第十八話 情熱的に手を取り合って
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里のパートナーであるパッショネイトレオンは恋心を抱きつつある依乃里と会えない寂しさからパッショネイトレオンは失踪し、街中で暴れてしまう。仲間達と共に必死にパッショネイトレオンを探す依乃里。そんな中、依乃里がダークサイレンスを倒す切り札になることを知った幹部ブラクスは謎のパワーアップを遂げるのだった。
ブラクスの放つ黒いオーラに吹き飛ばされてしまう六人の戦士と三人の獣人。その力は今までに感じたことのないものだった。
「あのブラクスの力、何なの?」
チェリーエッジはブラクスの力に疑問を抱く。しかしブラックチャームにはその力の正体に察しがついていた。
「恐らくあれはダークサイレンスのトップ、ノイジアスの力よ。」
「ノイジアス?」
「ダークサイレンスのトップの力?」
ブラックチャームの言葉にベリースパークラーとレッドライテストも耳を疑う。
「ええ。この強大な力に禍々しい姿、ノイジアスの力が付与されたとしか考えられないわ。」
「それが本当なら、桜間依乃里の力が必要になって来ますわね。」
「まさかこんなところで……。」
グレイスロードとフェスティブレイドも事態の深刻さに焦りを感じていた。
「随分と酷い有り様だなぁ。そろそろ止めと行くか!」
ブラクスは戦士達が倒れ込んでいるのを見て勝機を見出す。そして勢い良く構え、攻撃の態勢に入る。
「うおぉぉぉ!」
ブラクスが攻撃を仕掛けようとした瞬間、突然ブラクスは調子を崩してしまう。
「うおっ⁉」
ブラクスの体から黒いオーラが消え、ブラクスは元の姿に戻ってしまう。
「今よ!」
ブラックチャームはブラクスの隙を突いて黒いレーザー銃を召喚する。そして消耗する体力の中、必死にブラクスに向ける。
「チャーミングストライク!」
「ぐぅぅ……!」
ブラックチャームの必死の銃撃によってブラクスは押されてしまう。
「……どうやらこの力、まだ使いこなせないらしいな。ここは一旦退くか。」
ブラクスはそう言って人間界を去る。そして街に静けさが戻り、戦士達は皆元の姿に戻る。
「ふぅ……、万事休すとなるところだったわね。」
ブラックチャームから戻った黒崎真理紗はそう言って胸を撫で下ろす。
「真理紗、これからいかがされますこと?」
「そうだよ真理紗、私達も悠長に構えている状況じゃなくなってきたじゃん。」
「わかっているわ。」
グレイスロードから戻った上部芽里音、フェスティブレイドから戻った祭田美李宇は真理紗に尋ねる。二人もブラクスが強くなったことに焦りを感じていた。
「今は桜間依乃里に希望を託すしかないの。それまで私達がどうすることもできないわ。」
真理紗はそう言って芽里音、美李宇を連れて行こうとする。しかし真理紗の言葉にチェリーエッジから戻った新原桐菜は怒りを覚え、真理紗を引き留める。
「ちょっと真理紗。」
「何かしら?」
「自分達がダークサイレンスを倒すとか言っておいて、結局いのりっちに頼ってるだけなの?自分達で何とかしようと思わない訳?」
「出来ることならしたいわ。でも桜間依乃里がいないと状況を打破出来ないのは変えられない事実よ。」
桐菜は真理紗の依乃里に頼る態度が気に入らなかった。そのことを責めるが、真理紗はあくまで依乃里の力がなければ何も出来ないということを客観的に判断しているようだった。
「真理さん、桐菜ちゃんの言いたいことはそんなことじゃないはずです。」
ベリースパークラーから戻った蓮葉雨幸もそう言って真理紗を引き留める。
「何も出来ないとかじゃなくて、正義の味方なら何かしようと動くはずです。勝てない相手でも、果敢に立ち向かうはずです。」
「それは、私も同じ考えです。」
雨幸は桐菜が真理紗に対して、正義の味方として欠落しているような意識を責めていることを代弁する。それにはレッドライテストから戻った赤園風布花も同意していた。
「真理紗さんの考えは自分勝手だと思っていました。依乃里さんの力を必要としていながら依乃里さんや私達と共に戦おうとしない。失礼ですが、それが私達と分かち合えないということの最大の理由だと思います。」
風布花も真理紗にそう言い聞かせる。しかし真理紗の返す言葉は雨幸、桐菜、風布花の三人の予想を遥かに上回る冷酷さだった。
「……一丁前に正義の味方なんてものを語らないでくれるかしら?悪意の塊のくせに。」
「はい?」
真理紗の言葉に、三人は耳を疑う。そして真理紗の言葉に同意するように、芽里音と美李宇も語り出す。
「あなた方は真理紗の孤独を知りません。だから真理紗を一方的に責めるようなことがいえるのですわ。」
「そうそう、真理紗がどんな気持ちで戦ってきたか知らないくせに好き勝手言っちゃってさ。」
「そんな……。」
芽里音と美李宇の真理紗を庇って一同を責める言葉に、雨幸もショックを受ける。
「そういうことよ。自分達が常に正しいとは思わないことね。今は取り敢えず、桜間依乃里が再び戦士となるのを待つしかないの。」
真理紗は最後にそう言い残し、芽里音と美李宇と共に消えるのだった。
「真理紗……。」
桐菜は真理紗の言葉に少し悲しさを覚えていた。しかしそんな桐菜に四年前のガーネットの戦士である三浦竹月が声を掛ける。
「お気にすることはありません。桐菜さんも皆さんも、正しいことをしているのですから。」
「つっきー、ありがとう。」
竹月はそう言って桐菜を励ます。そして四年前のペリドットの戦士であるリーナ・ジーニアスとラピスラズリの戦士である実・ファンタジアはとある過去を思い出していた。
「黒崎真理紗、彼女らを見ていると私達が同じように他の戦士と衝突していた時のことを思い出します。」
「そうだね、あの時もこんな感じだったのかな?」
リーナと実は過去に他の戦士と衝突していたことを思い出していた。
「あの時はエメラルディア様の考えと私達の考えがすれ違っていましたから。きっと真理紗さん達とも同じように和解出来るといいのですが……。」
風布花も同じように衝突していた過去を振り返り、真理紗らともいずれ和解出来ることを望むのだった。
一方その頃、ダークサイレンスの本拠地に戻ったブラクスは自身に宿った強大な力のことをクリークに話していた。
「おいクリーク、俺に凄く強い力が!」
「わかっています。恐らくあれはノイジアス様のお力添えかと。」
「マジかよ……。」
クリークも真理紗と同じくブラクスに突然宿った強大な力がノイジアスの力によるものだと考えていた。そしてそんな二人に、またしても謎の声が話し掛ける。
「ブラクス、俺の力はどうだったかな?」
「ノイジアス様!」
「やはりあなたのお力でしたか。」
ブラクスとクリークは跪き、頭を下げる。その謎の声の主こそがダークサイレンスのトップ、ノイジアスだった。
「まだまだ力を使いこなすには時間が掛かるようだが、これがあれば指輪の戦士を倒すことなど造作もないことだ。」
「ありがとうございます。このお力、存分に使わせていただきます。」
ブラクスはそう言って再び人間界へと赴くのだった。
「レオ~ン!」
一方、依乃里は未だパッショネイトレオンを探していた。街はパッショネイトレオンの暴れた跡で溢れ返っていた。
「そこかしこにレオンが暴れたのはあるのに肝心のレオンが見つからない、どうしよう……。」
依乃里はパッショネイトレオンが見つからないことに焦りを感じていた。
「レオンに話さないといけないことがあるのに、このままレオンとずっと会えなかったら……。」
依乃里はパッショネイトレオンと会えないことを考え、絶望を感じていた。
「お~い!依乃里ちゃ~ん!」
そんな依乃里に、四年前のダイヤモンドの戦士である桜名美姫が呼び掛けながら駆け寄る。
「美姫さん……。」
「レオンはどう?見つかった?」
「いいえ、全然見つからないです。」
「そっか……。」
美姫は依乃里がパッショネイトレオンを探していることを聞き、心配していた。そして依乃里と美姫の元に四年前のアクアマリンの戦士である水原夜衣魚、アメジストの戦士である鈴木林檎も駆けつける。
「美姫さん!依乃里ちゃん!」
「ここにいましたか。」
「夜衣魚ちゃん、林檎ちゃん。」
夜衣魚は駆けつけるなり依乃里に深々と頭を下げる。
「ごめん依乃里ちゃん!」
「え?」
依乃里は夜衣魚が突然謝ってきたことに戸惑う。
「私が依乃里ちゃんが誘うようなことをしなかったらこんなことには……。」
「まあ誘うっていうか、強引なお持ち帰りだけどね。」
「そんな、私が戦いのことやレオンのことを忘れたいって思ってたんですから私の責任です。」
依乃里は謝る夜衣魚を責めなかった。依乃里はずっとパッショネイトレオンに対する自責の念に駆られていた。
「私、ずっとプレッシャーに駆られていたんです。戦士として戦うことも、私が特別なダイヤモンドの戦士であることも、レオンとのことも。」
依乃里はそう語りながらポロポロと涙を流す。
「依乃里ちゃん……。」
美姫は依乃里を心配そうに見つめる。
「最低ですよね、私って。戦いのことからもレオンのことからも逃げて街中に迷惑を掛けて、こんな私が戦士になったって世界なんか守れるはずないのに!」
「依乃里ちゃん!」
語るにつれ声量が上がり、自暴自棄気味に話す依乃里を美姫が一喝する。
「戦いから逃げたいなんて、そんなの当然じゃん。本当は戦いなんてない方がいいんだから。大事なのは今の依乃里ちゃんの気持ちだよ。依乃里ちゃんはレオンのことをどう思ってるの?」
「レオンのこと……?」
美姫は依乃里が今、パッショネイトレオンに対してどんな想いを抱いているのかが大事だと説き、依乃里に今の気持ちを尋ねる。
「レオンはドスケベで手が付けられないくらいやんちゃですけど、一途に私のことを想ってくれている大事なパートナーです。」
「うん、それだけで充分だよ。その気持ちをレオンにちゃんと伝えて。」
「はい……。」
美姫の言葉で、依乃里は少し落ち着きを取り戻す。そして美姫の携帯電話に着信が入る。
「もしもし?」
「美姫さん、今って依乃里ちゃんと一緒ですか?」
「輝弓君。」
電話の相手は四年前のサファイアの戦士、浦賀輝弓だった。
「こちらパッショネイトレオン捕獲隊、無事に取り押さえることが出来ました!」
「ありがとう輝弓君。」
美姫は輝弓に礼を言う。輝弓もずっとパッショネイトレオンを探し、パッショネイトレオンの動きを止めることに成功したのだ。
「輝弓君がレオンを見つけてくれたって。」
「やるじゃん!」
「良かったです。」
美姫の報告を受けて夜衣魚と林檎も安心する。
「依乃里ちゃん、行こう。」
「はい!」
そして依乃里もパッショネイトレオンに想いを伝える決意を固め、美姫達と共にパッショネイトレオンの元に向かうのだった。
「レオンを捕まえたって本当ですか⁉」
「ええ、たった今連絡が入りました。」
「いのりっちも向かってるんだよね?」
「はい、私達も参りましょう。」
一方、パッショネイトレオンの動きを止めたという連絡を受けた雨幸、桐菜、風布花、リーナ、実、竹月の六人も急いで向かっていた。
「今度こそ、依乃里さんが再び戦士になれるんですね!」
風布花も依乃里が戦士になることへの希望に思いを馳せながら走っていた。しかしそこにまたしてもブラクスが立ちはだかる。
「思い通りにはさせないぜ。」
「ブラクス!」
「どいてよ邪魔!」
ブラクスは依乃里が再び戦士になることを危惧し、阻止するつもりだった。
「お前らが向かっている方に行けばローズレーザーが戦う術を完全に失くすことが出来る訳だな。」
「そんなことはさせません!」
雨幸、桐菜、風布花の三人はフラヴァイスを持って構えるのだった。
依乃里、美姫、夜衣魚、林檎の四人はパッショネイトレオンの元へと駆けつける。
「来たか!」
「レオンはここです!」
「桃井!依斧君も!」
駆けつけた先には輝弓の他、四年前のルビーの戦士である桃井剣二、シトリンの戦士である金山依斧もいた。
「中々骨が折れたが、取り敢えずこの通りだ。」
剣二はそう言ってパッショネイトレオンが入っているケージを見せる。
「レオン……。」
依乃里はパッショネイトレオンとの再会に涙を浮かべていた。
「それじゃあ依乃里ちゃん、レオン君をケージから出すけど良い?」
「はい、お願いします!」
輝弓は依乃里にパッショネイトレオンをケージから出すことを確認する。それほどパッショネイトレオンは慎重に扱わなければならないものだった。そして覚悟を決めた依乃里は輝弓に勢いよく返事をする。
「じゃあ行くよ!」
輝弓はそう叫んでパッショネイトレオンが入っているケージを開く。その瞬間、街に騒音が響き渡る。
「うっ……!」
「ダークサイレンスか……!」
「こんなところで……!」
その場にいた依乃里以外の者は耳を塞いで倒れ込んでしまう。
「ガー!」
そしてケージから解放されたパッショネイトレオンはまたしても逃げ出してしまう。
「レオン!でもみんなが……!」
「行って依乃里ちゃん!レオンに想いを伝えられるのは依乃里ちゃんだけなの!」
「美姫さん……!」
依乃里はすぐさまパッショネイトレオンを追いかけようとするが、倒れ込んだ皆を心配して躊躇ってしまう。そんな依乃里に美姫が背中を押す。そして依乃里はパッショネイトレオンを追いかけるのだった。
一方、雨幸、桐菜、風布花の三人はそれぞれベリースパークラー、チェリーエッジ、レッドライテストに姿を変えブラクスと戦っていた。
「ベリースラッシャー!」
「鋭刃の舞!」
ベリースパークラーとチェリーエッジは同時に攻撃を仕掛けるが、ブラクスは両手で軽々と受け止めてしまう。
「どうした?これで本気のつもりか?」
ブラクスは煽るように言うと二人を投げ飛ばす。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」
「雨幸さん!桐菜さん!」
レッドライテストは二人の名を叫び、一人でブラクスに立ち向かう。
「はぁぁ!」
レッドライテストは軽快なチャールストンの動きでブラクスを攻め立てるが、それでもブラクスには通じなかった。
「何だこの眠いダンスは?」
ブラクスはそう言ってレッドライテストを蹴り飛ばす。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
「風布花ちゃん!」
レッドライテストも悲鳴を上げて吹き飛んでしまう。
「これでお前達も終わりだなぁ、そろそろ行くか!」
ブラクスは意気揚々にそう言うと右手を高らかに挙げる。
「ノイジアス様、再び我に力を!」
ブラクスがそう言うと、またしても黒いオーラに包まれ禍々しい姿になる。
「またブラクスが……!」
「ノイジアスの力で……!」
ベリースパークラー、チェリーエッジ、レッドライテストの三人はブラクスの姿に目を見張る。
「さあ、指輪の戦士の最期だ。」
ブラクスはそう言って三人にゆっくり近づく。すると小さなモンスター状態のジェントルピューマ、エレガントイーグル、チアフルゴリラの三体がブラクスに攻撃する。
「またこいつらか。」
しかし三体の攻撃もブラクスにとっては虫に気を散らされる程度だった。そして三体のモンスターがブラクスの気を散らしている間に真理紗、芽里音、美李宇の三人がチェリーエッジらの側に現れる。
「真理紗……!」
「勘違いしないでもらえるかしら?私達は別にあなた達を助けた訳じゃない。ただブラクスを倒すのに頭数が必要なだけよ。」
真理紗はあくまでも助けたつもりはないと話し、芽里音、美李宇と共にパートナーのモンスターの名を呼ぶ。
「ピューマ!」
「イーグル!」
「ゴリちゃん!」
三人に呼ばれたモンスター達はそれぞれのパートナーの手の平の上に乗る。そして真理紗らが右手の指輪を翳すと三体のモンスターは獣人の姿になる。
「行くわよ、芽里音、美李宇。」
「ええ。」
「うん!」
真理紗の言葉と共に、三人はフラヴァイスを開く。
「パンジー!アメジスト!タンゴ!」
「マーガレット!アクアマリン!ワルツ!」
「ダリア!ラピスラズリ!サルサ!」
三人がフラヴァイスにそれぞれ叫ぶと、フラヴァイスから音声が響く。
「Let's Dance!」
「踊るわよ!」
「踊りましょう!」
「踊っちゃおう!」
そして三人はそれぞれのパートナーと共に社交ダンスを踊り、戦士の姿になる。
「魅惑の舞姫、ブラックチャーム!」
「優雅な舞姫、グレイスロード!」
「陽気な舞姫、フェスティブレイド!」
「魅惑のムーヴに、酔いしれなさい。」
三人はそれぞれ名乗り、チェリーエッジらと共にブラクスに立ち向かう。
「待ってレオン!」
一方、依乃里は逃げ出したパッショネイトレオンを必死に追いかけていた。
「ガー!」
パッショネイトレオンは依乃里を突き放すかのように叫びながら逃げ回っていた。
「待ってよレオン!言いたいことがあるの!」
「ガー!」
依乃里が必死に呼びかけるが、パッショネイトレオンは聞く耳を持たない。
「レオン……。」
絶望しかけた依乃里は、全身の力を振り絞って思い切り叫ぶ。
「私のこと好きなんでしょ!」
「ガ……。」
依乃里の言葉に、パッショネイトレオンはついに動きを止める。
「やっと止まってくれた。ごめんねレオン、レオンの気持ちに気付いてあげられなくて。」
依乃里は優しい口調でそう言いながらパッショネイトレオンに歩み寄る。そして両手にパッショネイトレオンを乗せる。
「私、レオンのことをずっと考えてあげてなかった。レオンのことをただのドスケベとしか見てなかったから。でも今は違う。レオンは私に一途な想いを向けてくれる純粋なモンスター、大切な私のパートナーだよ。」
依乃里はパッショネイトレオンに想いをぶつけ、優しくキスをする。
「レオン、大好き♡」
「ガ〜!」
依乃里からの愛の告白に、パッショネイトレオンは泣き崩れる。そして依乃里の右手の中指に嵌められているルビーの指輪が眩い光を放つ。
「これって……!」
依乃里は光るルビーの指輪に驚き、恐る恐るパッショネイトレオンに翳す。するとパッショネイトレオンは獣人の姿になり、着ている燕尾服が赤い闘牛士のような衣装に変わる。
「レオン、これもしかしてパソドブレの……?」
依乃里はパッショネイトレオンの服が変わったことにも驚いていたが、更に依乃里の部屋にあった薔薇の花が二人の前に現れフラヴァイスになる。
「フラヴァイス!やった、これでまた戦えるよレオン!」
「ガ〜!」
力を取り戻した依乃里は嬉しくなり、パッショネイトレオンと抱き合う。
「レオン、みんなを助けるよ。私達の愛の力で。」
「ガー!」
依乃里とパッショネイトレオンは共に戦う覚悟を決め、皆が戦っている元へ急ぐのだった。
一方、ブラクスと戦うベリースパークラー、チェリーエッジ、レッドライテスト、ブラックチャーム、グレイスロード、フェスティブレイドの六人は未だ苦戦を強いられ、地面に倒れ込んでいた。
「くっっ……、そろそろまずい。」
「このまま戦いが長引けば、街の人達が騒音に耐えられません!」
一同はブラクスを倒せないことに焦りを見せる。
「ふん、このまま音のない世界にしてやるぜ!」
ブラクスが高らかにそう言って止めを刺そうとしたその時、コツコツとハイヒールの足音が鳴り響く。
「何だこの忌々しい音は?耳障りだ!」
「ダークサイレンスが暴れている中で動ける人って……!」
「もしかして依乃里さん⁉」
ブラクスはその足音を耳障りに感じるが、ベリースパークラーとレッドライテストはその足音が依乃里のものだと察する。そして一同が足音の鳴る方に目を向ける。するとそこには闘牛士の衣装を着たパッショネイトレオンと、赤と黒のツートンカラーのフラメンコドレスを身に纏った依乃里が社交ダンスの入場のように歩いて来る姿があった。
「桜間依乃里、どうやら力を取り戻したようね。」
ブラックチャームは凛とした依乃里の表情に微笑む。そして依乃里は真っ直ぐブラクスを睨みつける。
「ブラクス、これ以上好きにはさせない。私達の愛の力でその野望を止める!」
「ふん、やれるものならやってみろ!」
依乃里はブラクスを煽るようにそう言い、ブラクスもその挑発に乗る。そして依乃里はフラヴァイスを持って構える。
「行くよレオン、手と手を取り合って。」
「ガッ!」
依乃里はパッショネイトレオンにそう言うと勢いよくフラヴァイスを振り下ろして開き、口元に持って行く。
「バラ!ダイヤモンド!パソドブレ!」
依乃里がフラヴァイスにそう叫ぶと、フラヴァイスから音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊るよ!」
依乃里はそう言うとパッショネイトレオンと手を取り合い情熱的なパソドブレを踊る。そして依乃里の体はロースレーザーへとその姿を変える。
ローズレーザーの姿は以前までと違い、トップスとボトムスがセパレートになっており露出度の高いものとなっていた。
「情熱の舞姫、ローズレーザー!」
ローズレーザーはパッショネイトレオンと踊りながら名乗る。その姿に、その場にいた全員が目を奪われる。
「依乃里さん、カッコ良い……。」
「いのりっち、セクシーじゃん!」
「この凛々しさ、美姫さんが新しい力を引き出した時と同じ……。」
「情熱のメロディー、響かせてあげる!」
そしてローズレーザーは皆に見守られながらパッショネイトレオンと共にブラクスに立ち向かう。
「はぁぁ!」
ローズレーザーはパッショネイトレオンとパソドブレを踊りながら拳や蹴りを入れる。
「レオン、一緒に行くよ!」
「ガオー!」
次に二人は手を離し、息の合った情熱的なステップでブラクスを攻めたてる。
「依乃里さん、美しいです!」
「いのりっち、オーレッ!」
ベリースパークラーとチェリーエッジもローズレーザーの戦いぶりに感激し、歓声を上げる。
そしてローズレーザーはスカートを靡かせ、華麗なターンをしながら闘牛のようにパッショネイトレオンの元に行く。パッショネイトレオンはローズレーザーの手を取るとローズレーザーを持ち上げ、くるくると回る。ローズレーザーは回りながらブラクスに向けてレーザー光線を放つ。
「はぁぁ!」
「くっっ……、うわぁ!」
流石のブラクスもローズレーザーとパッショネイトレオンの息の合った攻撃に翻弄され、押されてしまう。
「くそっ、これがローズレーザーの本当の力か。前よりも強くなってやがるぜ。」
ブラクスはローズレーザーの強さに、ローズレーザーがダークサイレンスを倒す切り札になるという話の信憑性を悔しくも感じていた。
「さあ、止めだよ!」
ローズレーザーはそう叫ぶとレーザー銃を持って構え、力を溜める。
「愛と情熱の、レーザーストライク!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
ローズレーザーの強力なレーザー光線を喰らったブラクスは、ノイジアスの力が離れてしまい元の姿に戻る。
「ノイジアス様の力を以てしてもか。ここは一旦退くか。」
ブラクスは劣勢を感じ、人間界を去る。そしてブラクスの去った街には静寂が訪れる。
「桜間依乃里、あなたならきっと真の戦士となると信じていたわ。これからはダークサイレンスを倒すために尽力することね。」
ブラックチャームは微笑みながらローズレーザーに言う。ブラックチャームはローズレーザーが再び戦士になったことでダークサイレンスを倒すことに希望を見出していた。しかし、ローズレーザーは突然ブラックチャームにレーザー銃を向ける。
「ちょっと、依乃里さん?」
「いのりっち、何してるの?」
その場にいた全員がローズレーザーの行動に驚き、ベリースパークラーとチェリーエッジが問いかける。
「……何のつもりかしら?」
ブラックチャームもローズレーザーに尋ね、ローズレーザーはゆっくりと語り出す。
「私気付いたの、本当の戦士に必要なのは愛だって。真理紗、あなたがレオンと巡り会わせてくれたおかげだよ。だからこそ、利害の一致だけであなた達と一緒に戦いたくない。あなた達と本当の愛で仲間になるまで、私はあなた達に牙を剥く。」
「依乃里さん……。」
ローズレーザーはパッショネイトレオンとの愛に目覚めたことで戦士としての愛の重要性を感じていた。そしてブラックチャームらと分かり合うまで敵対することを決めたのだ。その想いを悟ったブラックチャームは、真理紗の姿に戻りまた微笑む。
「そう、あなたの考えはわかったわ。でも私はあなたと仲間になるつもりはない。あなたはただダークサイレンスを倒してくれればいいのよ。」
「ま、そういうこと。」
「精々頑張って下さいまし。」
真理紗はあくまでもローズレーザーらと仲間にならない意思を貫く。それには元の姿に戻った美李宇と芽里音も同意し、依乃里らを煽ると真理紗ら三人は黒いオーラを放ちその場を去るのだった。
真理紗らが去った後、ローズレーザーらは元の姿に戻る。そして依乃里、雨幸、桐菜、風布花の四人の元に四年前の戦士である美姫、剣二、輝弓、依斧、夜衣魚、林檎、竹月、リーナ、実の九人が現れる。
「みんな、お疲れ様。」
「美姫さん。」
美姫は皆に労いの言葉を掛け、依乃里は嬉しくなる。そして風布花が凄い勢いで美姫の元に駆け寄り抱き着く。
「美姫さん、大丈夫でしたか?すみません、私が不甲斐ないばかりに辛い思いをさせてしまって。」
「そんなことないって。風布花ちゃん達が頑張ってくれたから世界が守られているんだよ。」
「美姫さん♡」
風布花は美姫のことを心配していたようだった。しかし美姫は大丈夫だと風布花を安心させ、風布花は美姫の言葉に嬉しくなる。
「はいはい、もうくっつくのは終わりね。」
「そんな、林檎さんの意地悪ぅ。」
美姫に抱き着く風布花を、林檎は引き離そうとする。
「しかし、これでまた依乃里が戦えるようになった訳だな。社交ダンスの練習をしたり、今までご苦労だったな。」
「はい、おかげさまで。」
剣二も依乃里を労い、依乃里は剣二に礼を言う。そして夜衣魚が突然、はしゃぐように語り出す。
「はいはーい!それじゃ依乃里ちゃんがまた戦えるようになったことを記念して、みんなでパーティーしちゃいましょう!」
「水原夜衣魚、あなたは本当にパーティーが好きですね。」
夜衣魚はパーティーの提案をし、リーナはそんな夜衣魚に呆れてしまう。
「でもいいんじゃない?俺達男共はこれからちょっと予定あるから参加できないけど、みんなで行って来なよ。」
「そうですね、皆さんで楽しんで下さい。」
「ありがとうございます!レオンも行くよね?」
「ガー!」
輝弓と依斧もパーティーを後押しする。そして依乃里はパッショネイトレオンを元の小さなライオンの姿に戻し、男性陣を除いた皆でパーティーに赴く。こうして長かった依乃里が再び戦士になるまでの道は幕を閉じるのだった。
いつも「Miracle Dance Princess」をお読み頂き誠にありがとうございます。作者のロマンス王子です。今回を持ちまして第二章完結と同時に連続投稿を一旦休止とさせて頂きます。また最終話まで書き終えたら投稿を再開致しますので宜しくお願い致します。




