」


 真理紗は知っていることを全て明かしたと言い、林檎にアメジストの指輪を返すよう求める。林檎も納得し、真理紗に言われるがまま指輪を渡そうとするが、その瞬間依乃里が林檎を引き留める。


「待って下さい林檎さん!」

「依乃里ちゃん?」

「邪魔をするわね桜間依乃里。」


 突然の依乃里の叫びに林檎は驚き、真理紗は少し呆れた表情を浮かべる。


「真理紗、それだけじゃ納得できない。前に言っていたダイヤモンドの戦士のことも教えて。」

「あら、それも覚えていたのね。」


 依乃里は真理紗にダイヤモンドの戦士について尋ねる。以前真理紗は依乃里を運命の人と話した。それは他の指輪の戦士ではなく、ダイヤモンドの戦士である依乃里こそが運命の人であるという意味だった。そして真理紗は渋々ダイヤモンドの話を始める。


「仕方がないわね。ダイヤモンドは宝石の中でも特別な存在。その強大な力は他の宝石を遥かに凌駕し、悪の組織を壊滅させるのに不可欠な存在。でもそれ故にダイヤモンドはこの世に産み出される前から戦士の資格を与えなければならないの。」

「この世に産み出される前?どういうこと?」


 依乃里は真理紗の言葉が理解できなかった。しかし四年前のエメラルドの戦士であるエメラルディアは何となく理解できていた。


「この世に産み出される前というと、胎児ということか。」

「胎児ですか⁉」

「そんな段階から選ばれてたの⁉」


 エメラルディアは依乃里が胎児の段階からダイヤモンドの戦士に選ばれていたと察する。蓮葉(はすば)雨幸(あまゆき)新原(しんばら)桐菜(きりな)は驚くが、真理紗はエメラルディアの言葉に頷く。


「そうね、流石はダークストーリーズが世界の侵攻を始めた頃から戦っていただけのことはあるわ。」

「ああ、初代ダイヤモンドの戦士だった俺の姉さんも宝石と運命の巡りあわせをした。ダイヤモンドが姉さんを胎児の段階から選んでいたすると納得だな。」


 エメラルディアは自身の姉が胎児の段階からダイヤモンドに選ばれていたということに納得していた。


「その通りよ土ノ瀬(つちのせ)真亜琴(まあこと)、エメラルディアと呼ぶべきかしら?」

「呼び方は何でもいい。」


 真理紗はエメラルディアの本名である土ノ瀬真亜琴の名を呼ぶが、エメラルディアは呼び方に関しては気にしていない様子だった。そしてエメラルディアという言葉に雨幸は気になってしまう。


「エメラルディアって……、確か四年前の戦いで命を落としたって……!」

「あれ、そう言えば見たことない人だなって思ったけど……!」


 雨幸と桐菜はエメラルディアのことを戦いで命を落としたと聞いていたため、エメラルディアが目の前にいることを理解して思わず後退(あとずさ)ってしまう。


「「幽霊⁉」」

「ああ、まだ自己紹介していなかったな。今回の戦いのために生き返ったエメラルディアだ。」

「あなたが、エメラルディアさん……。」


 エメラルディアは雨幸と桐菜が幽霊と驚く中、優しく自己紹介をする。依乃里も初めて見るエメラルディアの姿を新鮮に感じていた。そして四年前のダイヤモンドの戦士である桜名(さくらな)美姫(みき)は真理紗に尋ねる。


「真理紗、お祖母ちゃんも依乃里ちゃんも産まれる前から戦士の資格を持っていたということでしょ?」

「そうね桜名美姫、でもあなただけは異例よ。あなたはダイヤモンドの戦士だった土ノ瀬(つちのせ)琴姫(ことひめ)の孫にして戦士の遺伝子を色濃く受け継いでいただけ。」

「やっぱり、そういうことだったんだ……。」


 美姫は自身がダイヤモンドの戦士になったことを真理紗から聞き、納得していた。美姫は直接ダイヤモンドに選ばれたのではなく、初代ダイヤモンドの戦士だった琴姫の孫でありダイヤモンドから与えられた力を受け継いでいたからダイヤモンドの戦士になれたのだ。そして真理紗は再び四年前を振り返る。


「私は四年前のあの日、新たにダークサイレンスが誕生すること、それに対抗する為のダイヤモンドの戦士に選ばれたのが桜間依乃里だということを知ったわ。」

「四年前から依乃里ちゃんがダイヤモンドの戦士だって知ってたんだ……。」


 真理紗は四年前にダークサイレンスの誕生とダイヤモンドの戦士が依乃里だということを知った。それに驚く林檎。そして真理紗は話を続ける。


「私はアメジストの戦士に選ばれ、同時に戦士を揃えてダークサイレンスと戦う使命をもらったわ。そして私はダークサイレンスと戦い、桜間依乃里を探すための旅に出たわ。」

「失踪したのって、いのりっちを探すため⁉」


 真理紗の言葉に桐菜は驚く。真理紗が四年間失踪したのは依乃里を探すためだったのだ。しかしそれは他の誰よりも依乃里が驚いていた。


「私を探すために、四年も行方をくらましていたなんて……。」


 依乃里は今までの真理紗の言動を理解し始めていた。思えば今まで真理紗は意味深長な口調で話していたが、話していること自体は具体的だった。


「真理紗さんは今まで依乃里さんを探しながら人知れずダークサイレンスと戦っていた、ということですね。」

「そういうことね。」


 赤園(あかぞの)風布花(ふうか)は真理紗の今までの行動を要約する。こうして真理紗は、自身の抱えている秘密を明かした。


「さあ、今度こそ返してもらうわ。」

「あ、ちょっと。」


 全てを話した真理紗は、林檎の隙を突いて無理矢理アメジストの指輪を奪い返す。


「帰るわよ、芽里音、美李宇。」

「ええ、承知しましたわ。」

「オッケー、早く帰ろう。」


 真理紗は仲間である上部(うわべ)芽里音(めりね)祭田(さいだ)美李宇(みりう)を連れて黒いオーラの中に消える。


「ああ、真理紗行っちゃった。」

「でも、(ようや)く話してくれましたね。」

「まあ、やっぱり真理紗も正義のために動いていたってことでしょ。」

「これであとは真理紗さんとわかり合うだけです。」


 依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は真理紗から話を聞いたことですっきりした気分だった。そんな中、エメラルディアから光が漏れ出す。


「うっ……!」

「エメラルディア様?」

「どうしたの?」


 リーナと(みのり)はエメラルディアの様子を心配する。そしてエメラルディアは苦しみながら答える。


「そろそろ時間だな。」

「役目を終えたから、また消えるということですか?」


 美姫はエメラルディアが再び消滅してしまうことを察する。それを聞いた皆は悲しみを感じる。


「じゃあな、消滅するところは見られたくないから行くぞ。」

「はい……。」


 エメラルディアはそう言って皆の元を離れ、皆は寂し気にエメラルディアを見送る。しかしエメラルディアが見えなくなると、突然リーナと(みのり)がエメラルディアを追いかけて走る。


「「エメラルディア様!」」


 二人はエメラルディアが隠れている森の中に辿り着く。


「リーナ、(みのり)、来てくれたのか。」

「当然です。私達は最期までお見送り致します。」

「エメラルディア様を独りぼっちで行かせないから!」


 エメラルディアは強がりながらもリーナと(みのり)が来てくれたことが嬉しかった。そして二人もエメラルディアを最期まで見送ると言い、エメラルディアの体を支える。


「もっとエメラルディア様とお話したかったです。」

「仕方がない。俺は元々一度死んだ身、戦うために蘇っただけだからな。」


 リーナはエメラルディアと話したかったと吐露する。それは(みのり)も同じ気持ちで、(みのり)は涙を流しながら話す。


「うぐっ……、エメラルディアざまっ……、わだしっ……、元気にやっでまずがら……。」

「ああわかっている、だから泣くな(みのり)。」

「わ~ん!」


 (みのり)はエメラルディアの優しい言葉で思わず号泣し抱き着いてしまう。それに釣られてリーナも泣いてエメラルディアに抱き着く。


「エメラルディア様!」

「リーナもか、お前達はまだまだ子供だな。」


 エメラルディアは二人に呆れているような言葉を投げかけるが、エメラルディア自身も嬉しさのあまり涙を浮かべていた。


「またお前達に見送られて俺は幸せだ。また二人でしっかりな。」

「「……はい!」」


 その言葉を最後に、エメラルディアは光となって消滅してしまうのだった。



「美姫さん、エメラルディアさんのところに行かなくていいんですか?一応身内の方ですよね?」

「大丈夫、エメラルディア様はリーナと(みのり)に任せておけば。」


 依乃里はエメラルディアを見送りに行かない美姫を心配するが、美姫はリーナと(みのり)に任せればいいと話す。


「それより依乃里ちゃん、ダイヤモンドのことなんだけど……。」

「はい、何となくわかっていたことなんですがまさか産まれる前から選ばれていたなんて……。」


 美姫はダイヤモンドの戦士の秘密を知った依乃里を心配する。依乃里も自身が胎児の段階から選ばれていたことに酷く衝撃を受けていた。


「ダイヤモンドの戦士が特別な存在だと知ったところで、ダークサイレンスを倒せばいいだけのことだ。特に重圧を感じることはない。」


 剣二は依乃里を安心させようと言葉を掛ける。


「じゃあ、私達はもう行くね。依乃里ちゃん、みんな、また大変だと思うけど頑張ってね。」


 美姫はそう言って他の四年前の戦士と共に依乃里らの元を離れる。そしてその場には依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人が残っていた。


「私達も行こうか。」

「依乃里さん、家に行っていいですか?」

「私も、ちょっとみんなで話し合いたいかなって。」


 依乃里も解散して帰ろうとしたが、雨幸と桐菜はふいに依乃里の家に集まることを提案する。


「そうだね、じゃあ家に行こうか。」


 依乃里も皆の話したいことは察していた。そして依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は依乃里の家に場所を移すのだった。 



 一方その頃、ダークサイレンスではスノアが消滅し残るはブラクスとノイジアスのみとなった。


「スノアも死んだな。だがその分俺の力となる。」

「はい……。」


 スノアを取り込んだノイジアスに特に死を悔いている様子は無かった。ブラクスは少し俯きながら答える。


「ブラクス、残る幹部はお前だけだ。恐らく戦いももうすぐ終わる。健闘を祈るぞ。」

「そうですね……。」


 ノイジアスはブラクスの背中を押すように言い、ブラクスを人間界に行かせる。しかしブラクスは終始元気のない様子だった。



 一方、依乃里の家に依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は集まっていた。四人は少し深刻な様子で向かい合う。


「依乃里さん、その、これからどうしますか?」

「そうだね……。」


 雨幸は依乃里にこれからのことを尋ねる。依乃里も真理紗の話で正直戸惑っていた。


「まさかいのりっちが言われていた運命の人っていうのがこんなに重要な話だとは思わなかったよ。」


 桐菜も真理紗の話に驚く様子を見せていた。しかし依乃里の考えは真理紗の話を聞く前と変わらなかった。


「でも、私が世界を守る鍵だとしても真理紗の考えに折れる必要はないよ。これからも真理紗達とわかり合えるまで戦う。」


 依乃里は再び真理紗とここから通じ合うことができるまで敵対することを決める。それには雨幸、桐菜、風布花の三人も賛同していた。


「そうですね、私達も依乃里さんについて行きます。」

「事はいのりっちが中心になれば解決ってだけだもんね。」

「ダークサイレンスも残りはブラクスとノイジアスだけです。真理紗さん達とわかり合うことができればすぐです。」


 三人も同じ考えを示し、四人は再び結束を固めるのだった。



 一方、真理紗ら三人は取り戻した力で洋館を作り、再びそこで時を過ごしていた。


「言っちゃったね~真理紗、あの人達にさ。」

「言って宜しかったのですの?」

「そうね……。」


 美李宇と芽里音は真理紗に尋ねる。真理紗はずっと秘密にしていたことを話したので、二人は真理紗を心配に感じていた。


「あの桜間依乃里、真理紗の話を聞いたら協力してくれるとかあるんかね?」

「彼女はそんな人じゃないわ。自分が鍵となるからと言って私の考えに寄り添うとは思えないわね。」


 美李宇の問いに真理紗は答える。真理紗は依乃里が決して自身の考えを理解する人ではないことを察していた。そして芽里音がもう一つ、真理紗に問いかける。


「真理紗は最初に悪の組織のことを知った時、どう思ったのですの?」

「悪の組織のことって?」

「その……、倒してもまた新しい組織が現れるってことですわ。」


 芽里音が尋ねたのは悪の組織の出現が繰り返されるという事実に対してだった。


「ダークサイレンスを倒したとしても必ずまた悪の組織が現れますわ。それにその時は真理紗が必ず戦士にまた選ばれるとは限らない。そうなったら真理紗の理想とする悪意のない世界は叶えられないままですわ。真理紗はどうするおつもりですの?」

「そういう話ね……。」


 真理紗は芽里音の問いに少し俯く。真理紗は元々人間の悪意に嫌気が差し、ダークサイレンスという悪意の権化となる存在を知ってからそれを根絶させるまで大切な人の前に姿を現わさないと心に誓っていた。しかし真理紗は人間に悪意がある限り悪の組織の根絶は不可能ということも知っていた。その矛盾する誓いに、芽里音は疑問を抱いていた。


「最初から私にできることなどたかが知れていたわ。私は絶対的な力を秘めるダイヤモンドの戦士でもないし、それに戦士は人間から悪意を消すことなどできない。あくまで悪意の権化となる悪の組織を倒すだけよ。私はダークサイレンスを倒したら、次に自分の役割が与えられるまでちゃんと休息の日常に戻るわ。」


 真理紗は最初から自身の戦いに区切りをつけるつもりだった。それを聞いた芽里音、そして美李宇は安心する。


「そっか、真理紗はちゃんとまた戻ることを考えていたんだ。」

「私達は真理紗が決めたことならそれについて行くだけですわ。」

「ありがとう芽里音、美李宇。」


 真理紗は自身の思いを明かしても尚ついて行く芽里音と美李宇に感謝する。そして三人は再び戦うことを誓うのだった。



 それから数日、人間界に降り立ったブラクスは無気力に街を徘徊していた。


「あぁ……、もう世界の侵攻なんぞどうでもいいな。」


 ブラクスは残る幹部が自分一人となったことで虚無の感情に駆られていた。


「俺は何のためにこんな所にいるんだ……。」


 ブラクスは自分のやりたいことさえ見失いかけていた。そんなブラクスに、金属の装飾を体中に付けた男性が話しかける。


「よぉ兄ちゃん、おっかないナリしてコスプレか?」

「あ?」


 肩を組んで馴れ馴れしく話しかける男性にブラクスは苛立ってしまう。


「おらぁぁ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ブラクスは男性の頭を掴み、壁に叩きつける。壁には大きなひびができる。


「なぁお前、悪意持ってんだろ?さっさとそれを俺に寄越せ!」

「な、何だよいきなり。」


 ブラクスは戸惑う男性に無理矢理悪意を引き出そうとする。そして男性は渋々ブラクスに悪意を明かす。


「ああそうだよ。昔から親にうるさく言われてさ、こんな世界なんかなくなってしまえって思ってたんだよ。これで満足か!」

「ああ、それでいい。」


 ブラクスはそう言うと男性の頭に手を翳し黒いオーラに包む。そして黒いオーラの中からマリスが現れる。


「よし、ちゃっちゃと暴れさせて帰るか。」


 ブラクスは無気力にマリスを連れ出し、街へ繰り出すのだった。



「依乃里さん!」

「いのりっち、またダークサイレンスだよ!」

「行きましょう、依乃里さん!」

「うん!」


 依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は街中を歩いている中、ダークサイレンスの出現を察知し急ぐ。街にはブラクスがマリスを連れて暴れていた。


「ブラクス!また性懲りもなく!」

「うるせぇ!俺には世界の侵攻しかねぇんだよ!」


 依乃里がブラクスに怒るが、ブラクスはどこか自暴自棄になっているような様子だった。


「みんな行くよ!」

「はい!」

「オッケー!」

「やりましょう!」


 依乃里は皆に呼びかけると、フラヴァイスを取り出し更にパートナーであるパッショネイトレオンを呼び出す。パッショネイトレオンはブラクスとマリスを軽く攻撃するが、それと同時にジェントルピューマ、エレガントイーグル、チアフルゴリラも攻撃して来た。


「真理紗!」


 依乃里は三体のモンスターが現れたことで真理紗らが来たことを察する。そして横を振り向くと真理紗、芽里音、美李宇の三人がいた。


「奇遇ね、桜間依乃里。」

「まだ敵対する気なら真理紗に花を持たせて頂きますわ。」

「つまり邪魔しないでね。」

「真理紗……!まあいいや。」


 真理紗、芽里音、美李宇の三人は依乃里らに嫌味を言う。そして依乃里は苛立ちながらも並んでフラヴァイスを構える。


「バラ!ダイヤモンド!パソドブレ!」

「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」

「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」

「カーネーション!パール!チャールストン!」

「パンジー!アメジスト!タンゴ!」

「マーガレット!アクアマリン!ワルツ!」

「ダリア!ラピスラズリ!サルサ!」


 七人はそれぞれフラヴァイスに叫び、フラヴァイスから音声が鳴り響く。


「Let's Dance!」

「踊るよ!」

「踊ります!」

「踊っちゃうよ!」

「踊ってみせます!」

「踊るわよ!」

「踊りましょう!」

「踊っちゃおう!」


 そして七人はそれぞれフラヴァイスから流れる音楽に乗せて踊る。次第に七人の体は戦士へとその姿を変える。


「情熱の舞姫、ローズレーザー!」

「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」

「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」

「軽快な舞姫、レッドライテスト!」

「魅惑の舞姫、ブラックチャーム!」

「優雅な舞姫、グレイスロード!」

「陽気な舞姫、フェスティブレイド!」

「情熱のメロディー、響かせてあげる!」

「軽快なステップに、ついて来られますか?」

「魅惑のムーヴに、酔いしれなさい。」


 七人はそれぞれ名乗り、ブラクスとマリスに立ち向かう。


「レーザーストライク!」

「ベリースラッシャー!」

「鋭刃の舞!」

「ステップ・オン・ザ・ビート!」

「ダンス・ド・セレナーデ!」

「スラッシュ・デ・フェスティバル!」


 ローズレーザー、ベリースパークラー、チェリーエッジ、レッドライテスト、グレイスロード、フェスティブレイドの六人はそれぞれ攻撃を仕掛けマリスのを消滅させる。


「ちっ、やっぱあんな奴の悪意じゃこんなもんか。」


 ブラクスはいい加減に出会ってすぐの男性からマリスを産み出したことを後悔する。そんなブラクスにブラックチャームがジェントルピューマと共にタンゴを踊りながら攻撃する。


「はぁぁ!」

「危ねっ!」


 ブラクスはブラックチャームの攻撃に油断し、思わず当たりそうになりそうなところを避ける。


「全く、戦いに集中できていないわよブラクス。まあこちらにとってはありがたいけど。」

「うるせぇ!組織のこととか世界の侵攻とかどうでもいいんだよ!俺はもっと……、自由に生きたいんだ!」

「そう、無意味な野望ね。」


 ブラックチャームはブラクスの様子がおかしいことを察していた。ブラクスは仲間がいなくなったことで自暴自棄になったことを明かす。そんなブラクスの告白にもブラックチャームは冷たい視線を向ける。


「あなた達悪の組織の幹部に自由に生きる資格などないのよ。」

「あ、どういう意味だよ?」


 ブラクスはブラックチャームの突然の言葉に首を傾げる。


「悪の組織は皆、人間の悪意から生まれる。悪の組織には全て母体となる怪物がトップとして存在する。ダークストーリーズならママーハハ、そしてあなた達ダークサイレンスならノイジアスという風にね。」

「あ、何の話だよ?」

「あなた達幹部は全て母体となる怪物から生まれた。そして最終的に母体に帰るのよ。」

「さっぱりわからねぇ。」


 ブラクスはブラックチャームの話が理解できなかった。


「まだわからないの?あなたが世界の侵攻に成功しようが失敗しようがいずれはノイジアスに取り込まれる運命だということよ。」

「はぁ⁉」


 ブラックチャームの一言はブラクスを激しく動揺させる。悪の組織は最終的にトップの怪物が一人で支配する運命にあった。動揺するブラクスに、ブラックチャームは無慈悲にもレーザー銃を向ける。


「チャーミングストライク。」


 ブラクスはブラックチャームのレーザー光線を喰らってしまうが、なんとか腕で受け止め事なきを得る。


「そんな運命受け入れられるか……!俺は生き抜いてみせる!」


 ブラクスはそう言い残し、人間界を去ってしまう。そして戦いを終えた戦士達は元の姿に戻る。


「真理紗、今の話って……。」


 依乃里も真理紗の話が信じ難かった。そして恐る恐る尋ねる。


「私が嘘をつくと思って?」


 真理紗はそう言い残すと芽里音、美李宇を連れて依乃里らの前から姿を消す。そして残された依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は何も言えずその場に佇んでいた。

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