第十九話 新たなる交戦協定?
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里はパートナーであるパッショネイトレオンと心を通わせ、再びダイヤモンドの戦士となった。そして本当の愛に目覚めた依乃里は、黒崎真理紗らと敵対することを決めるのだった。
「「「「かんぱ~い!」」」」
ある日、依乃里は仲間である蓮葉雨幸、新原桐菜、赤園風布花の三人と自身の家でホームパーティーをしていた。
「いや~、遂にいのりっちがまた戦士になることができましたな~。」
桐菜は依乃里が再び戦士になったことを感慨深く感じていた。
「本当ですね。しかもあの禍々しい姿のブラクスを撥ね退けるほどの力、凄かったです。」
「そうですね、レオンとの見事な社交ダンスによる連携攻撃は目を見張るものがありました。」
雨幸と風布花も再び戦士となった依乃里の強さに感心していた。それほどまでに依乃里の新しい戦士の力は凄まじかったのだ。
「みんなのおかげだよ、私が戦えない間も頑張ってくれて。」
依乃里は自身が再び戦士になれたのは雨幸達が戦ってくれていたおかげだと感謝する。しかしそんな嬉しいことと同時に、一つの不安要素も生まれていた。
「それにしても、あれでしっかり真理紗達と敵対したことになるんだよね?」
「うん……、真理紗とはちゃんと正面からぶつからなきゃいけないって思ったから……。」
桐菜は依乃里に、真理紗らと敵対したことを確認する。依乃里は真理紗との価値観や考え方の違いに決着をつけ、本当の意味で仲間になろうとしていた。しかし、雨幸、桐菜、風布花の三人は真理紗らと分かち合うことができると思えなかった。
「それで依乃里さん、真理紗さん達とは今後どういう付き合い方をされるんですか?」
「そうだよいのりっち、敵対するって言ったってまさか直接戦うわけじゃないでしょ?」
「そうだね……、どうしようか。」
風布花は依乃里に、真理紗らと今後の具体的な付き合い方について尋ねる。それは桐菜も気になっていたことだった。依乃里自身も、真理紗らとの具体的な敵対の仕方について深くは考えていなかった。少し悩みこむ依乃里の膝元に、パッショネイトレオンが座り込む。
「ガッ!」
「ふふっ、そうだねレオン。せっかくレオンと恋人同士になれたのにそんな浮かない顔をしてちゃダメだよね。」
パッショネイトレオンは悩む依乃里を励まそうとしていた。そんなパッショネイトレオンの気持ちに依乃里は嬉しくなる。
「ヒューヒュー、お熱いね二人共。」
「ちょっと茶化さないの。」
桐菜は依乃里とパッショネイトレオンの仲の良さを茶化す。依乃里とパッショネイトレオンは、依乃里が再び戦士となった日から愛を深め合っていた。
「依乃里さん、ちょっと羨ましいです。」
「雨幸ちゃん?」
雨幸はふと依乃里とパッショネイトレオンを見て羨んでいた。
「私、男の人が苦手で恋愛的な経験がないですから依乃里さんみたいにレオンのようなパートナーがいたらどうなのかなと……。」
雨幸は依乃里のような恋愛に対して憧れを持っていた。そんな雨幸に、風布花が助言を与えるように話す。
「それじゃあ雨幸さん、桐菜さんとかどうですか?」
「「え⁉」」
「……え?」
風布花の言葉に雨幸と桐菜の二人は驚いてしまう。
「私と、桐菜ちゃんがですか?」
「あれ、私何か変なことを言いました?」
雨幸は不思議そうな顔をして風布花に尋ねる。風布花は雨幸が驚くほどのことを言った感覚がなく、動揺してしまう。
「だってふぅちゃん、私もゆっきーも女の子だし恋愛とかする仲じゃなくない?」
「え……、あ、いや……、いいかなぁと思っていたんですけど……。」
風布花は桐菜に女同士の恋愛を否定され、少し口籠りながら話す。
「でも、恋愛にルールも常識もないでしょ。同性でも異性でも愛さえあればさ。」
「依乃里さん……。」
そんな風布花をフォローするかのように依乃里は話す。風布花は依乃里の言葉に嬉しくなるが、雨幸と桐菜は苦笑いしながら依乃里を見つめていた。
「な……、何二人共?」
「流石、レオンというモンスターと恋愛している依乃里さんが言うと説得力がありますね。」
「うん、モンスターもいいなら女の子同士でもいいかもって思っちゃうよ。」
雨幸と桐菜はパッショネイトレオンと愛し合っている依乃里の言葉に説得力を感じていた。そんな会話を交わす四人だったが、突然依乃里の携帯電話が鳴り響く。
「ん……、もしもし?」
「ごきげんよう桜間依乃里、今日は空いているかしら?」
「ま、真理紗⁉」
依乃里の電話の相手は黒崎真理紗だった。真理紗からの突然の電話に依乃里は驚いてしまう。
「ちょっと真理紗、どうして私の携帯の番号なんか知ってるの?」
「そんなことはどうでもいいわ。これから全員で私達の元に来て欲しいの。手荒な真似はしないから安心しなさい。」
真理紗は依乃里の質問など無視して話を続ける。そして全員で来て欲しいという旨を伝えるとすぐに電話を切ってしまう。
「切れた……。」
「真理紗さんからですか?」
「いのりっちの番号知ってるとかやばくない?」
「用件は一体何でしょうか?」
四人は真理紗からの招待を警戒する。
「とにかく行こう、ちゃんと真理紗達と話し合わなきゃ。」
「「はい!」」
「うん!」
四人は真理紗に会いに行くための準備をする。その途中、雨幸は足を滑らせてしまう。
「あいた!」
「うわ!」
雨幸は倒れ込み、桐菜に覆い被さってしまう。
「そ、双丘……!」
「ご、ごめんなさい桐菜ちゃん!」
桐菜は雨幸の豊満な胸を目の当たりにして頬を赤らめてしまう。そして同じく頬を赤らめる雨幸は慌てて体勢を戻す。
「二人共大丈夫?」
「だ、大丈夫です!」
「こっちも大丈夫だよ。」
依乃里は倒れ込む二人を心配する。そして四人は真理紗の待つ元へ向かうのだった。
一方その頃、ダークサイレンスではブラクスが再び戦士となったローズレーザーに敗れたことを悔やんでいた。
「くそっ。ローズレーザーの奴め、強くなりやがって。」
「ええ。それにあのライオンとの連携、ますますこちら側の脅威となるでしょう。」
ローズレーザーの強さを嘆くブラクスの言葉に、クリークも共感していた。そんな中、ノイジアスの声が響く。
「ローズレーザーの復活、確かに厄介だな。」
「その声は、ノイジアス様!」
ノイジアスの声を聞いたブラクスとクリークは咄嗟に跪く。
「申し訳ありませんノイジアス様!ノイジアス様の力をお借りしながらローズレーザーに敗北してしまい……!」
ブラクスは必死にノイジアスに詫びる。しかしノイジアスはブラクスを責めなかった。
「まだダークサイレンスの力が消滅した訳ではない。まだ力はたっぷりある。これからゆっくりと侵攻を進めれば良いさ。」
ノイジアスはブラクスの敗北を気に留めず、人間界の侵攻に対して前向きだった。それ故にノイジアスには気になって仕方がないことがあった。
「あとの問題は、未だ働く気概を見せないあいつだな。」
「「あ……。」」
ノイジアスの言葉にブラクスとクリークは苦笑いしながら、大きないびきを搔きながら寝ているスノアに目を配る。
「んがぁ〜。」
「怠慢、それもまた立派な人間の悪意か。ある意味であいつは悪意の権化として一番成り立っているのかも知れないな。」
「申し訳ございません、ノイジアス様。」
ノイジアスはスノアがダークサイレンスの幹部としての在り方を一番体現しているのではないかとある意味で感心する。しかしダークサイレンスとしてスノアの態度が目に余るものであることもまた事実だった。
「まあいい、またあいつに人間界の侵攻を任せろ。手段は選ばん。」
「「はっ!」」
ノイジアスはスノアに人間界の侵攻を任せることを決める。それに頷いたブラクスとクリークを前に、ノイジアスの声は途絶えるのだった。
「……ったく、またスノアを行かせるのかよ。」
「まず彼を起こすという手間が発生するのも考えものですね。」
ブラクスとクリークはノイジアスの命に愚痴を溢しながらスノアを起こす。
「おいスノア、またお前が人間界に行くんだとよ。」
「また〜?めんどくさい〜。」
「面倒でもやるのです。やらなければ僕達ダークサイレンスの野望は達成できません。」
「しょうがないな〜。」
スノアはブラクスとクリークから侵攻の命を聞き、またも気怠そうにしながら人間界へと赴くのだった。
一方、真理紗に呼ばれた依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は真理紗、そして彼女の仲間である上部芽里音と祭田美李宇のいる大きな屋敷を訪れていた。七人は大きなテーブルを挟み、煌びやかなドレスに身を包み豪華な食事を共にしていた。
「どう?私達のおもてなし、お気に召したかしら?」
「うん……、ありがとう……。」
依乃里は困惑しながら真理紗の言葉に受け答えをする。依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人は未だ真理紗が自身らを招いた理由について話さないことを警戒していた。
「さて、そろそろ本題に入ろうかしらね。」
「うん!本題を話して。」
そして真理紗は漸く本題を話そうとする。依乃里は待ちくたびれたように真理紗に本題を迫る。
「あなた達を呼んだのは他でもない、本日より私達とあなた達は交戦協定を結ぶわ。」
「「「「はい?」」」」
真理紗の言葉に、四人は思わず同時に首を傾げる。
「わからなかったかしら?そもそも私達と敵対する意思を見せたのは桜間依乃里、あなたの方よ。」
「それはそうなんだけど……。」
「停戦協定や休戦協定ならわかるんですけど……。」
「つまり戦うための協定ってこと?」
「聞いたことのない日本語でしたので少し理解に苦しみました……。」
四人は真理紗の言う交戦協定の意味を理解したところで、真理紗がそれを提示してきた理由がわからなかった。
「私は曖昧なものを好まないわ。今までは仲間にならずとも桜間依乃里がダークサイレンスを倒しさえすればいいと思っていた、けれどそれで桜間依乃里が納得しないというのなら敵対するしかないわね。」
「こんな言葉遣いはあまりしたくありませんけど、俗に言う『売られた喧嘩は買う』ということですわね。」
「ま、面倒くさいけどこのままじゃダークサイレンスは倒せないっぽいし仕方がないよね~。」
真理紗、芽里音、美李宇の三人はあくまで依乃里の意思を尊重するかのような口振りで話す。しかし依乃里の本心は真理紗らの主張とは少し違うものだった。
「真理紗、確かに私はあなたに牙を剥くと話した。でもできれば無駄な争いは避けたいかなって……。」
「私に銃口を向けておいて、よく言うわね。」
「それは……。」
依乃里はあくまでも真理紗との和解を望んでいた。しかし真理紗に銃口を向けた依乃里には弁解の余地などなかった。
「あなたも私達とわかり合えないと感じたから武力を行使するしかない、そう考えたのではなくて?」
「確かにそうだけど……。」
真理紗にそう言われた依乃里は、言い返すことができなくなってしまう。
「だったらあなたも覚悟を決めなさい。世界の命運は私達に懸かっている、そのことを肝に命じておきなさい。」
「うん……。」
真理紗は最後にそう言うと、芽里音、美李宇を連れてその場を離れる。そして一同が囲んでいた食卓も大きな屋敷も全て消滅し、依乃里ら四人も煌びやかなドレスから普段の服装に戻る。
「交戦協定、か……。」
「向こうもかなり乗り気だったね、いのりっち……。」
「でも、私達が本当に力を合わせられるようになるまでの辛抱ですね。」
「はい、ダークストーリーズの時も全員で力を合わせて戦うことができましたし、きっと今回も上手く行きます。」
依乃里ら四人は真理紗らと交戦協定を結んだことに憂鬱な気持ちだった。それは今後、真理紗らと戦場で会う度に戦わなければならないという戦いの負担が増す選択である。しかし四人はいずれ真理紗らとダークサイレンスを倒すための一つの壁として、前向きに考えることにするのだった。
「じゃあ、今日はもう帰ろうか。」
「そうですね。」
「そうだ、私もこれから稽古だった。」
「大変ですね、桐菜さん。」
そして依乃里らもこの日は解散するのだった。
それから数日、スノアは人間界を訪れていた。スノアは欠伸をしながら人間界をうろうろと彷徨い歩く。
「ふわぁ~あ、全くノイジアス様も勝手だなぁ。この僕が人間界の侵攻なんて面倒臭くて嫌いなことを知っているくせに……。」
スノアはそう呟きながら歩く。すると街中で爆音を響かせながら走る暴走族の姿があった。
「いやっほー!」
「お前ら、このまま突っ切るぞ!」
「「「「へい!」」」」
暴走族は周りの迷惑を気にせず爆速で走る。その様子にスノアは微笑む。
「いいねぇあの姿、正に悪意の塊だよ。」
スノアはそう言うと空高く飛び上がり、暴走族の前に立ちはだかる。
「やあ君達、中々いい趣味してるね。」
「あぁ⁉俺達は誇りを持って飛ばしてんだよ、文句あっか!」
スノアは暴走族の総長と思われる男に対し煽るように話す。そして男が煽りに乗るように答えると、スノアは更に微笑む。
「その周りを顧みない悪意、存分に使わせてもらうよ。」
スノアはそう言うと暴走族全員に黒いオーラを放つ。そして暴走族が黒いオーラに包まれるとその中からマリスが産み出される。
「ひぃふぅみぃ……、ざっと十体はいるかな。」
産み出されたマリスは暴走族の人数分いるので、十体以上は存在していた。
「これだけあれば文句ないでしょ。」
スノアはそう言いマリスを連れて街へ繰り出す。そして街には大きないびきのような騒音が響き渡る。
「うおぉぉぉぉぉ!何じゃこの騒音は!」
「総長、俺達の出す音の比じゃありやせん!」
マリスを産み出した暴走族もスノアの騒音に倒れこんでしまう。
「あ~あ、うるさい音を出す人達が騒音にやられるなんてお笑いものだね。」
スノアは暴走族に対して皮肉を言いながら街中へ向かうのだった。
「みんな、またマリスが現れたよ!」
「「はい!」」
「オッケー!」
依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人、そしてルビーの指輪で獣人の姿と化したパッショネイトレオンはマリスの出現を知り、街へ向かう。そして向かった先にはいつもより大人数で暴れるマリスとスノアの姿があった。
「スノア、こんなにいっぱいマリスを産み出したの⁉」
「気怠そうにしてる割にはしっかりやりますよね!」
「本当迷惑!」
「何体産み出そうと、私達が倒してみせます!」
四人はスノアにそう言うとフラヴァイスを持って構える。
「バラ!ダイヤモンド!パソドブレ!」
「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」
「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」
「カーネーション!パール!チャールストン!」
四人がそれぞれ叫ぶと、フラヴァイスから音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊るよ!」
「踊ります!」
「踊っちゃうよ!」
「踊ってみせます!」
フラヴァイスから流れる音楽に合わせ依乃里とパッショネイトレオンはパソドブレを共に踊り、他の皆もそれぞれダンスを踊る。そして四人は戦士へとその姿を変える。
「情熱の舞姫、ローズレーザー!」
「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」
「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」
「軽快な舞姫、レッドライテスト!」
「情熱のメロディー、響かせてあげる!」
「軽快なステップに、ついて来られますか?」
四人はそれぞれ名乗り、スノアを煽る。
「久々に四人で名乗れたね。」
「依乃里さんが復活したおかげです。」
「そっちで勝手に盛り上がらないでもらえるかなぁ!」
四人は依乃里が戦士として復活してから初めて四人で名乗ることができたことを嬉しく感じる。そんな四人にスノアは苛立ち、マリスを使役して攻撃を始める。
「みんな行くよ!」
そして四人とパッショネイトレオンを含めた五人もマリスに立ち向かう。
「「はぁぁ!」」
ベリースパークラーとチェリーエッジはそれぞれ剣と鉄扇を持ち、同時に複数のマリスをダンスの動きで蹴散らす。
「レオン、行くよ!」
「ガー!」
ローズレーザーはパッショネイトレオンと共にパソドブレを踊り、マリスに攻撃を仕掛ける。
「バイレ・デ・フローレス!」
そして無数の薔薇の花びらを浴びせ、マリスを蹴散らすのだった。
「はぁぁ!」
レッドライテストは軽快なチャールストンのステップでスノアを攻めたてる。
「くっっ……!今日はいつにも増して本気を出して来るじゃない?」
スノアはレッドライテストの攻撃に本気を感じていた。
「当たり前です!早くあなた達を退かせておかないと面倒なことに……。」
「何が面倒なことなのかしら?」
レッドライテストはダークサイレンスを退けることに焦っていたようだった。そんな一同の前に、真理紗、芽里音、美李宇の三人が現れる。
「ゲッ……!」
「やはり来てしまいました……。」
チェリーエッジとベリースパークラーは三人の出現に苦い顔を浮かべる。
「ダークサイレンスを倒すと同時に、交戦協定に基づきあなた方を攻撃させて頂くわね。」
真理紗がそう言うと、三人はそれぞれパートナーのモンスターであるジェントルピューマ、エレガントイーグル、チアフルゴリラを呼ぶ。
「ピューマ!」
「イーグル!」
「ゴリちゃん!」
三体のモンスターが駆けつけると、三人はそれぞれ右手に嵌めている指輪を翳す。そして三体のモンスターが獣人の姿になると三人はフラヴァイスを一斉に開く。
「パンジー!アメジスト!タンゴ!」
「マーガレット!アクアマリン!ワルツ!」
「ダリア!ラピスラズリ!サルサ!」
三人がフラヴァイスにそれぞれそう叫ぶと、フラヴァイスから音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊るわよ!」
「踊りましょう!」
「踊っちゃおう!」
そして三人はフラヴァイスから流れる音楽に合わせそれぞれのパートナーと社交ダンスを踊り、戦士へとその姿を変えるのだった。
「魅惑の舞姫、ブラックチャーム!」
「優雅な舞姫、グレイスロード!」
「陽気な舞姫、フェスティブレイド!」
「魅惑のムーヴに、酔いしれなさい。」
三人はそれぞれ名乗ると、スノアやマリスの元に行かずローズレーザーらを攻撃する。
「ちょっと真理紗!私達と戦うより先にマリスを倒すべきでしょ!」
「あら、マリスなんて私達が手を下すまでもないわ。それよりもあなた方の本気を見せてもらうわね。」
ブラックチャームはジェントルピューマとタンゴを踊りながらローズレーザーを攻撃する。ローズレーザーは先にマリスを倒すべきだと言うが、ブラックチャームは聞く耳を持たなかった。
「レオン!」
「ガー!」
ローズレーザーは慌ててパッショネイトレオンの手を引き、パソドブレを踊りながら迎え撃つ。
「はぁぁ!」
ローズレーザーとブラックチャーム、二組の社交ダンスが激しくぶつかり合う。
「中々情熱的なダンスね桜間依乃里、嬉しいわ。」
「だったら無駄に争いたくないんだけどなぁ!」
ブラックチャームはローズレーザーと戦いながら、ローズレーザーのダンスを嬉しく感じる。しかしローズレーザーはそう言いながら攻撃を続けるブラックチャームに苛立つ。
「「はぁぁ!」」
グレイスロードはエレガントイーグルとワルツを踊りながらベリースパークラーのベリーダンスと激しくぶつかる。
「その妖艶な腰つき、つい魅入られてしまいますわ。しかし私の優雅な舞いには敵いませんことよ。」
「私はダンスの腕を競うために戦っているんじゃないです!」
グレイスロードもベリースパークラーと戦いながらダンスの腕前に感心する。しかしそれもベリースパークラーにとっては挑発に過ぎなかった。
「よっと!」
「あぁ〜もう!」
フェスティブレイドはチアフルゴリラと踊る陽気なサルサの動きでチェリーエッジを攻撃する。チェリーエッジの日本舞踊の動きはフェスティブレイドのダンスと相性が悪かった。
「流石は家元の子だよね。でもそのダンスじゃ私には勝てないよ。」
「うるさい!勝敗をつける気なんてないんだから!」
フェスティブレイドはチェリーエッジの舞いに感心するが、こちらも挑発にしかならなかった。
「何あれ?戦士同士でどうして戦っているのさ。」
「こっちにはこっちの事情があるんです!いいからさっさと人間界から立ち去って下さい!」
戦士同士で戦っている状況に疑問を感じるスノアだが、レッドライテストは焦るようにスノアを退けようと攻撃する。
「必殺、ワイルドステップ!」
「くっっ……!」
そしてレッドライテストは一気に攻撃を仕掛け、残っているマリスを全て消滅させる。やがて街には騒音が消え、平穏が訪れる。
「ふぅ、マリスがみんなやられちゃったよ。まあいいか、こんなカオスな状況は好きじゃないしね。」
スノアは全てのマリスを倒されてしまったが、特に悔しがることもなく戦士同士が戦っている状況に嫌気が差し人間界を立ち去る。そして街に平穏が訪れた後も戦士達は戦いを続けていた。
「皆さん、ダークサイレンスは立ち去りました!これ以上の戦いは無意味です!」
レッドライテストは戦いを続ける戦士達に、必死に呼び掛ける。
「あ、はい!」
「そうだね!」
ベリースパークラーとチェリーエッジはレッドライテストの言葉で戦いをやめようとする。
「ちょっと、戦いはもう終わり!」
「もうここは戦場ではありません!私達が戦うのはあくまで戦場だというのが交戦協定のはずです!」
「ふぅ……、確かにそうですわね。」
「ま、私も無駄な体力を消耗したくないしね。」
ベリースパークラーとチェリーエッジの呼び掛けで、グレイスロードとフェスティブレイドも戦いの手を止める。しかしブラックチャームとローズレーザーは未だ戦いを続けていた。
「ねぇ真理紗、もう疲れちゃったから帰ろうよ。」
「これ以上戦っても決着が着かなそうですわよ。」
グレイスロードとフェスティブレイドがブラックチャームに戦いをやめるよう呼び掛ける。
「そう、そろそろ引き時かしらね。」
「やっと終わる〜。」
ブラックチャームもグレイスロードとフェスティブレイドの呼び掛けで戦いの手を止める。そしてローズレーザーも不毛な戦いが終わると感じ、力が抜けてしまう。
「全くこの前の威勢もただのハッタリのようね桜間依乃里、私達と本当の仲間になるまで敵対するとか言っておいてその程度なのかしら?」
「え……?」
ブラックチャームはローズレーザーを煽るように言い放つ。それは本気でブラックチャームらを仲間にしたいと考えるローズレーザーにとって挑発するには十分なものだった。
「真理紗、やっぱり前言撤回。わかり合うまでとことん戦おうじゃない!」
「そう、本気になってくれたようね。気の済むまで相手をしてあげるわ。」
ローズレーザーは目を鋭くし、ブラックチャームを睨みつける。その威勢にブラックチャームは微笑み、二人は銃口を向け合う。
「行くわよピューマ。」
「ごめんレオン、もうちょっとだけ付き合って!」
「ガー!」
そしてローズレーザーとブラックチャームはそれぞれのパートナーと共に互いにぶつかる。
「ちょっといのりっち?」
「どうしたんですか?」
「ダメです、今の依乃里さんは完全に真理紗さんに挑発されています。」
チェリーエッジ、ベリースパークラー、レッドライテストの三人がローズレーザーを落ち着かせようと呼び掛けるが、ローズレーザーには全く声が届かなかった。
「真理紗も物好きだよねぇ。そんなにあのおばさんが良いのかな?」
「桜間依乃里はダイヤモンドの指輪の戦士、彼女を無下にできないのも真理紗の苦悩ですわ。」
フェスティブレイドとグレイスロードはブラックチャームの戦いを見守っていた。
「バイレ・デ・フローレス!」
「ダンサ・デ・エクスプロシオン。」
ローズレーザーとブラックチャーム、二人の攻撃が激しくぶつかり、大きな爆発をあげてしまう。
「このままではまずいです!」
「早く止めないと!ゆっきー手伝って!」
「はい!」
二人の戦いを見かねたチェリーエッジとベリースパークラーは戦いを止めようと急ぐ。
「ちょっとベタなネーミングだけど、桜吹雪の舞い!」
「ベリーフラッシャー!」
チェリーエッジとベリースパークラーはローズレーザーとブラックチャームの間に入る。そしてチェリーエッジは桜の花びらを舞わせ、ベリースパークラーは眩い光をブラックチャームに浴びせる。
「くっっ……、まさかそっちが目くらましなんて姑息な手を使うとはね。」
「桐菜ちゃん、雨幸ちゃん?」
「いのりっち、いい加減戦いを終えるよ。」
「今の内に行きましょう。」
チェリーエッジとベリースパークラーはブラックチャームの目を眩ませている内にローズレーザーとパッショネイトレオンを連れて逃げる。そしてブラックチャームの前から眩い光と桜の花びらが消えると、そこに戦士達の姿はなかった。
「そう、今日はこの辺でというわけね。」
ブラックチャームは真理紗の姿に戻りそう呟く。
「私達もそろそろ帰ろうよ、真理紗。」
「そうですわ。」
同じく元の姿に戻った美李宇と芽里音が真理紗にそう声を掛ける。
「そうね、まだまだ彼女らと巡り合う機会なんてあるのだから焦る必要なんてないわ。」
真理紗もまた依乃里らに会うことを期待し、芽里音と美李宇と共に帰るのだった。




