第90話 『代理』
再び立ち塞がる謎の魔術師。
ユーリは今回も狙撃で仕留めようとするが……。
今回も概略図あります。
https://www.pixiv.net/artworks/109087394
王族派の本陣が強襲された頃、王都側ではキラを護送する鉄騎隊が立ち往生していた。
謎の魔術師のあまりの戦闘能力の前に、下手に前進することができず、攻めあぐねていたのだ。
防衛隊も巻き添えが嫌なので前に出ないが、魔術師の側面を通り抜けられないよう、両脇をがっちりと固める。
魔術師の対処をキラの仲間に任せたものの、このままでは徒に時間だけが過ぎてしまう。
アルバートは内心で焦っていた。
(いかんな。これでは目的を果たせないまま、こちらが不利になる一方だ)
幸い、味方の被害を全く考えない魔術師により、防衛隊も頭を抑えられていて攻撃には出れない。
だがここで足止めされていては、キラを王城へ送り届けるという勝利条件は満たせないままだ。
魔術師の乱れ撃つ呪文により、友軍への被害もジワジワと広がっている。
その危機感は、魔術師の正面に立つ仲間達も感じていた。
「しゃしゃり出たはいいが……ここからどうする?」
最前列で大盾を構えるエドガーが、後続に尋ねる。
最初に相対した時と同じく、凄まじい破壊呪文の波で距離を縮められない。
「何とか突っ込めねぇのか?!」
「無茶言うな!」
ディックは以前の雪辱戦をしようと勇み足だったが、それでもあの弾幕の中を突っ切ろうという程愚かではなかった。
彼の強行策をエドガーは一蹴する。
「チャンスは来るよ」
エドガーの後ろでその時に備えるメイは、じっと前を見据えながらそう言う。
「チャンスっていつだよ?」
そのディックの問いに、彼女は答えなかった。
その場から南に位置する岩場から、メイのアテであるユーリは矢をつがえる。
敵は狙撃手を始末したと思い込んでおり、魔術師もまだ伏兵が潜んでいることに気付いていない。
念のために透明化の術で身を隠しつつ、彼は狙いを定めた。
(しかし、何だあの氷の剣は? 前は見なかった)
謎の魔術師は射出するわけでもなく、自分の周囲を囲うように刃を外側に向けた6本の氷の剣を浮かせている。
恐らく近接防御用の術だろうと判断したユーリは、急所を狙って毒矢を放つ。
風力と重力を計算に入れた完璧な狙撃で、矢は吸い込まれるように魔術師に命中する――そう思われた時だった。
浮いている氷剣のひとつが急に反応し、飛来する矢に向かって発射されたのだ。
氷剣は正確に毒矢を迎撃し、それを見た魔術師はユーリの居場所へ振り向いて片手を向ける。
「やはり狙撃で来たか……。だが無意味だ!」
ユーリの側は狙撃の失敗を見て反射的にその場を飛び退き、彼が立っていた場所には電撃と氷のつぶてが次々と降り注ぐ。
(チィッ、狙撃対策か……!)
魔術師は前回の戦いで、伏兵の矢にやられたことを忘れていなかったのだ。
あの氷剣は近接防御ではなく、本人の認知外から飛来する飛び道具を自動で迎撃する術だろうと、ユーリは仮説を立てる。
そんな術など聞いたことがないが、得体の知れない術を使う点では彼とて同類だ。
再潜伏することで難を逃れたユーリだが、あの術をどうしたものかと頭を悩ませることになる。
氷剣がある限り狙撃は無効化される。しかし援護しなければ、前線の味方はジリ貧になるばかりだ。
あの規格外の怪物を、正攻法でどうにかできると思う方がおかしい。
その悩みは、狙撃をアテにしていたメイ達も同じだった。
「ど、どうすりゃいいんだよ?!」
ディックもユーリの狙撃があれば何とかなると、漠然と考えていた。
「近付かないと……」
「行けるところまで行くか?」
メイもエドガーも、敵に接近しなければお話にならない。
かなり無茶だが、大盾があればある程度距離を詰められると二人は考えた。
「待って! 他の方法を考えるから、無理をしては駄目よ!」
後ろから援護するソフィアはそう言うが、具体的にどうすればいいか、案があるわけでもない。
彼女は魔力の盾を次々に展開しつつ、呪文が短く済む魔法の矢で反撃を行うも、勢いでは完全に敵に負けている。
その時、アルバートは部隊に指示を出す。
「敵魔術師に総攻撃だ! 弓を引け!」
彼は自らも長弓をつがえる。
これまで側面を固める防衛隊へ矢で攻撃していた鉄騎隊だが、その照準を魔術師一人に集中せよと言うのだ。
無論、注意が魔術師に向いた分、防衛隊は反撃を仕掛けて来るだろう。
今は守りを捨ててでも、謎の魔術師を突破すべきとアルバートは判断した。
その様子を見ていたユーリも、彼の意図を汲み取った。
(一か八か、やってみる価値はあるか)
ユーリは再び弓を構えるが、今度の矢は一本ではない。4~5本を束ねて一度に引く。
射撃の正確さなどあったものではないが、アルバートの考えが正しければ、これが最適解のはずだ。
ユーリは鉄騎隊の一斉射にタイミングを合わせ、束ねた矢を放つ。
狙いはでたらめなものの、術者に向かって飛んでくる無数の矢に対し、残る氷剣はやはり反応した。
だが5本でとても足りる数ではなく、全ての氷剣を使い切った魔術師は丸裸となった。
「やはりな。そうだろうとも!」
魔術師は両手を頭上に掲げ、放物線を描いて飛来する矢に電撃と氷結の術を乱れ撃つ。
自動で迎撃する氷剣が無くなった今、敵はこうするしかなくなったのだ。
「今だ、進め!」
好機と見たエドガーは大盾を構えつつ、一気に前へと踏み込む。
絶え間ない弾幕さえこちらへ向けられなければ、接近するチャンスはいくらでもあるのだ。
「気をつけて。あいつは囮を使ってくる」
エドガーの後ろにぴたりとついて前進しつつ、メイがそう警告する。
彼女もキラも、何とか接近したはいいがデコイでかわされた。
彼らが距離を詰める間にも、魔術師は敵を近付けまいと呪文で攻撃してくる。
そしてユーリと鉄騎隊が矢を放ち、その対処に追われている隙にエドガー達が前進した。
自信があるのか、魔術師はそれでも後ろに下がろうとしない。
友軍の援護によって、旅の仲間は強敵の喉元へ迫らんとする。
後ろに控えるキラを突破させるまで、もう少しだった。
そして同じ頃、シエルは父であり団長のギャレスと並走して鉄騎隊への合流を目指していた。
参謀であるウィルヘルムと部下の騎兵達も騎乗し、大急ぎで前線へ向かう。
「伝令によれば、例の魔術師が行く手を塞いでいるそうです。団長、どうなさいますか?」
ウィルヘルムの問いに対して、ギャレスの答えはシンプルだった。
「騎馬突撃で突破する!」
彼の考えでは、キラを護衛せねばならない鉄騎隊は無茶な突撃を行えない。
その点クルセイダーは被害を顧みず、自由な行動ができるはずだ。
ここでどれだけ犠牲を払おうが、キラを王城まで行かせれば勝ちである。
「おっ、いいじゃーん!」
深く考えず、シエルは乗り気だった。
だが立ち往生する鉄騎隊の影が見えてきたその時、どこからともなく飛来した流矢が先頭を走るギャレスに命中する。
軍馬が倒れ、騎乗していたギャレスは地面に放り出された。
「パパっ?!」
「団長!」
シエルとウィルヘルムは慌てて馬を降り、矢を受けて落馬したギャレスに駆け寄る。
「パパ、しっかりしてよパパ!」
「団長と呼べと言っているだろう、馬鹿者……!」
幸い、ギャレスはまだ意識があった。
矢に刺された痛みと落馬の衝撃に顔を歪めるが、それでも彼は味方にすがるような真似はしない。
ウィルヘルムが確認すると、矢はちょうど膝の部分、甲冑の隙間に突き刺さっていた。
敵と味方、どちらが放ったのかすら分からない、偶発的に飛んできた流矢だ。
戦場ではこういう不運がままある。
(命に別条はないが、これでは団長は戦えない……)
足の傷を見て、ウィルヘルムは深刻な表情を浮かべた。
頭部や胴体といった致命的な急所への命中ではなかったが、矢は膝に深く突き刺さっている。
ウィルヘルムは急ぎ矢を抜き、出血が酷いので傷口を布で縛って止血を試みた。
「そんなこと言ってる場合じゃないっしょ?! 皆集まって! パパが撃たれた!」
必死なのはシエルも同じで、後続のクルセイダー兵を呼び集めようとする。
しかしギャレスは娘の手を振り払い、うめき声を抑えて命令を叫ぶ。
「私はいい! シエル、お前が指揮を引き継げ!」
「へっ?」
いきなり指揮権を渡された彼女は素っ頓狂な声をあげた。
「何のための団長補佐だと思っている。お前が騎士団を率いて、姫様をお助けしろ!」
戦場では主将が倒れることなど珍しくない。
そういう非常時に備え、副将や補佐が置かれているのだ。
彼らは主将が戦闘不能になった際、速やかに指揮を引き継いで頭を潰された軍団を復活させる義務がある。
「で、でもパパが……」
実の親を案じるシエルの気持ちを、ウィルヘルムも察していた。
なので彼は双方を妥協させることにした。
「数名の兵を団長の護衛につけさせます。それでよろしいですか?」
それでシエルが納得し、後顧の憂い無く団を率いられるなら、多少の兵を置いていっても安いものだ。
意図を汲み取ったのか、ギャレスも渋々うなずく。
「分かった。ウィルヘルム、娘の補佐を頼んだぞ」
傷口を止血したおかげで出血は一旦止まったが、まだ激痛は引いていないはずだ。
荒い息をつきながら、彼は弱音を吐かずに冷静に考えた。
「はっ」
ウィルヘルムは後続の部下に状況を説明し、ギャレスを本陣へ護送するよう命じる。
戦場の最中に負傷して動けない彼一人を置き去りにしたら、敵に見つかってトドメを刺され、命は無かっただろう。
まだ困惑するシエルに対し、ギャレスは背中を押すように言葉をかける。
「いいかシエル、お前はグロスター男爵家の跡取りだ。お前ならできる。行け!」
今度こそ彼女はうなずき、兵士に後を任せてギャレスから離れた。
そして両手で自分の頬を叩いて気合を入れ直すと、軍馬に騎乗して剣を掲げる。
「よーし、いっちょぶっ込むぞー! 野郎共、私に続けぇ!」
これまで何度か兵を任されたことはあっても、主将の経験は初。
シエルは半ば自棄になるかのように軍馬で走り出す。
(普段なら止めるところだが……今は騎馬突撃が団長の意向でもある)
ウィルヘルムはそう考え、後続の騎兵と共にシエルに続く。
シエルは昔から座学の才能が皆無で、訓練として少数部隊の指揮を任された時は決まって突撃命令を出していた。
その度にお目付け役のウィルヘルムは、彼女の指示を撤回して兵法を説いたものだった。
今回は鉄騎隊の援護のために突撃することが最適解だったため、ギャレスも迷わず娘に指揮権を委ねたのだろう。
数人の護衛と共にギャレスを置いて、シエルを先頭にクルセイダーは猛突撃を行った。
まず魔術師の脇を固める防衛隊を側面から切り崩し、電光石火の勢いで戦闘中の魔術師へと迫る。
「おっ、アイツかぁ! 轢き殺しちゃる!」
この時、謎の魔術師はジリジリと前進するエドガー達と飛来する矢に気を取られ、いきなり横から現れたクルセイダーへの反応が遅れていた。
もし魔術師に協調性の欠片でもあったなら、友軍が警告してくれただろう。
だが味方も巻き添えにする彼に対して、防衛隊は協力的でなかった。
その一瞬の遅れが命取り、呪文で迎撃しようと片手を伸ばすも、もうシエルの軍馬は目と鼻の先に来ていた。
苦し紛れに魔力の盾と囮を展開するが、一度勢い付いた軍馬を止められるようなものではない。
「な、何だぁ?!」
予想外の展開だったのは、エドガーの盾に隠れて進んでいたディックも同じ。
彼からすれば、突然横から鉄砲水のようにシエル達が押し寄せ、魔術師を踏み潰した形だ。
ディックだけでなく、エドガーにメイ、ソフィア、そして鉄騎隊も呆気に取られた。
だがアルバートはいち早く、友軍の作った好機に乗じる。
「よし、障害は排除された! 前進せよ!」
シエルの作った敵の穴を目掛けて、鉄騎隊はキラを連れて突貫を試みる。
防衛隊も通すまじと鉄騎隊に迫るが、それを妨害しにかかったのが旅の仲間とクルセイダーだった。
シエルは突撃した後のことを考えないため、細々した指示はウィルヘルムが出している。
「反転しろ! 鉄騎隊を援護するんだ! シエルは僕が連れ戻す!」
更にカルロの御する馬車がドリフトを決めて敵兵を薙ぎ払い、馬車にしがみついていたソフィアが道を作るように魔力の盾を展開する。
「もう嫌だぁー! 俺は本当の本当にただの御者なんだよぉぉぉ!!」
泣き言を言いつつ仕事はしっかりこなすカルロと連携し、馬車の反対側ではエドガー達三人が接近戦で敵を食い止める。
そして南からはユーリが狙撃で援護し、キラの行く手を阻もうと出てくる敵を射殺した。
「キラ、行ってちょうだい! ここは私達で押さえるわ!」
ソフィアに続き、メイも斧を振り回しつつ声をかける。
「ここは任せて!」
ディックとエドガーも左右に分かれて敵を食い止めつつ、後ろを振り返って言う。
「今度こそいいとこ見せねぇとな!」
「行け! 王国を救え!」
「皆さん、ありがとうございます! 必ず貴族達を説得してきます!」
キラはそう返すと、今度こそ振り向かずに軍馬で駆け出した。
並走するルークもそれに続く。
その背後を追撃させぬよう、旅の仲間とクルセイダーは力を合わせて防衛隊を釘付けにする。
ディックは槍を乱雑に振り回し、次々と現れる敵兵を薙ぎ倒す。
安物であればとっくに柄が折れているはずだが、魔法大学で新調した上質な素槍は耐えた。
彼を抜けてキラの後を追おうとする敵兵に、エドガーが投げた槍が命中する。
槍を失ったエドガーだが、すぐに大盾の裏に収められていたショートソードを抜き、戦闘を続行した。
攻撃力は低下したものの、彼の習った『亀の型』は盾による堅守に重点を置いた流派。
辛抱強く攻撃に耐え、そして鉄の盾の質量を活かして敵を殴りつける。
シールドバッシュとも呼ばれる、『犀の型』から受け継いだ反撃の技だった。
衝撃で後ろへ転倒した敵を、エドガーは小剣で地道にトドメを刺していく。
メイも長柄戦斧で戦うも、敵の攻撃で木製の柄が折れてしまう。
チャンスと思った敵兵だったが、折れたことで鋭く尖った柄を鎧の隙間から胴へ突き刺される。
残った斧頭の部分は手斧として投げつけ、別の敵の兜を割った。
これで丸腰かと思われた彼女だが、怖じることなく白い毛皮の外套を翻す。
その下には、無骨な革ベルトにぶら下げられた8本の手斧。古くはフランキスカとも呼ばれた、投擲用の斧だ。
メイはそれを左右交互に手に取り、次々と敵兵へと投げつける。
扱いが投げナイフ以上に難しい分、その重さは何よりの武器となり、鉄の鎧すら意味を成さない恐るべき飛び道具となった。
彼女が道中の鍛冶屋で手斧を8本も買っていたのは、こういう使い方をするためだ。
6本を立て続けに投擲したメイは、残り2本を両手に持って二刀流となり、敵集団に猛然と切り込んでいく。
長柄戦斧に比べて小型と言っても、斧は斧。リーチが短くなっただけで、力のある戦士が振るえば必殺の武器に変わりない。
防衛隊の兵士の首が飛び、腕が肩ごと切り落とされる。
彼女の白い毛皮の服はすぐに返り血まみれになり、帽子の耳飾りと合わせてその姿を見た兵士は慄いた。
「ヴォ、ヴォーパルバニー……!」
「殺人ウサギがやってきたんだ!」
逃げようとする防衛隊だが、目の前に半透明の壁が現れ、逃げ場を塞がれる。
そこへ魔法で作られた火の玉が命中し、一個分隊を纏めて焼き払った。
ソフィアの放った呪文によるものだ。
彼女は自分の前方に杖を浮かせ、両手で魔導書を開いて呪文を唱え続ける。
こんな乱戦になれば陣形の前も後ろも無くなる。ソフィアは全方位に目を配り、味方を援護しつつ敵を潰していった。
魔力の盾が仲間を庇い、背後の魔法陣からは火の玉だけでなく電撃の槍や風の刃が乱れ撃たれる。
その姿はまさに、この時代の移動砲台さながらであった。
そして仲間の影に隠れて縮こまっていたカルロも、いつまでも隠れていられなくなり、とうとう恐怖から暴れ出す。
「うわああああ! う、うぉれの側に近寄るなああああ!!」
目の焦点が合っていないまま、普段使い道の無いメイスを振り回し、文字通り狂ったように暴れる。
こうなったカルロにとって、動くもの全てが攻撃の標的である。
動きそのものは完全に素人のそれで、技量もへったくれもない。
だが鎚矛を始めとした鈍器の類は、刀剣のような繊細な刃を持たない分、力任せに叩きつけるだけで殺傷力を発揮する。
その破壊力は甲冑ですら防ぎきれないもので、鎧を着た兵士にとって鈍器はまさに天敵だった。
刃物を通さない板金がへこみ、変形した分中の人間を圧迫して致命傷を与える。
今度はそこへ、勢い余って前線を通り過ぎてしまったシエルがUターンし、再び騎馬突撃で防衛隊へ襲いかかる。
「パパの恨みじゃー! 死ねーっ!」
滅茶苦茶に馬上から片手剣を振り回し、敵陣を切り崩すシエル。
敵の歩兵にとってはたまったものではなかった。
軍馬は移動手段というだけでなく、恐るべき武器でもある。
そのパワーで突進すれば、多少武装した人間程度など簡単に轢き殺せるのだ。
しかし全く対策が無いわけでもない。
大盾を持った重装兵が立ちはだかり、シエルの突撃を食い止める。
馬は大きく立ち上がり、背に跨っていたシエルを振り落とした。
だがこれで勢いを削がれる彼女ではなかった。
受け身を取って立ち上がると、手綱を握るために背中に背負っていたカイトシールドを左手に構え、今度は自分の足で突進を始める。
盾から敵に体当たりし、今度は右半身を前に踏み出して片手剣による攻めに出る。
「もー怒ったかんねーっ!」
馬があろうと無かろうと、シエルが暴走特急であることに変わりない。
彼女の型は『犀』、文字通り突進するサイとなって戦場を荒らし回る。
後から追いついたウィルヘルムは、クルセイダーを指揮してシエルを援護するのに必死だった。
彼はローラン家に仕える魔術師、跡取り娘を死なせて一族を絶えさせてはならないのだ。
「右翼側はシエルの脇を固めるんだ! 左翼側は引き続き友軍の援護を!」
ウィルヘルムは指示を飛ばす合間に馬上から呪文を唱え、杖から凍てつく突風を吹かせて敵を薙ぎ倒す。
魔法で陣立てが崩れたところへ部下に攻撃指示を出し、残る防衛隊を少しずつ追い詰めていった。
彼らが防衛隊の相手をしている間に、先に抜けた鉄騎隊は敵本陣の横を素通りして王城へと迫る。
キラが王城へ突入するか、それとも王族派本陣がレナードに落とされるか、時間との勝負だった。
To be continued
登場人物紹介
・謎の魔術師
いい狙撃だな。効果的だ。だが無意味だ。
最初の不意打ちさえ防げればそれでいーので幻影剣は実質正解。
でも騎馬突撃には勝てなかったよ……。
・ギャレス
何度言っても団長と呼ばれない定期。
流れ弾に当たってここで一度退場。
ラック値の低い人でいらっしゃる?
・シエル
団長代理って言うか珍走団か何か。
乗り物を降ろされても暴走をやめないレディーススピリッツ、誉れ高い。




