第十七話 愛は遠のくばかり
何処にでもいるはずの女性、桜間依乃里はひょんなことから戦士となった。依乃里は戦士達が乱闘する中に飛び込んだパッショネイトレオンを庇って重傷を負ってしまう。そんな依乃里の姿に、パッショネイトレオンは依乃里に恋心を抱くようになっていた。しかし依乃里は、一人バーで飲み明かしている時にヨシミと名乗る謎の女性と出会い、夜の街に消えていくのだった。
ある朝、依乃里は見知らぬアパートの一室で目が覚める。
「うぅ……、頭痛い……。」
依乃里はバーで飲んだお酒の影響で頭痛を感じていた。そして周りを見渡し、その部屋が自身の部屋ではなく見知らぬものだと理解する。更に依乃里は裸でベッドの中にいた。
「ここ、どこだろう……?」
依乃里はその部屋が誰の部屋なのかはわからなかった。しかし依乃里の隣の布団が盛り上がっているのを見つける。
「あ……、誰かいる……。」
依乃里は思い切ってその布団をめくる。するとそこにいたのは依乃里が昨晩に出会ったヨシミの姿だった。
「思い出した、ヨシミさんにキスでお酒を飲まされたんだ。そこから記憶がないけど、この状態からすると多分ヨシミさんと……。」
依乃里は昨晩の記憶が途切れてからの状況を大体理解する。
「ヨシミさん、ヨシミさん。」
「ん……、おはよう依乃里ちゃん。」
依乃里はヨシミの体を揺らして起こす。起きたヨシミは少しうっとりした表情で挨拶をする。
「依乃里ちゃん、寝起きも可愛いね。」
ヨシミはそう言うと依乃里の肩を抱き、キスをする。
「ん……!」
依乃里はヨシミのキスに驚いてしまう。
「あの、ヨシミさん。私、昨晩ヨシミさんにキスをされてからのことを覚えていないんですけど……。」
「ああ、そうなの?ちょっと気分転換になればいいかなと思ったんだけど。」
「そうでしたか……。あの、ありがとうございました。」
依乃里は自身のことを想って家まで連れてくれたヨシミに感謝する。しかし依乃里はパッショネイトレオンのことが脳裏を過ってしまう。
「でも、やっぱり私帰ります。その、パートナーのことが心配なので。」
「そっか、依乃里ちゃんは優しくて真っ直ぐだね。」
依乃里は帰ることを決める。その言葉にヨシミは依乃里の優しさを感じる。しかし依乃里が帰ろうとしたのも束の間、突然インターホンが鳴り響く。
「え?やばっ!」
「どうかしたんですか?」
インターホンの音にヨシミは動揺する。その様子を不思議に感じる依乃里だったが、ヨシミは依乃里の手を握り、クローゼットの扉を開ける。
「ちょっとここに隠れてて!」
「え、どうしたんですか⁉」
「いいから!」
ヨシミは依乃里に有無を言わさず依乃里を荷物と服と一緒にクローゼットの中に押し込む。そしてヨシミは急いで着替え、ドアを開ける。
「ごめんごめん、ちょっとバタついてて。」
「遅いよ。また昨日遅くまで遊び歩いていたんでしょう。」
「へへ、まあね。」
ヨシミがドアを開けた先にいたのは四年前のアメジストの戦士である鈴木林檎だった。ヨシミは林檎を部屋の中に入れる。
「嘘、林檎さん⁉」
依乃里はクローゼットの扉のスリットから林檎の姿を見て驚く。
「わかった、ヨシミさんって林檎さんの恋人だったんだ。私、林檎さんの恋人を寝取ったんだ……。」
依乃里は先代の戦士としてお世話になっている林檎を裏切る行為をしたとして罪悪感に駆られてしまう。
「ねぇ、まさかとは思うけどまた女の子を連れ込んだりしてないよね?」
「え?ははは、まさかそんなことしてないよ。」
「本当?」
林檎はヨシミが女性を連れ込んだことを見透かす。ヨシミは慌てて挙動不審な様子で否定するが、林檎はヨシミの様子を見逃しはしなかった。
「まずい、もう林檎さんにバレかけてる……。今出たら大変だ……。」
依乃里は林檎に見透かされていることを察し、震え上がってしまう。
「あんたも日頃の行いに気を付けてよ。もうそろそろ自分のお店を持てそうなんでしょ?」
「まあね、もうすぐで私も林檎と同じ店長だよ~。」
「だったら尚更しっかりしないと。」
依乃里はヨシミと林檎の会話を聞き、ヨシミも何らかの店を持とうとしていることを察する。しかしずっと耳を傾けていた依乃里はふいに足を滑らせてしまう。
「あ、やば!」
依乃里が気づいた時には既に遅く、依乃里はクローゼットから飛び出してしまう。
「痛っ!」
「え、依乃里ちゃん⁉」
林檎は突然クローゼットから依乃里が出てきたことに驚いてしまう。それと同時に依乃里が裸でいるのを見て大体のことを察する。
「ヨシミ~……。」
「いや、大変だって話をしてたじゃん。だから私に出来ることはないかな~って思ってたらこういう形に……。」
林檎はヨシミに怒りの視線をぶつける。ヨシミはおどおどしながら弁解するが、林檎の怒りは頂点に達していた。
「何をやっとんじゃあんたは~~~‼」
林檎の怒りの声がヨシミの部屋に響いていた。
一方その頃、ダークサイレンスではスノアがあっけらかんとした様子で戻っていた。
「あ~、疲れた。じゃあ寝るか。」
スノアは帰ってくるなり寝床に着いて大きないびきをかきながら寝てしまう。
「スノア、中々の怠け者のようだな。」
「申し訳御座いません、しかしスノアも我々の大事な幹部です。見捨てる訳には行かないかと。」
謎の声はスノアに呆れてしまうが、クリークはスノアもダークサイレンスの幹部として擁護する。
「まあいい、もうすぐで俺も姿を現すことが出来る。それまで少しでもいいから人間の悪意を集めるんだ。」
「はい、仰せのままに。」
謎の声はクリークにそう命令する。そこにブラクスが現れる。
「今度は俺に、人間界への侵攻をお任せ下さい。」
「ブラクスか、やってみろ。」
「はい!」
ブラクスは意気込み、人間界へと赴くのだった。
一方、林檎はヨシミと依乃里を正座させて睨みつけていた。
「あんた、よりにもよって依乃里ちゃんを連れ込むことないじゃない。」
「だからさ~、慰めてあげようとしただけなんだって~。」
「何かもっとこう……、あるでしょ!」
林檎はヨシミに説教するが、依乃里は少し疑問に思うことがあった。
「林檎さん、私はヨシミさんと昨日の晩に初めて会ったんですけどヨシミさんは私のことを知っていたんですか?」
「依乃里ちゃん、もしかしてヨシミのことを知らないの?」
「え?」
依乃里はヨシミが自身に話しかけたことについて、自身のことを出会う前から知っていたのではないかと感じていた。そのことを林檎に尋ねるが、林檎は逆に依乃里がヨシミのことを知らないことに驚く。そして林檎はまたヨシミを睨みつける。
「あんた、依乃里ちゃんにそこの話しないで近づいた訳⁉」
「ま、まあ言いそびれちゃったかな……。」
「呆れた……。」
林檎はヨシミに呆れ、ヨシミは依乃里の方を向いて改めて自己紹介する。
「改めまして私の名前は水原夜衣魚、四年前にアクアマリンの戦士として戦っていた者で~す。」
「先代のアクアマリンの戦士だったんですか⁉し、失礼しました!」
ヨシミの正体は水原夜衣魚、嘗てアクアマリンの戦士として風布花や林檎と共に戦っていた者だった。依乃里は先代の戦士に無礼を働いたと感じ、慌てて頭を下げる。
「依乃里ちゃん、夜衣魚にはそんな畏まらなくていいから。」
「ちょっと林檎~、それはないじゃん。先輩の威厳がなくなっちゃうでしょ。」
「その威厳が元々ないでしょ!」
夜衣魚に呆れた林檎は依乃里に畏まらくて良いと話す。そして林檎は依乃里にも注意する。
「依乃里ちゃんも気をつけてよ。相手が夜衣魚だったからギリギリ事件にならなかっただけで初めて会った人の家に行くとか危険だからね。」
「はい、以後気をつけます……。」
依乃里は自身の軽率な行動を反省する。そんな中、依乃里の携帯電話が鳴り響く。
「ん、ちょっとすみません。」
依乃里が携帯電話を手に取ると、それは仲間である新原桐菜からの着信だった。
「桐菜ちゃんだ。もしもし?」
「いのりっち!レオンが逃げた!」
「嘘でしょ⁉」
桐菜の焦りが伝わるような声で叫んだその言葉は、依乃里の目を覚ますには十分だった。
依乃里はすぐさま桐菜、そして同じく仲間である蓮葉雨幸と赤園風布花の待つ元に向かう。
「レオンが逃げたって本当⁉」
「すみません、依乃里さん。」
「私達が至らないばかりに……。」
依乃里が焦りながら話すと、雨幸と風布花が後悔の念を持った面持ちで話す。そして桐菜が事の経緯を話す。
「実はレオンの奴、いのりっちと離れた途端に暴れ出しちゃって。何とか戦いには連れて行けたんだけど、今朝起きたらケージからいなくなってて。」
「暴れてた?あんなに元気がなかったのに……。」
依乃里はパッショネイトレオンが暴れていたことを疑問に感じる。そんな依乃里の様子を見た雨幸、桐菜、風布花の三人は俯いてしまう。
「どうしたのみんな?」
依乃里は三人の様子をおかしく感じる。中々言い出せない三人だったが、風布花が重い口を開く。
「依乃里さん、レオンは具合が悪かったのではなく依乃里さんに恋心を抱いていたんです。」
「レオンが⁉」
依乃里は風布花の言葉に驚いてしまう。そして桐菜が依乃里に頭を下げる。
「ごめんいのりっち!私がレオンの気持ちに気づいていたらいのりっちからレオンを離さなかったのに……。」
「桐菜ちゃんのせいじゃないよ、ちゃんとレオンの面倒を見てくれてたし。悪いのは私の方だよ。私が真っ先にレオンの気持ちに気づいてあげなきゃいけなかったんだから。」
桐菜はパッショネイトレオンを依乃里から離したことに対し、自責の念に駆られていた。しかし依乃里は桐菜を責めず自身が悪いと諭す。
「とにかく今はレオンを探そう。私がレオンとちゃんと向き合って話さないと。」
依乃里はそう言い、皆で手分けしてパッショネイトレオンを探すのだった。
「レオン、どこにいるの?」
依乃里はレオンを探して必死に走り回っていた。走り回る中で、依乃里はとあるペットショップに人が集まっているのを見つける。
「おいおい、派手にやられたな〜。」
「これまた酷いな。」
「どうかしたんですか?」
集まっていた人はそのペットショップに驚いているようだった。依乃里が近くにいた人に何があったのか尋ねながらペットショップの中を覗くと、ペットショップはかなり荒らされていた。
「何これ……。」
依乃里が唖然としながら見ていると、ペットショップの店員が説明する。
「実は小さなライオンが急に入って来て暴れてしまいまして。」
「それって、白いライオンですか⁉」
依乃里はその店員の話からパッショネイトレオンの仕業だと察する。
「ええ、体色は白かったですけど……。もしかして、あなたのペットですか?」
「ペットじゃありません!私のパートナーです!」
依乃里は店員からパッショネイトレオンがペットなのか尋ねられ、真っ直ぐな目で強く否定する。
「それで、レオンはどちらに行きました⁉」
「れ、レオンですか?あのライオンならあちらに……。」
「ありがとうございます!」
依乃里は鬼気迫る様子でパッショネイトレオンが行った方向を尋ね、すぐさまその方向に向かう。
「お願いレオン、戻って来て……。」
依乃里はパッショネイトレオンを追いかけながら、心の中でそう祈るのだった。
時を同じくして、桐菜もパッショネイトレオン探しに奔走していた。そんな中、学校の友人とよく行くコスメショップの様子がおかしいことを感じる。
「ん、何か人が集まってる?」
桐菜が訪れたコスメショップは、依乃里が訪れたペットショップのように人が集まっていた。桐菜がコスメショップの中に入ると、そこにはペットショップの同じような惨状が広がっていた。
「桐菜!」
「ちょっと、ここどうしたの?」
桐菜はコスメショップで友人と偶然会い、荒らされたコスメショップについて尋ねる。
「何かね、小さなライオンが入って来て暴れたの。」
「ライオン⁉もしかして白いライオンじゃない⁉」
桐菜は友人の話からコスメショップの惨状がパッショネイトレオンの仕業だと察する。
「そうそう、全身白くて……。って、桐菜はあのライオンのこと知ってるの?」
「ごめん、その話は後で。それよりそのライオンってどっち行ったの⁉」
桐菜の友人は桐菜がパッショネイトレオンのことを知っていることに驚くが、桐菜はそんな友人の反応を気にも留めずパッショネイトレオンの行った先を尋ねる。
「えっと、あっちに行ったかな……?」
「ありがとう!」
桐菜の友人が指差した方向を確認するや否や、桐菜は桐菜はその方向に向かって駆け出すのだった。
更に時を同じくして、雨幸もパッショネイトレオンを探して奔走していた。そんな中、雨幸は四年前のペリドットの戦士であるリーナ・ジーニアス、そして四年前のラピスラズリの戦士である実・ファンタジアと合流する。
「蓮葉雨幸!」
「リーナさん!実さん!」
リーナと実は風布花からパッショネイトレオンが逃げ出したとの連絡を受け、心配していたのだ。
「話は赤園風布花から聞きました。あのモンスター、桜間依乃里のために一刻も早く見つけなくてはなりません。」
「私も緊急でカフェのお仕事を休んで来ちゃったよ。」
「すみません、お二人のお手を煩わせてしまうことになって……。」
雨幸はリーナと実に迷惑を掛けてしまったと申し訳なさを感じる。
「実さん、レオンは街のあちこちで暴れているらしいです。もしかしたら、実さんのカフェも狙われるかも知れません。」
「わかった。今カフェで働いている人にも気を付けるよう連絡しておくね。」
雨幸は依乃里と桐菜からパッショネイトレオンが暴れていることを聞いていたため、実が店長を勤めるカフェにも被害が及ぶことを懸念していた。実もそれを警戒し、カフェにいる従業員にも伝える。
「それでは蓮葉雨幸、共にパッショネイトレオンを探しましょう。」
「はい!」
そして雨幸はリーナ、実と共にパッショネイトレオンを探すのだった。
一方その頃、黒崎真理紗、上部芽里音、祭田美李宇の三人は気ままに街を歩いていた。三人は街がいつもより騒々しいことに気が付く。
「真理紗、いつもより街が騒がしくない?」
「そうね、何かあったのかしら?」
「平穏な音が響かないと、落ち着きませんわね。」
三人は街がどれだけ騒々しくても顔色を一切変えずに平然としていた。しかし街の人達が一斉にパッショネイトレオンを追いかけている様子を見つける。
「見て真理紗、あれって桜間依乃里のパートナーの……。」
「パッショネイトレオンね、街の騒々しさは彼の仕業かしら?」
「全く、世界の平和を守るはずの存在が迷惑行為なんて世も末ですわね。英雄の自覚がありますの?」
三人は街が騒々しい理由をパッショネイトレオンの仕業だと察する。そして芽里音はパッショネイトレオンの行動が英雄とかけ離れていると皮肉を言う。
「芽里音、パッショネイトレオンは幼い性格をしているの。彼が本当の意味で正義の味方になるかどうか、それは桜間依乃里にかかっているわ。」
「そんなにあの人が切り札になると言いますの?真理紗。」
真理紗はパッショネイトレオンが英雄となるのは依乃里次第だと話す。しかし、芽里音も美李宇も未だ言葉の意味を理解出来ずにいた。
パッショネイトレオンを探して走り回る桐菜の元に、風布花と四年前のガーネットの戦士である三浦竹月が駆けつける。
「桐菜さん!」
「ふぅちゃん!つっきーも!」
「風布花ちゃんから連絡を受けました。」
竹月も風布花から連絡を受け、共にパッショネイトレオンを探していた。
「つっきーまで探してくれてるなんて、ごめんね。」
「いいえ、困った時はお互い様です。」
桐菜は竹月にもパッショネイトレオン探しを手伝ってもらっている状況に申し訳なさを感じる。そしてそこに、共にパッショネイトレオンを探していた雨幸、リーナ、実も合流する。
「桐菜ちゃん!風布花ちゃん!」
「三浦竹月も一緒だったのですね。」
「ゆっきー!」
「リーナさんに実さんも!」
合流した六人は互いに状況を報告し合う。
「それで、レオンはどう?」
「いいえ、あちこちでレオンが暴れた形跡はありますけど、肝心のレオンは見つからなくて……。」
雨幸もパッショネイトレオンが暴れた後の惨状には度々出会していたが、パッショネイトレオンを見つけるには至らなかった。
「やはりパッショネイトレオンはモンスターだけあって、一筋縄では行かない相手のようですね。」
「本当、すばしっこくてありゃしないよ。」
リーナと実もパッショネイトレオンに翻弄されていた。そして六人の前に真理紗、芽里音、美李宇の三人が現れる。
「随分と暴れているようね、パッショネイトレオンは。」
「真理紗!」
「芽里音さんに美李宇さんも!」
桐菜達は真理紗ら三人が現れたことに警戒する。しかし真理紗達は戦うつもりがなかった。
「そこまで警戒する必要はないわ。今はパッショネイトレオンが暴れてそれどころではないはずよ。」
「……確かにそうだよね。」
桐菜は真理紗にそう諭され、警戒していた姿勢を緩める。そして真理紗はパッショネイトレオンが暴れていることについて語り出す。
「パッショネイトレオンが暴れている今の事態はあなた達が思っているよりも余程深刻よ。」
「どういうことですか?」
「言ったはずよ、桜間依乃里がダークサイレンスを倒す切り札だと。つまり桜間依乃里がパッショネイトレオンと共に戦えない今の状況はダークサイレンスを倒す希望が潰える、世界がダークサイレンスに侵略されることを意味しているのよ。」
「……なるほど、そういうことになりますね。」
真理紗は依乃里がパッショネイトレオンと一緒に戦えないことがダークサイレンスに勝てないということを明かす。それには風布花も同意せざるを得なかった。
「あなた方、桜間依乃里が戦えないことに失望してはなりません。ダークサイレンスを倒す術は他にあるはずです。」
リーナは真理紗の話す桜間依乃里が切り札だという話を信じず、皆の背中を押そうとするが真理紗はリーナの目を見て言い聞かせるように話す。
「悪の組織を倒せるのはいつの時代もダイヤモンドの戦士の力があってのこと。リーナ・ジーニアス、あなたも桜名美姫がいたからこそダークストーリーズを倒せたという事実から目を背けているのではなくて?」
「それは……。」
リーナは真理紗から言われ、四年前のダークストーリーズとの戦いが先代のダイヤモンドの戦士である桜名美姫を中心にして勝てたことを振り返る。
「それではダークストーリーズの時は美姫さん、今のダークサイレンスとの戦いでは依乃里さん、ダイヤモンドの戦士の力が必要不可欠だと?」
「そういうことね、ダイヤモンドの戦士がいなければ戦士がいくら集まったところでトップを倒すまでには至らないわ。」
竹月も真理紗にダイヤモンドの戦士が戦いの切り札になることを尋ねる。そして真理紗は改めてダイヤモンドの戦士がいなければ悪の組織を倒せないと話す。一同がそんな話をしている所に、突然ブラクスが現れる。
「おい、今の話は本当か?」
「ブラクス!」
「あら、聞いていたの。悪趣味な幹部ね。」
ブラクスは依乃里の力が必要だという話の一部始終を聞いていた。
「つまりローズレーザーか今暴れているライオンのモンスター野郎を始末すれば俺達の天下って訳だな。」
ブラクスは依乃里かパッショネイトレオンのどちらかを倒せば世界を侵略できることを理解してしまう。そしてブラクスの近くを、パッショネイトレオンを探して捕まえようとする男が通りかかる。
「あの小さいライオン、とっ捕まえて売り捌いてやる!」
男はパッショネイトレオンを捕まえて売ることを企んでいた。そんな男の悪意にブラクスは目をつける。
「いい悪意じゃねぇか。出でよマリス!」
ブラクスは男の額に手を翳し、マリスを産み出す。そして街に騒音が響き渡り、竹月、リーナ、実の三人は耳を塞いで苦しみながら倒れ込む。
「この世界は俺達ダークサイレンスの物になるんだ!」
「そんなことはさせません!」
「この世界も、いのりっちにもレオンにも手出しはさせないよ!」
「例え依乃里さんがいなくても、あなたは私達で倒します!」
雨幸、桐菜、風布花の三人はそう言って前線に立ち、フラヴァイスを持って構える。するとそこにジェントルピューマ、エレガントイーグル、チアフルゴリラが現れ、それぞれのパートナーである真理紗、芽里音、美李宇の手の平に立つ。そして真理紗ら三人はそれぞれ右手の指輪をパートナーのモンスターに翳し、獣人の姿にする。
「真理紗?」
「ダークサイレンスを敵としているのは私達も同じこと。別にあなた達と共に戦う気などないわ。」
「そういうことですわ。」
「邪魔しないでよね。」
真理紗ら三人はあくまでダークサイレンスと戦うことを念頭に置き、雨幸らと手を組むつもりはないと話す。しかしダークサイレンスと戦う目的を共にしている雨幸、桐菜、風布花、真理紗、芽里音、美李宇の六人は並び立ち、同時にフラヴァイスを開く。
「スイレン!ペリドット!ベリーダンス!」
「サクラ!ガーネット!日本舞踊!」
「カーネーション!パール!チャールストン!」
「パンジー!アメジスト!タンゴ!」
「マーガレット!アクアマリン!ワルツ!」
「ダリア!ラピスラズリ!サルサ!」
六人はそれぞれ叫び、フラヴァイスから音声が流れる。
「Let's Dance!」
「踊ります!」
「踊っちゃうよ!」
「踊ってみせます!」
「踊るわよ!」
「踊りましょう!」
「踊っちゃおう!」
そして六人はそれぞれダンスを踊り、戦士へとその姿を変える。
「妖艶の舞姫、ベリースパークラー!」
「美麗の舞姫、チェリーエッジ!」
「軽快な舞姫、レッドライテスト!」
「魅惑の舞姫、ブラックチャーム!」
「優雅な舞姫、グレイスロード!」
「陽気な舞姫、フェスティブレイド!」
「軽快なステップに、ついて来られますか?」
「魅惑のムーヴに、酔いしれなさい。」
六人はそれぞれ名乗り、ブラクスとマリスに向かって走り出す。
「ふん、戦士が集まったところでダークサイレンスの天下に変わりはねぇんだよ!」
ブラクスは余裕気な態度を見せ、マリスと共に迎え撃つのだった。
皆が戦っている頃、依乃里はパッショネイトレオンを探して走り回っていた。そして依乃里は周りの人々が倒れ込んでいるのを見てダークサイレンスの出現を察する。
「これは、ダークサイレンスが出たんだ。みんなが戦ってる、早くレオンを見つけないと!」
依乃里は皆が戦っていることに焦り、またパッショネイトレオンを探しに走り出すのだった。
「「「はぁぁ!」」」
ベリースパークラー、チェリーエッジ、レッドライテストの三人はそれぞれのダンスの動きでマリスを攻め立てる。
「さあブラクス、あなたの相手は私達よ。」
ブラックチャームはグレイスロード、フェスティブレイド、そしてそれぞれのパートナーのモンスターと共にブラクスを囲む。
「ちっ、お前らが相手じゃ分が悪いな。だがローズレーザーがいないなら最後に笑うのは俺達ダークサイレンスだ!」
「その中に、あなたは含まれていなくってよ。」
「私達が倒しちゃうもんね。」
ブラクスはブラックチャームらに狼狽えながらもローズレーザーがいない状況に希望を見出し、余裕気な態度を崩さなかった。そんなブラクスを三人とそのパートナーは攻め立てる。
「「「はぁぁ!」」」
三人はそれぞれのパートナーの手を取り、社交ダンスの動きで同時に後ろ回し蹴りを決める。
「くっっ……!」
ブラクスはブラックチャームらの動きに翻弄される。
「ダンサ・エクスプロシオン。」
「ダンス・ド・セレナーデ。」
「スラッシュ・デ・フェスティバル!」
そしてそれぞれブラクスに攻撃を仕掛けるのだった。
「ベリースラッシャー!」
「鋭刃の舞!」
一方、ベリースパークラーとチェリーエッジは同時に必殺技を放ち、マリスを消滅させる。
「やりました!後はブラクスだけです!」
レッドライテストは勝機を見出し、ブラックチャームらがブラクスと戦っている所に合流する。
「ちっ、もうマリスがやられやがったか。ここは一旦退くか。」
ブラクスは劣勢になったと感じ、その場を退こうとする。しかしそんな時、空から謎の黒いオーラが現れる。
「何だ?」
「何が起きたの?」
戦士達はもちろんのこと、ブラクスも何が起きたかわからなかった。そして空に広がった黒いオーラはブラクスを目掛けて降り注ぎ、ブラクスは今までにない力を感じる。
「何だよこの力……、漲って来たぜ!」
ブラクスは力が漲り、禍々しい姿へと変貌を遂げていた。
「あのブラクスの姿は……⁉」
「みんな、気をつけなさい。」
レッドライテストはブラクスの姿に驚き、ブラックチャームは皆に警戒を促す。
「ブラクスの姿が変わった。まさか、あのお方がお力添えを……?」
クリークも本拠地からブラクスの姿を見て驚いていた。それと同時に、ブラクスに力を貸している存在を察していた。
「俺は無敵だぁぁ!」
「「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」
ブラクスはそう言って黒いオーラを放出し、六人の戦士と三人のモンスターは吹き飛ばされてしまうのだった。




