第二十六話 戦士じゃなくなっても
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里ら戦士達はノイジアスの力を分け与えられたスノアによって敗北してしまう。そして皆、戦士としての資格を失ってしまう。皆が元の日常に戻る中、黒崎真理紗のみが戦士であることに拘り無理矢理戦士となってブラクスに立ち向かう。しかし力を思うように扱えず再び力を失い絶体絶命に陥る。そんな中、四年前の戦士の力を取り戻した双見アラモードが戦士となって戦うのだった。
「ツインスウィーテス!」
アラモードは戦士となってツインスウィーテスと名乗り、ブラクスとマリスに立ち向かう。
「ツインデスナイフ!」
ツインスウィーテスは二本の短剣を召喚し、マリスに飛び掛かる。
「はぁぁ!」
そして二体のマリスの胸を的確に突き刺し、消滅させる。
「くそっ、中々強いな。しかも踊らねぇし。」
「だって私はダンスの戦士じゃないし。」
ツインスウィーテスの強さに焦るブラクス。更にブラクスが驚いていたのはツインスウィーテスが踊らずに戦っていたということだった。それに対し、ツインスウィーテスはダンスの戦士ではないと答える。
「マジか、まあいい。どんな戦士であれ問答無用だ!」
ブラクスはそう言って斬撃を繰り出す。ツインスウィーテスは避けることもなく斬撃をまともに喰らったかに思えた。しかしその瞬間、ツインスウィーテスは二人に分裂する。
「ツインスウィーテス・ライトブルー!」
「ツインスウィーテス・ピンク!」
「二人になっただと⁉」
二人のツインスウィーテスはそれぞれ本来のツインスウィーテスからコスチュームが水色、ピンクに染められていた。そしてそれぞれツインスウィーテスライトブルーとツインスウィーテスピンクと名乗りブラクスが驚く中、またマリスに攻撃を仕掛ける。
「「はぁぁ!」」
二人のツインスウィーテスは同時に宙返りしてそれぞれマリスに跨りマリスを横たわらせる。そして短剣をマリスの胸に突き刺し、そのままマリスの横に立ってマリスを引き摺りながら互いに向かって走り出す。
「「はぁぁ!」」
そしてある距離まで近づくとマリスを放し、二体のマリスは互いに頭をぶつけて消滅する。
「「よし。」」
二人のツインスウィーテスは融合して元のツインスウィーテスに戻り、分厚い本を開く。
「必殺、お菓子の家!」
「危ね!」
そしてブ絡子と残りのマリスらの頭上に巨大なお菓子の家を召喚し、一気に落とす。ブラクスは寸前のところで逃げるが、マリスは一体残らずお菓子の家に潰され消滅してしまう。
「これが危うくスノアを消滅させるところだった技か。ここで引き上げた方が良さそうだな。」
ブラクスはそう言って人間界を去る。街には静寂が訪れ、ツインスウィーテスはアラモードの姿に戻る。
「やれやれ、一件落着かな。」
戦いを終えたアラモードは一息つくが、傷だらけで倒れる真理紗が目に入る。
「そうだった。」
アラモードは何かを思い出したかのように真理紗に近づき、腕を持ち上げて肩に掛ける。
「何をするの?」
「洋館に連れて帰らないと。」
「また余計な真似をするつもり?」
「生憎だけどあんたを連れて帰らないと林檎にどやされるからね。」
戸惑う真理紗にアラモードはそう答える。アラモードは林檎から真理紗のことを任されていた。アラモードはそのままアメジストとシトリンの指輪を拾い、ジェントルピューマを抱える。そして真理紗を連れて洋館へ帰るのだった。
一方、ダークサイレンスではブラクスがノイジアスの元に戻っていた。
「ブラクス、あれだけ意気込んでいた割には随分と戻るのが早いな。」
「ノイジアス様、しかし新たな戦士が現れたのです。まずは様子見という形でも良いかと。」
ノイジアスはブラクスが早く戻ってきたことに皮肉を言う。しかしブラクスはツインスウィーテスの出現により様子見という形を取ったと話す。
「ノイジアス様、あの戦士は恐らく四年前の組織ダークストーリーズと戦っていた戦士かと。」
「ほう、だから今までの戦士とは違っていたわけか。」
ブラクスはツインスウィーテスが四年前の戦士であると察する。それにはノイジアスも納得していた。
「とにかく、急に嘗ての戦士が再び現れたのは妙です。また俺が行きます。」
「ああ、頼んだ。」
ブラクスは再び人間界に行くことを決める。ノイジアスもスノアが未だ眠り続けているため、ブラクスに人間界の侵攻を任せるのだった。
真理紗を抱えて洋館へ行くアラモード。そして皆が待つ寝室へ到着する。
「たっだいま~。」
「おっかえり~。」
寝室には上部芽里音、祭田美李宇、先代のアメジストの戦士である鈴木林檎の他、先代のアクアマリンの戦士である水原夜衣魚、先代のラピスラズリの戦士である実・ファンタジアがいた。
「あれ、夜衣魚に実も来たんだ。」
「まあ、私達も心配だから。」
「リーナに様子を見に行ってって頼まれちゃって。」
夜衣魚も実も、真理紗らを心配して洋館を訪れたのだ。
「ていうか真理紗ちゃんヤバいじゃん!傷だらけだよ!」
夜衣魚は傷だらけの真理紗を見て驚き、すぐに救急箱を開けて傷の手当てに入る。
「あーあー、これまた派手にやられたね。」
実も真理紗を痛そうに見ていた。
「みんなして私の無様な姿を笑いに来たの?いいわ、好きにしなさい。」
真理紗は心配する皆を冷たく突き放すようなことを言う。林檎はその真理紗の言い草が気に入らなかった。
「真理紗、みんな真理紗達を心配して来てくれてるんだよ。そんな言い方はないんじゃない?」
「いいえ、戦士ではない私には価値などないわ。」
林檎は真理紗に怒るが、真理紗は頑として自分に価値がないと言い張る。
「はぁ、こいつめんどくさい。林檎、あと任せていい?竹月ちゃんのパフェの途中だから。」
「うん、ありがとうねアラモード。」
アラモードは強情を張る真理紗に嫌気が差し、洋館を出る。そして洋館の寝室には未だ眠る芽里音と美李宇、更に真理紗と真理紗を睨みつける林檎、そして夜衣魚と実が残されていた。
アラモードは再び四年前のガーネットの戦士である三浦竹月の家を訪れる。
「竹月ちゃん、お待たせ〜。」
「お疲れ様です、アラモードさん。」
竹月はアラモードを笑顔で出迎える。しかし今のガーネットの戦士である新原桐菜は未だに信じ難い様子だった。アラモード、竹月、桐菜の三人は一緒にパフェを食べる。
「ねぇつっきー、アラモードさんって本当につっきーの恋人なんだよね?」
「はい、四年前に私が告白したのです。」
「まさかのつっきーから……。」
桐菜はアラモードが竹月の恋人であることを確認し、竹月から告白したということを受け更に驚いてしまう。更に桐菜は竹月に質問をする。
「つっきー、言っちゃなんだけどどこが好きになって告白したの?」
「いい質問ですね。私はアラモードさんの芯の強さ、ご自分に正直なところが好きになったのです。」
「芯の強さねぇ……。」
桐菜が続いて気になったのは、竹月がアラモードのどこが好きになったのかということだった。そして竹月はアラモードの芯の強さに惚れ込んだと話す。桐菜はそれを聞き、確かにアラモードは四年前にも戦ったことがありながら指輪に再び巡り合っても何もせず悪びれる様子のないアラモードに図太さを感じていた。
「まあ、確かに芯は強いか……。」
「何か照れるな。」
「いや、褒めて……、まあ褒めてるか。」
桐菜はアラモードの芯の強さを認めるが、アラモードが何故か照れたことで褒めていないと言いかける。しかしよく考えたら褒めてると感じ、言い直す。そして竹月は、桐菜にある物を見せる。
「ところで桐菜さん、私が指輪を預かっております。」
そう言って竹月が桐菜に見せたのはガーネットの指輪だった。
「あ、つっきーが持ってるんだ。」
「はい、桐菜さんのために預かっておくように林檎さんから申し伝えられました。」
「そっか、私も早くまた戦えるようにならないとね……。」
桐菜は竹月が自身を応援していることを感じ、嬉しくなっていた。するとガーネットの指輪が竹月に反応するように光り出す。
「おや?」
「竹月ちゃん、戦士の力を取り戻したんじゃない?」
「つっきーが、また戦士に……?」
アラモードは竹月が再び戦士の資格を得たことを察する。桐菜もその光景には驚いていた。
一方その頃、蓮葉雨幸は四年前のペリドットの戦士であるリーナ・ジーニアスの元で紅茶を飲んでいた。
「ありがとうございますリーナさん、リーナさんのお陰で元気が出ました。」
「ええ、それならば良かったです。」
雨幸もリーナの助言によって沈んでいた心がすっかり晴れていた。そしてリーナは雨幸にふとあることを尋ねる。
「ところで蓮葉雨幸、現在恋人などはいるのですか?」
「こ、恋人ですか⁉」
リーナは雨幸に恋人について尋ね、雨幸は動揺してしまう。
「えっと、実はその、桐菜ちゃんと付き合ってます……。」
「新原桐菜と?」
「はい……。」
雨幸はリーナに桐菜と付き合っていることを明かす。それを聞いたリーナは一瞬だけ無言になるが、雨幸はその無言状態が耐えられなかった。
「あの、変ですよね!女の子同士で恋愛なんて……。」
「何を慌てる必要があるのですか?」
雨幸は思わず静寂を埋めるように言うが、リーナは依然として落ち着いた様子だった。
「私は愛する者を区別するなどという無粋なことはしません。この際ですから私も打ち明けますが、私も実と恋人の関係にあります。」
「そ、そうなんですか⁉」
リーナは女性同士の恋愛に関して気に留めない様子だった。更にリーナは同じく女性同士である実と付き合っていることを明かす。
「まあ、私と実は特殊な環境で育ちましたということもありますがね。」
「そうだったんですか……。」
雨幸はリーナと実が付き合っていることにすっかり驚いていた。そしてリーナは徐にポケットからペリドットの指輪を取り出し、雨幸に見せる。
「それともう一つ、あなたの指輪を預かっています。」
「あ、リーナさんが持っていたんですね。」
「ええ、あなたのためにと鈴木林檎から命を受けました。」
リーナも竹月と同様、林檎から指輪を預かるように頼まれていた。そしてペリドットの指輪もリーナに反応するように光り出す。
「あら?」
「もしかして、リーナさんが戦士の力を取り戻したということですか?」
雨幸はリーナが再び戦士の資格を得たことを察する。
「リーナさん、世界を守ることをお願いします。」
「ええ、しかし私はあくまでもあなたが再び戦士になるまで戦うだけです。」
雨幸はリーナに戦士の使命を託すが、リーナはあくまでも雨幸が再び戦士になるまで戦うだけだと話すのだった。
「はい真理紗ちゃん、動かないで!」
「怪我の手当てなど無用よ!」
一方、洋館では夜衣魚が真理紗の怪我の手当てをしていたが真理紗が執拗に拒んでいたため思うように手当てができなかった。
「真理紗、いい加減素直に助けてもらいな。」
林檎が真理紗に叱責するが、真理紗は頑として聞く耳を持たなかった。
「全く、何故私に戦士の資格が戻らないのに双見アラモードが戦えるのかしら?」
真理紗はアラモードが戦士になれたことに対し、未だに納得が行かなかった。
「さあね、指輪があんたに愛想を尽かしたんじゃない?」
「ふざけないでもらえるかしら?実・ファンタジア。」
「ごめんごめん。」
実は真理紗に対し指輪が愛想を尽かしたと皮肉を言うが、真理紗は実の言葉に苛立っていた。
「でも確かに不思議だよね、アラモードがダンスの戦士になるならまだしも四年前の力が復活するなんてさ。」
「そっか、四年前の力はダークサイレンスとの戦いで失われたんだもんね。」
林檎はアラモードが四年前の戦士の力を取り戻したことを不思議に感じていた。それには夜衣魚も共感していた。
「冗談を抜きにしても私達がスノアに敗れたタイミングでの戦士の資格の剥奪、恐らく指輪の宝石がダークストーリーズを打ち砕いた力を再び必要としていることは間違いないようね。」
真理紗は冷静に状況を分析し、指輪の宝石が再び四年前の力を求めていると考える。
「不本意な話だけど、もしもこの仮説を正しいとするのなら双見アラモードのみならず他の戦士も力を取り戻すわね。」
真理紗は冷静に分析した上で四年前の戦士が皆、力を取り戻すと考えていた。そして真理紗の仮説を証明するかのようにアメジスト、アクアマリン、ラピスラズリの指輪がそれぞれ林檎、夜衣魚、実に反応するように光り出す。
「アメジストの指輪が!」
「アクアマリンもだよ!」
「ラピスラズリもじゃん!」
林檎、夜衣魚、実の三人は驚く。そして夜衣魚と実の二人が恐る恐る指輪を左手の中指に嵌める。すると二人共無事に嵌められた。
「うわ、行けた。」
「私もだよ。」
そして林檎もアメジストの指輪を嵌めようとした時、真理紗がアメジストの指輪を林檎から奪う。
「ちょっと真理紗!」
「私がいつも運命に身を委ねると思って?私が戦士でなくなる運命など、受け入れられるはずがないわ。」
「今、戦士の資格があるのは私なの!戦える人に任せられないことこそ戦士失格だよ。」
真理紗は依然として林檎に戦士の資格を託す気がなかった。林檎は自身に指輪を託すよう諭す。
「私はダークサイレンスを倒すまで戦士で在り続ける。その執念を、誰にも止めることはできないわ。」
真理紗は林檎に諭されながらも自身の意志を曲げることはなかった。そして再びアメジストとシトリンの指輪を持って洋館を出ようとする。
「どこへ行きますの?真理紗。」
そんな真理紗を、突然起き出した芽里音が引き留める。
「芽里音、起きていたの。」
「真理紗、戦士ではなくなったその身を再び戦場に投じますの?それは許しませんわ。」
「あなたに指図される謂れはないわ。」
芽里音は真理紗が戦うことに反対のようだった。しかし真理紗は芽里音の言うことも聞かずまた洋館を出ようとする。すると芽里音と同じタイミングで起きていた美李宇が声を発する。
「真理紗が死んじゃ嫌だよ!」
「美李宇……。」
真理紗は美李宇の言葉で思わず足を止め、振り向く。
「私は戦士になりたかったから真理紗について来た訳じゃない、真理紗と一緒にいたいからだよ。戦いを終えて、また真理紗とダンスパーティーしたいのに死んじゃ意味ないじゃん!」
「真理紗、私も同じ気持ちです。戦士として命を散らすのは真理紗らしくありません。」
美李宇、そして芽里音の二人は真理紗に戦って欲しくないと強く主張する。
「真理紗、二人もこう言ってるんだしわざわざ死にに行くことはないんじゃない?」
「……今回だけは折れてあげるわ。」
林檎も芽里音と美李宇の気持ちを汲み取り、再度真理紗を引き留める。真理紗も遂に戦うことを諦め、林檎にアメジストとシトリンの指輪を渡す。
「鈴木林檎、あなた達に戦士の資格を託すわ。」
「真理紗の希望を、絶対に無駄にはしない。」
真理紗と林檎は真剣な眼差しで見つめ合い、言葉を交わすのだった。
それから数日後、依乃里はパッショネイトレオンと共にソファーに横たわり戯れていた。
「レオン~、愛してるよ~。」
「ガー!」
戦士ではなくなった依乃里にとって、パッショネイトレオンと過ごす時間が唯一の幸せだった。
「はぁ……。」
「ガー?」
「ううん、何でもないの。」
しかし依乃里は戦士ではなくなった日からどこか寂し気な様子だった。パッショネイトレオンが心配そうに話しかけるが依乃里は何もないと強がるように言う。そして依乃里は服のボタンを外し、少しだけ胸の谷間を出す。
「さあレオン、お楽しみだよ。」
「ガー!ガー!」
依乃里はそう言ってパッショネイトレオンを胸の中に入れようとする。しかしその時、家のインターホンが鳴る。
「ん……、誰だろう?」
依乃里はそう言って服のボタンを閉め、ドアを開ける。するとそこにいたのは雨幸と桐菜だった。
「雨幸ちゃん、桐菜ちゃん……。」
「依乃里さん……。」
「何か……、久しぶりって感じだねいのりっち。」
スノアに敗北して以来の再会を果たした三人の間には少し気まずい雰囲気が漂っていた。
「上がって、二人共。」
依乃里はどんな表情をすればいいのかわからず、真顔で二人を家に上げる。
依乃里はお茶を淹れ、三人でテーブルを囲んでお茶を啜る。
「……もう会ってくれないかと思ってた。」
「そんなことないです依乃里さん!」
「そうだよいのりっち、私達仲間じゃん!」
依乃里は戦士の資格を失ってから、戦士としての仲間である雨幸や桐菜と連絡を取るのを無意識に控えていた。そして雨幸と桐菜も自身と会わないと考えていた。しかし雨幸と桐菜は強く否定する。
「私、力を失って正直ホッとしていたところはあるんだよね。もう戦わなくていいわけだしさ。でも、みんなとは戦士であることで繋がっていたんだし、私はみんなと年も離れてるからもうあんまり会うこともないのかなと思ったら急に寂しくなって……。」
依乃里は戦士の力を失ってから、安心した気持ちと他の戦士に会えない寂しさを吐露する。しかし雨幸も桐菜も同じ気持ちを抱いていたため、依乃里の気持ちは痛いほど理解していた。
「依乃里さん、私達が出会った切っ掛けは戦士としてでも私達の絆は永遠です!」
「そうだよいのりっち、私達は戦いが終わってもずっと一緒だよ。」
「雨幸ちゃん、桐菜ちゃん……。」
依乃里は二人の言葉が嬉しかった。三人は戦士の力を失ってから、互いに戦士以上の絆があることを感じていた。
「ありがとう!」
「依乃里さん……。」
「いのりっち……。」
依乃里は思わず二人に抱き着いてしまう。二人も答えるように依乃里を抱き締める。
「ごめん、戦士になれなくなったしいつもの日常に戻れるなって思ってたんだけどやっぱりみんながいないと楽しくないよ。」
「私も同じ気持ちです。リーナさんに言われて気が付きました。」
「私もつっきーに言われてわかったんだ。みんなで一緒にいないといけないって。」
依乃里ら三人は互いの絆を感じ合っていた。そしてそれを見ていたパッショネイトレオンも鳴き出す。
「ガー!ガー!」
「レオン、おいで。」
依乃里はレオンも呼び、一緒に抱き合う。
「レオンもずっと一緒だからね。」
依乃里は皆と抱き合い、幸せな気持ちに浸っていた。そんな時、突如として歯ぎしりのような騒音が鳴り響く。
「うっ……!」
「この騒音は……!」
「ブラクスじゃん……!」
依乃里、雨幸、桐菜の三人は耳を塞いで倒れ込む。
「どうしよう、今は戦えないのに……!」
「大丈夫です依乃里さん。」
「え?」
依乃里は戦士の資格を失っているので戦いにいけないことに焦る。しかし雨幸と桐菜に心配する様子はなかった。
「実はつっきー達先代の戦士が力を取り戻しているみたいなんだ。だからみんなに任せよう。」
「本当?」
依乃里は驚いてしまう。依乃里は四年前の戦士が力を取り戻していることに頼もしさを感じつつも不思議に感じていた。しかし今は戦える四年前の戦士に任せるしかなかった。
「みんな急いで!」
林檎は皆に呼びかけ、ダークサイレンスの暴れる元に向かう。そして林檎について行くように夜衣魚、竹月、リーナ、実も走っていた。林檎は竹月に、その場にいないアラモードについて尋ねる。
「竹月ちゃん、アラモードは?」
「まだパフェを食べ終えていません!」
「また?まあいいか、頭数は揃っているし。」
アラモードはいつものようにパフェを理由にして戦いを怠けていた。しかし林檎は人数が揃っていることで特に気に留めなかった。そして五人はブラクスとマリスの暴れる元に到着する。
「そこまでだよブラクス!」
「あ?また見ねぇ顔だな。もしかしてお前らもダークストーリーズと戦った奴らか?」
「ご明察。」
ブラクスは初めて見る林檎らに対し、四年前の戦士だと察する。そして林檎ら五人はブラクスにその推察が正しいと示すように本を出す。
「みんな、行くよ!」
そして林檎の合図で、皆は一斉に本を開く。
「さそり座!アメジスト!白雪姫!」
「うお座!アクアマリン!人魚姫!」
「おひつじ座!ガーネット!かぐや姫!」
「てんびん座!ペリドット!アラジンと魔法のランプ!」
「かに座!ラピスラズリ!ピーターと不思議な冒険!」
五人は一斉に叫ぶ。すると空が暗くなり、それぞれ五人が叫んだ星座が浮かび上がる。そして空から声が聞こえる。
「Miracle Force!」
「来なさい!」
「来ちゃって!」
「おいでなさい!」
「来るのです!」
「来ちゃいな!」
五人が空にそう叫ぶとそれぞれの星座の最輝星が光を放ち、五人の指輪に届く。そして本から文字が飛び出し、五人の体を包む。やがて五人の体は戦士へとその姿を変える。
「ポイズノーム!」
「マーメイデスト!」
「フルムーンハイヤー!」
「アラジンザスカイ!」
「ピーターシザーズ!」
五人はそれぞれ名乗り、ブラクスとマリスに立ち向かう。
「さそり座!」
林檎がその姿を変えた白雪姫を彷彿とさせるドレスに身を包んだ戦士、ポイズノームはさそり座の光から蠍の尻尾のような鞭を召喚する。
「はぁぁ!」
そして鞭で複数のマリスを薙ぎ払うのだった。
「うお座!」
続いて夜衣魚がその姿を変えた人魚姫を彷彿とさせる戦士、マーメイデストはうお座の光から三つ又の槍を召喚する。
「マーメイトライデント!おりゃぁぁ!」
マーメイデストは三つ又の槍をマーメイトライデントと叫ぶと、勢いよく振り回して複数のマリスを薙ぎ払う。
「トライデントクロス!」
そして槍をX字型に振り、マリスを斬りつけるのだった。
「参ります!」
続いて竹月がその姿を変えたかぐや姫を彷彿とさせる戦士、フルムーンハイヤーはマリスの周りに無数の満月を召喚する。そして散りばめた無数の月を踏み台にしてマリスの周りを飛び回り翻弄する。
「はぁぁ!」
そして急降下してマリスを蹴り上げ、消滅させるのだった。
「行きます!」
続いてリーナがその姿を変えたアラジンを彷彿とさせる戦士、アラジンザスカイはレーザー銃を手に取り自身を囲んだマリスを連続で確実に撃ち抜く。
「まだです!」
アラジンザスカイはそれだけでなく、本を開いて絨毯を召喚し乗って空を飛ぶ。そしてマリスを一斉に跳ね飛ばす。
「アラジンザストライク!」
そして力を込めたレーザー光線を放ち、マリスを消滅させるのだった。
「こっちも行くよ〜!」
続いて実がその姿を変えた羽根付きの帽子の戦士、ピーターシザーズはラピスラズリの指輪を嵌めた左手を空に掲げる。
「かに座!」
すると空が暗くなってかに座が浮かび上がる。そして巨大な蟹の鋏がピーターシザーズの左腕に装着される。
「もういっちょ!出よシャムシール!」
ピーターシザーズはそう言うと本を開き刀身の曲がった剣を召喚する。
「喰らえ鋏とシャムシールのコンボ!」
ピーターシザーズは右手に持った剣と左手に装着した鋏を振り回し、マリスを攻撃する。そして鋏でマリスを挟み込み、投げ飛ばすのだった。
「……ったく、四年前の戦士もこんなにいるのかよ。」
ブラクスはポイズノームらの攻撃に苛立つ。
「ポイズンストラングル!」
マリスが全滅し、残りはブラクスのみとなったところでポイズノームは鞭でブラクスを縛り上げる。
「あとはあんただけだよ、ブラクス!」
「あん?」
ポイズノームはブラクスにそう言うと、マーメイデスト、フルムーンハイヤー、アラジンザスカイ、ピーターシザーズの四人が同時に攻撃を仕掛ける。
「「「「はぁぁ!」」」」
「くっっ……、ここでやられるわけに行かねぇんだよ!」
ブラクスはそう言うと、鞭を振り解き攻撃を躱す。
「今日のところはここで退いてやる。じゃあな。」
ブラクスは劣勢を感じ、人間界を立ち去る。そして街に静寂が訪れ、五人は元の姿に戻る。
「ふぅ、久し振りに戦ったから疲れちゃった~。」
夜衣魚は息を切らしながらそう言うと膝をついてしまう。
「ほら夜衣魚立って。」
「だってもう三十路なんだも~ん。」
林檎は夜衣魚に呆れながら話しかけ、手を差し伸べ立たせる。
「まあ、腕慣らしには丁度いい塩梅でしたね。」
「リーナ余裕じゃ~ん。恰好良かったよ。」
リーナは余裕気な様子で話す。実もリーナに懐きながら話していた。
「この調子ならまた全員揃って戦えますね。力を失った桐菜さん方の分まで、頑張ってダークサイレンスを倒しましょう。」
「そうだね。」
竹月は四年前の戦士全員が力を取り戻すことを予測し、力を失った戦士の分まで戦うことを決意する。そして林檎もそれに賛同^するのだった。




