第二十二話 可愛いあの娘が恐れる野獣
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里の仲間である蓮葉雨幸は同じく仲間である新原桐菜に彼氏がいることを気にしてしまい尾行してしまう。結果として桐菜には彼氏がおらず、雨幸は桐菜に気持ちをぶつけ、二人は結ばれるのだった。
ある日のこと。依乃里、雨幸、桐菜、そして赤園風布花の四人はある場所へ向かって街中を歩いていた。
「風布花ちゃん、林檎さんが言っていた大事な話って何だろうね?」
「はい、私も詳しいことはまだ聞いていないので気になります。」
依乃里は風布花にそう話しかける。四人はこの日、四年前のアメジストの戦士である鈴木林檎に呼び出されていた。しかし林檎は風布花経由で呼び出し、風布花にも詳細を話さなかった。
「でも林檎さん、深刻そうな声で話していたんですよね……。」
「もしかしてマジヤバな話?」
風布花は林檎の声が深刻そうなものだったことを思い出し、桐菜が深刻な話をするのかと警戒する。そして雨幸はあることを思い出す。
「そう言えば実さんから聞いたんですけど、林檎さんが店長を勤めている方のカフェの店舗が今トラブルが起きて営業停止しているって。」
「トラブル?もしかしてそれが関係あるのかな……?」
雨幸は林檎が店長を勤めているカフェが営業を停止していることを思い出す。依乃里は林檎のカフェで起きたトラブルが今日の呼び出しに関係しているのかと推測していた。そして四人は漸く林檎の勤めるカフェに到着する。すると四人は荒れ果てた店内に唖然としてしまう。
「依乃里ちゃん、みんな、まだ片付いてなくてごめんね。」
「林檎さん、これって……?」
林檎は荒れ果てた店内を片付けながら依乃里らを出迎える。そしてカフェを片づける店員に交じって四年前のサファイアの戦士である浦賀輝弓もいた。
「輝弓さんも来ていたんですね。」
「ま、事の詳細は俺が話すよ。取り敢えず座って座って。」
風布花は輝弓に話し掛け、輝弓は自身が詳細を話すと言って依乃里らを席に着かせる。そして並んで座った依乃里ら四人と向かい合うように、林檎と輝弓は並んで席に着く。
「さて、まずこの店内が荒れちゃった原因なんだけど。」
「もしかして、ダークサイレンスですか?」
「うん、そうなんだけど厳密にはクリークって言った方が良いのかな?」
「クリークですか?」
輝弓は林檎のカフェが荒れてしまった原因として、ダークサイレンスの幹部であるクリークによるものだと話す。雨幸はクリークがやったという事実に驚くが、林檎が更に話を続ける。
「うん、クリークが突然私の店にやって来て暴れたの。そして店員の子を人質に取ってね。」
「嘘、クリークが⁉」
「それで、クリークは何かを要求したんですか?」
林檎はクリークが店内で暴れ回り、店員を人質に取った事実を話す。桐菜は酷く驚き、風布花はクリークの目的を尋ねる。そして林檎はゆっくりと語り出す。
「うん、クリークはダークストーリーズについて教えろって言って。命には代えられないから仕方なくダークストーリーズのことを話したんだよね。」
「それは仕方がないです。」
「そうしたら、クリークはウルフィンの話に興味を持ったみたいで。」
「ウルフィン⁉」
林檎はクリークがダークストーリーズについて尋ねたと話す。そしてクリークがダークストーリーズの中でもウルフィンに興味を持ったことを話すと、風布花は酷く動揺してしまう。
「ウルフィンってダークストーリーズの幹部ですか?」
「そう言えば、ダークストーリーズの幹部ってあまり詳しいことを聞いたことがありませんでしたね。」
「まあ、もう倒した悪の組織のことなんて私達には関係のない話だけどね。」
依乃里らはウルフィンの名が少し気になったようだが、既に滅んだ組織の幹部なので特に気に留めることもなかった。しかし風布花の動揺は治まらなかった。
「クリークは、ウルフィンに関して何かをするつもりなのでしょうか?」
「うん、だから風布花ちゃんも動揺すると思って直接話そうと思ったんだ。」
林檎はウルフィンが絡む話という理由で直接呼び出したと言う。
「それで、ウルフィンというのはどんな幹部なのかと言うとだね。」
「いえ、大丈夫です輝弓さん。ウルフィンのことは私から皆さんに話します。」
そして輝弓がウルフィンについて話そうとした瞬間、風布花は自身で依乃里らに話すと言って遮る。
「あ……、そっか。」
「はい、輝弓さんも林檎さんもお店の復旧にお忙しいでしょうから私達はここで失礼します。」
風布花は少し俯いた様子でそう言うと足早にカフェを出る。
「風布花ちゃん、どうかしたの?」
依乃里は風布花の様子が気になり、尋ねようとするが林檎が依乃里の肩に手を置いて引き留める。
「林檎さん?」
「ごめん依乃里ちゃん、話はいずれ風布花ちゃんから聞くと思うから今はそっとしておいてあげて。」
「はい……。」
林檎は風布花を気遣い、風布花が自身から詳細を話すまで深入りしないように諭す。依乃里らも林檎の言葉を受け、静かに風布花を見守るのだった。
一方その頃、ダークサイレンスでは未だクリークが籠もって何かをしていた。
「おい、クリークはいつまでこそこそやってんだ?」
「う〜ん、いつまでかな〜?」
ブラクスは苛立ちながらスノアに尋ねる。しかしスノアもクリークの動向はわからなかった。
「全く、これで侵攻の足が止まったら世話ねぇだろ。」
ブラクスはクリークがずっと表に出ないことに怒りを覚えていた。そんな時、クリークのいる部屋のドアが突然開く。
「ブラクス、スノア。遂に出来ましたよ。」
「クリーク。」
「お前、今まで何をやっていたんだよ。」
クリークは酷く疲れた様子で息を切らしながら言う。怒りながら尋ねるブラクスだったが、クリークの隣に狼男のような怪物が現れる。
「クリーク~、その怪物は何~?」
「まさか、俺達の新しい仲間か?」
スノアとブラクスはその狼男のような怪物に首を傾げる。しかしクリークは不敵な笑みを浮かべていた。
「ふふっ、これこそが奴らの脅威となる最強の怪物ですよ。」
クリークはそう言って狼男の怪物を跪かせる。
「全ては、クリーク様のために。」
狼男の怪物はそう言ってクリークに忠誠を誓うのだった。
カフェを出た依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人。依乃里ら三人は風布花がカフェを出てから一言も発さないことを気にしていた。
「ふぅちゃん、何も話さないね。」
「そのウルフィンという幹部が関係しているのでしょうか?」
「うん……。」
三人は風布花に聞かれないようこそこそと話す。そして風布花は突然話し出す。
「皆さん、ウルフィンのことなんですけど。」
「あ、うん!」
「どんな方なんですか?」
桐菜と雨幸は風布花が話し出したことに一瞬警戒するように畏まってしまう。そして風布花はゆっくりと語り出す。
「ウルフィンはダークストーリーズの幹部で、狼みたいな怪物です。」
「狼?」
「はい、恐らく赤ずきんちゃんとか子ヤギの敵の狼かと。」「なるほど、狼の怪物ですか。」
「はい。」
風布花はウルフィンをダークストーリーズの幹部で、狼の怪物だと説明する。桐菜と雨幸はその説明で納得するが、依乃里だけは納得する様子がなかった。
「風布花ちゃん、多分だけどそれだけじゃないよね?」
「依乃里さん?」
「いのりっち、どうした?」
依乃里は風布花に問い詰めるように尋ねる。雨幸と桐菜は突然の依乃里の態度に動揺する。そして風布花は黙り込んでしまう。
「風布花ちゃん、またみんなで私の家に行こうか。話をゆっくり聞かせて。」
「……はい。」
依乃里は皆を自身の家に招き、風布花の話を聞こうとする。風布花も少し俯いた様子で答えるのだった。
依乃里ら四人は依乃里の家に集合していた。
「依乃里さん、何で風布花ちゃんが何かを隠していると思ったんですか?」
「そうだよいのりっち、昔の敵なんて狼の怪物だけで十分じゃん。」
雨幸と桐菜は依乃里に風布花が全てを話していないと考えた理由を尋ねる。
「風布花ちゃん、ウルフィンって名前を聞いてからずっと元気ないんだもん。ただの敵ってだけだったらそんなことにならないでしょ?」
「ああ、確かにそうですね。」
「確かにそっか。」
依乃里は風布花が昔の悪の組織であるダークストーリーズの幹部というだけのウルフィンに対して元気を失くすということが不自然に思えていた。それに合点が行く雨幸と桐菜、そして風布花はゆっくりと語り出す。
「ウルフィンは、憎むべき敵って訳でもなかったんですよね。」
「ん、どういうこと?」
「最初こそはただの敵同士だったんですけど、丁度私とウルフィンが同時に組織に居づらくなった時があって……。」
「もしかして、敵と意気投合したんですか?」
「意気投合っていうか、暫く戦わずに一緒にいただけです。」
「でも、ちょっと仲良くなったのは事実だよね?」
「はい……。」
風布花は以前、ウルフィンと絆が生まれたことがあると話す。
「ウルフィンは、自分の思うままに戦うことが生き甲斐だったんです。決して世界の侵攻に利用されるべきじゃないんです。」
「そんなに思い入れのある怪物だったんだね、ウルフィンって。」
依乃里は風布花の言葉からウルフィンへの並々ならぬ思いを感じ取る。しかしそれ故に皆はクリークを警戒していた。
「多分クリークが今後やることとして考えられるのは、そのウルフィンを復活させることかな?」
「前の悪の組織の幹部を復活させることなんてできるんですか?」
「それはわからないけど……。」
「できるんだったらとっくにやってるでしょ。多分どんな攻撃をしてたかとかそんなんを勉強したくらいじゃない?」
「そうだといいけど……。」
皆はクリークがウルフィンに関してどう動くのか予想していた。依乃里はウルフィンを復活させることを考えていたが、雨幸も桐菜もそれには首を傾げてしまう。いずれにしろ、皆はあまり良い予感をしていなかった。
一方その頃、クリークは狼男の怪物についてブラクスとスノアに説明する。
「この怪物の名はウルフィン、四年前の戦士と激闘を繰り広げたあのダークストーリーズの幹部なのですよ。」
「ダークストーリーズの幹部だと?」
「あの噂に聞く僕達の前にいた組織のこと~?」
クリークは狼男の怪物をウルフィンと紹介する。クリークは輝弓や林檎からダークストーリーズの幹部について聞き、その中でも今の依乃里らにとって脅威になるとウルフィンを選び微かに残っていたダークストーリーズの闇からウルフィンを復元したのだ。
「中々骨の折れる作業でしたよ。何せダークストーリーズの闇をここからかき集め、その中からウルフィンの闇を特定し、そして復元したのですからね。」
「お前もよくやるなぁ。」
「何でそんな疲れることをするかな~。」
ブラクスとスノアはクリークに感心と呆れが入り混じった感情を抱いていた。
「私はクリーク様の手によって復活を遂げた身、この命はクリーク様と共にあります。」
「ところでクリーク、そこの狼野郎はそんなご主人様への忠誠心が高かったのか?」
「いえ、四年前の戦士が言うにはかなり乱暴な性格らしいです。ですが言うことを聞かない幹部など復元させた意味がありません。ここは僕への忠誠心が高い性格へとカスタマイズしました。」
「つまりはクリーク、そのウルフィンって奴を自分の都合の良いように改造したってことでしょ。」
「人聞きの悪い言い方をしますが、そういうことですよスノア。」
ブラクスはウルフィンの風貌に似合わない言葉遣いに違和感を覚え、クリークに尋ねる。するとウルフィンが嘗ての性格と違う旨をクリークは明かす。
「さあウルフィン、人間界へ侵攻しに行きますよ。」
「はい、クリーク様。」
そしてクリークはウルフィンを連れ、人間界へ赴くのだった。
風布花がウルフィンのことを思い出してから数日、未だダークサイレンスの動く気配がなかった。その分、風布花の気が晴れない日々が続いていた。
「ダークサイレンス、中々現れませんね。」
「そうだね、平和なのは良いことなんだけどふぅちゃんがまだ元気ないみたいだからね。」
雨幸の部屋で雨幸と桐菜はダークサイレンスを警戒すると同時に、風布花を心配していた。
「私達、四年前の戦いのことを風布花ちゃんから全て聞いたつもりでした。でも本当は、思っていた以上に風布花ちゃんの苦しみは大きかったんですね……。」
「うん……、私達もちょっとふぅちゃんに甘えていたのかなって思うよね……。」
雨幸と桐菜は、風布花の抱えている物が自身らよりも大きいことを痛感する。
「私達が風布花ちゃんにしてあげられることは、あるんでしょうか……?」
「さぁね、私達が教師とか保育士ならまだ何かできたんだろうけど。残念ながら私達はただの仲間だから、信じるしかないよ。」
雨幸は風布花を元気付けたいと考えるが、桐菜は今の自分らでは何もできないと説く。そして桐菜は雨幸の隣に座り、そっと肩を抱き寄せる。
「ほらゆっきー、もう堅苦しい話は終わり。ここからはお楽しみの時間だよ。」
「そうですね。」
桐菜はそう言って雨幸にキスをする。そして二人はベッドに横たわるのだった。
時を同じくして、依乃里は四年前のダイヤモンドの戦士である桜名美姫に電話を掛けていた。
「すみません美姫さん、突然電話なんて掛けちゃって。」
「いいよ依乃里ちゃん、私も事情は林檎ちゃんから聞いているから。」
依乃里は未だ元気のない風布花について、美姫に相談しようとしていた。
「もしもなんですけど、そのウルフィンって怪物がまた風布花ちゃんの前に現れたら風布花ちゃんはいつも通りに戦えるんですかね……?」
「どうだろう?ママーハハとの最終決戦の時に幹部が一斉に復活したことがあって、その時も風布花ちゃんは何も言わない操り人形になったウルフィンと戦ってるからなぁ……。」
「そうなんですか?」
依乃里は、美姫から風布花が嘗て復活したウルフィンと戦ったことがあることを知る。
「その時って、風布花ちゃんはちょっと戦いづらそうでした?」
「う〜ん、みんなも復活した幹部と戦ってたしなぁ。それにあの時はママーハハの弱点を突いてこっちが有利になった時に全員消滅したから直接倒した訳じゃないんだよね。まぁ有耶無耶になった感じかな?」
「そうですか……。」
しかし当時は最終決戦だったため、風布花もあまりウルフィンとの戦いで感傷に浸る暇もなかったと美姫は話す。依乃里はクリークがウルフィンを復活させないことを祈るしかなかった。
「ところで美姫さん、もう一つ聞いていいですか?」
「うん。」
ここで依乃里はふと、美姫にあることを尋ねる。
「風布花ちゃんって、恋人っていうかそういう相手の人がいるんですか?前に風布花ちゃんがかなり動揺していたので。」
「ん⁉」
風布花の恋人について尋ねられた美姫は、風布花と同じように激しく動揺してしまう。
「アチャチャチャチャチャ!ごめん、お茶が……!」
「だ、大丈夫ですか⁉」
美姫は依乃里と電話しながらお茶を飲んでいたらしく、思わずお茶を噴き出したようだった。
「大丈夫大丈夫、大したことないから。」
「それならいいんですけど……。」
依乃里は美姫を心配するが、美姫は何もないように振る舞っていた。
「風布花ちゃんね、まぁ年頃だし好きな人くらいはいるんじゃない?私は知らないけど。」
「そうですか、まぁそうですよね。」
美姫は風布花の恋人について知らないと答える。依乃里も何となくそれで納得する。そして依乃里は美姫との電話を切るのだった。
「風布花ちゃんの相手って、多分四年前の戦士の間でタブーなんだな。」
依乃里は何となく風布花の相手のことについてこれ以上深入りしないことを決めるのだった。
そしてまた数日が過ぎ、風布花はいつものように中学校での授業を終え下校していた。
「はぁ……。」
風布花は次にダークサイレンスが現れる時が憂鬱で仕方がなかった。
「赤園さん。」
「はい……。」
風布花は帰り際、クラスメイトに話しかけられる。
「最近元気ないけど、どうかしたの?」
「いえ、何でもないです……。」
クラスメイトは風布花の元気がないことを気にかけていた。しかし風布花は戦いのことを関係のないクラスメイトに話す訳にも行かず、はぐらかすように答える。
「本当?ちょっと心配だけど……。」
「本当に大丈夫です。」
クラスメイトは風布花が無理をしているように見え、また少し問い詰めるが、風布花はそれでも問題ないと突き放すように言う。そんな時、クラスメイトが突然耳を塞いで倒れ込む。
「大丈夫ですか⁉」
「うぅ……、何かあっちの方からドアの軋むような音と、それに狼の遠吠えのような音が……。」
「これってクリークと……、ウルフィン⁉」
風布花はウルフィンが現れたと推測し、手が震えてしまう。
「私が行かないと!」
しかし風布花は自身の戦士としての信念を胸に、クラスメイトが示した方向へ急ぐのだった。
「依乃里さん!」
「いのりっち!」
「雨幸ちゃん!桐菜ちゃん!」
依乃里は走りながら雨幸、桐菜と合流する。
「騒音を聞いた人からドアの軋むような音と狼の遠吠えような音が響くと聞きました。」
「いのりっち、これってもしかして……。」
「うん、悪い予感が当たるかも。」
そして三人はクリークが暴れる街中へと辿り着く。すると風布花が手を震わせながら立っていた。
「風布花ちゃん⁉」
「どうかしたんですか?」
「あぁ……!」
風布花は目の前にある光景に涙を浮かべていた。そして依乃里らもそれを見ると、そこにはクリークと数体のマリス、そして狼の怪物ウルフィンが暴れている光景があった。
「おやおや、よく来ましたねぇ。そこの少女は思った通り戦意を喪失してしまいましたよ。」
「クリーク!」
「やはり風布花ちゃんを精神的に攻撃しようとウルフィンを復活させたんですね!」
「絶対に許さない!」
依乃里、雨幸、桐菜の三人はクリークに対しこれまでにない程の怒りを覚え、フラヴァイスを持って構える。
「レオン!」
「ガー!」
そして依乃里はパッショネイトレオンに右手のルビーの指輪を翳し、獣人の姿に変える。
「バラ!ダイヤモンド!パソドブレ!」
「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」
「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」
三人がそれぞれ叫ぶとフラヴァイスから音声が響く。
「Let's Dance!」
「踊るよ!」
「踊ります!」
「踊っちゃうよ!」
三人はフラヴァイスから流れる音楽に乗せて踊る。次第に三人の体は戦士へとその姿を変えるのだった。
「情熱の舞姫、ローズレーザー!」
「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」
「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」
「情熱のメロディー、響かせてあげる!」
三人はそれぞれ名乗り、クリークらに立ち向かう。
「クリーク!このために林檎さんの店を襲ったの⁉」
「ええそうですよ!世界を侵攻させるために使えるものはとことん使う!僕は四年前の戦士を辿り、以前の悪の組織であるダークストーリーズについて調べました!そうしたらあの少女と絆を深め合ったという幹部がいるじゃありませんか!だからこそ僕はウルフィンを忠誠心の高い操り人形として復元したのです!」
「本当に最低!」
ローズレーザーはクリークに怒りをぶつける。そしてクリークも風布花の精神を揺さぶるためにウルフィンを復活させたと明かす。それがローズレーザーの怒りを更に高めていた。
「バイレ・デ・フローレス!」
「効きません!」
ローズレーザーはパッショネイトレオンとパソドブレを踊り、無数の薔薇の花びらを舞わせる。しかしクリークは余裕気な態度で攻撃を躱してしまう。
「ベリースラッシャー!」
「鋭刃の舞!」
ベリースパークラーとチェリーエッジはそれぞれ攻撃を決め、マリスを消滅させる。
「ゆっきー、ふぅちゃんがこれ以上傷つかない内にウルフィンを倒すよ!」
「はい、桐菜ちゃん!」
ベリースパークラーとチェリーエッジは風布花のために、早急にウルフィンを倒そうと立ち向かう。そして風布花は未だ足が竦んで動けずにいた。
「ウルフィン……!」
「敵に情が移ってしまう者に、戦士の資格なんてないのよ。」
風布花が悲しげにウルフィンを見つめていると、黒崎真理紗、上部芽里音、祭田美李宇の三人が現れる。
「真理紗さん!」
「やはり四年前の戦士はダメね。こんな精神でよくダークストーリーズを倒せたものだわ。」
「全くですわね。」
「本当、笑っちゃうね。」
真理紗らは風布花ら四年前の戦士を揶揄し、それぞれのパートナーのモンスターを呼び出す。
「ピューマ!」
「イーグル!」
「ゴリちゃん!」
三人はそれぞれパートナーに右手の指輪を翳し、獣人の姿に変える。そしてフラヴァイスを持って構える。
「パンジー!アメジスト!タンゴ!」
「マーガレット!アクアマリン!ワルツ!」
「ダリア!ラピスラズリ!サルサ!」
三人がそれぞれ叫ぶとフラヴァイスから音声が響く。
「Let's Dance!」
「踊るわよ!」
「踊りましょう!」
「踊っちゃおう!」
そして三人はそれぞれのパートナーと共に社交ダンスを踊り、戦士へとその姿を変える。
「魅惑の舞姫、ブラックチャーム!」
「優雅な舞姫、グレイスロード!」
「陽気な舞姫、フェスティブレイド!」
「魅惑のムーヴに、酔いしれなさい。」
三人はそれぞれ名乗り、戦いを始める。
「ダンサ・デ・エクスプロシオン。」
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」
ブラックチャームとジェントルピューマのタンゴが爆発を起こし、クリークとローズレーザーを巻き込む。
「真理紗、今日は本当に交戦協定を守る暇なんてないの!」
「問答無用よ。」
ブラックチャームは風布花の心情を察することもなく、ローズレーザーにも攻撃を仕掛ける。
「ま~た戦士同士で戦いますか。ここは一気にあの少女を叩きましょう。」
クリークはブラックチャームとローズレーザーが戦っている様子を見て呆れてしまい、風布花を集中的に攻撃しようと仕掛ける。
「ウルフィン、あの少女を始末しなさい!」
「承知しました、クリーク様。」
ウルフィンは淡々とクリークの命を受けると、ベリースパークラーとチェリーエッジを払い除け風布花の元まで跳ぶ。
「ふぅちゃん逃げて!」
「逃げて下さい!」
チェリーエッジとベリースパークラーは風布花に逃げるよう言う。しかしウルフィンは風布花の前まで来ていた。
「クリーク様の命により、貴様を始末する。」
「ウルフィン……。」
ウルフィンは風布花にそう言うと、風布花を跳ね飛ばす。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「風布花ちゃん!」
少し遠くまで跳ね飛ばされる風布花だったが、ウルフィンは尚も風布花を攻撃しようと歩み寄る。ローズレーザーも心配し風布花の名を叫ぶ。
「私は戦士です!」
ここで風布花は漸くフラヴァイスを手に取り開く。
「カーネーション!パール!チャールストン!」
「Let's Dance!」
「踊ってみせます!」
風布花はフラヴァイスから流れる音楽に乗せ、チャールストンを踊り戦士へと姿を変える。
「軽快な舞姫、レッドライテスト!軽快なステップに、ついて来られますか?」
戦士となったレッドライテストは名乗り、チャールストンを踊りながらウルフィンに立ち向かう。
「ウルフィン!あなたは誰かの言いなりになるような怪物ではなかったはずです!それにダークストーリーズは既に滅びました!目を覚まして下さい!」
「そんなものはまやかしだ。俺はクリーク様によって産み出された存在、それ以外の記憶などない。」
レッドライテストは戦いながらウルフィンに必死に呼びかけるが、ウルフィンにはクリークによって産み出される以前の記憶が残っていないためレッドライテスト言葉など響かなかった。そして上手く戦えないレッドライテストの首を掴み、地面に叩きつける。
「貴様のようなふざけたダンスを踊る戦士など、俺の敵ではない。クリーク様の命により、息の根を止めてやる。」
そしてウルフィンは鋭い爪を立て、レッドライテストに向かって一気に振り下ろす。
「エクスプロシオン・デ・フローレス!」
その瞬間、ローズレーザーとパッショネイトレオンのパソドブレが無数の薔薇の花びらを舞わせ、爆発を起こしてウルフィンを跳ね飛ばす。
「風布花ちゃん!」
「ふぅちゃん!」
ウルフィンを離した隙に、ベリースパークラーとチェリーエッジがレッドライテストを助け出す。
「おのれあと一歩の所でレッドライテストを亡き者にできたものを!」
クリークは寸前のところでレッドライテストを始末する邪魔が入ったことを嘆く。そんなクリークにブラックチャームがレーザー銃を向ける。
「あら、何か予定が狂ったのかしら?私達にとっては取るに足らないことだけれど。」
「流石はブラックチャーム、煽りますねぇ。」
ブラックチャームはクリークを挑発し、グレイスロードとフェスティブレイドに呼びかける。
「芽里音、美李宇、行くわよ!」
「宜しいですわ。」
「行っちゃおうか。」
そして三人はそれぞれのパートナーと社交ダンスを踊りながらクリークに攻撃する。
「チャーミングストライク。」
「ダンス・ド・セレナーデ。」
「スラッシュ・デ・フェスティバル!」
「くっっ……!」
三人の戦士と三体のモンスターの同時攻撃に、クリークも立つのが精一杯だった。
「一気に不利になりましたね。まぁいいでしょう、レッドライテストを叩くことなどいつでもできます。ここは一旦退きますよウルフィン!」
「はい、クリーク様。」
クリークはウルフィンを連れて人間界を去る。そして街から騒音が消え、戦士達は元の姿に戻る。
「うぅ……!」
「風布花ちゃん……。」
風布花は変わり果てたウルフィンに、皆が見守る中泣き崩れてしまうのだった。
「うわぁぁぁ~~~~ん!」




