48発目 不良を描きたい! 後編
「くっそー!どこに行ったんだ夢見の奴。」
手分けして探すこと30分、未だに足取りが掴めていなかった。あいつは不良は怖い人間ばかりではないと言ったが、怖い人間の方が多いのは事実なんだよ。はよ見つけんと、エライことになるかもしれん。
「り、凛堂さーん!!大変です!!」
廊下の向こうから優くんが叫びながら走ってくる。もしかして見つけたのか!?
「どうした、優くん!見つかったのか?」
「は、はい!夢見さんを見かけたと言う人がいて、それで体育館裏に行ってみたら・・・」
「夢見がいたのか!?」
「何人かの人に絡まれてるみたいでした!」
「クッ!!」
私は体育館裏にダッシュした。もし夢見が女の子だと知られたら何をされるか分からない。仮にバレなくても殴られるかもしれない。急げ、私!
「や、止めてください!」
私が体育館裏に到着すると、夢見の声が聞こえてきた。見ると三人の不良に囲まれている。
「何だ、テメーは!?なめてんのか!?」
不良の一人が夢見の腕を掴む。テメーら・・・
「汚ねえ手で触るんじゃねーーー!!!」
夢見の腕を掴んでいた男の後頭部めがけて飛び蹴りをかました。男は一言も発さずに地面に倒れ伏した。泡を吹いて痙攣している。良い子は危険だから真似しちゃダメだ。
「り、凛堂さん!?」
「助けに来たぞ!夢見!」
夢見は目をパチクリさせて驚いている。危ない所だった。直ぐに片付けるから安心してくれ!
「な、何だよ、お前!?」
「うっせー!このクソ外道が!!」
近くにいた男の顔面を打ち抜く。宙を舞う不良。これで残り一人。
「ま、待て!人の話を聞け!」
「後でゆっくり聞いてやる!殴った後で、テメーの体にな!」
「凛堂さん!それじゃどっちが悪役か分からないですよ!」
男の胸ぐらを掴んでいた私を夢見が止めに入る。離せ夢見!こーゆー害悪は処分しないといけないんだ!
「私がお願いしたんです!」
「は?」
目が点になってしまった。何言ってんの?この子。
「不良に襲われるシーンとかを勉強したくて・・・。凛堂さんの周りにいる方は皆優しい人達でしたから、別の方に頼んだ方が良いのかと・・・。」
「じゃあ、さっきの『止めてください!』とかは・・・」
「演技です。テヘッ!」
てへぺろ頂きました。なんつー、人騒がせな・・・。
「だ、だから言っただろう!話を聞け、と!」
「うっせー!紛らわしいことしてんじゃねー!!」
「げぼごっ!?」
「結局殴るんですね、凛堂さん・・・。」
初めは校舎でやっていたらしいのだが、あまりにも目に付くということで体育館裏に移動したらしい。どこでやるにせよ誤解を招く元である。
「まあ、夢見に何も無くて良かったよ。」
「この方達には悪いことをしました。」
地面にのびている三人を見て、夢見は顔を曇らせた。うん。不可抗力だ。悲しいすれ違いだったんだ。許せ。
「でも・・・」
「ん?」
「勘違いとは言え凛堂さんが助けに来てくれたお陰で、また一つ勉強になりました。きっと主人公にもこういうことが起こるでしょうから・・・。」
このどこまでも貪欲に資料を集める姿勢。これが・・・プロか・・・。大した姿勢だけど、こういうのも良し悪しだな・・・。
それから数日後、お礼の手紙と共に夢見が今度出す新作の設定資料が届いた。『不良に恋する5秒前』という題名だ。可憐な少女が不幸の末、不良高校に通うことになった。初めは忌避していた主人公であったが不良達の様々な面に触れ、次第にその考えを変えていく。やがて不良に絡まれていた自分を助けてくれた男子に恋をする。あらすじは大体こんな感じだ。前に聞いた時より具体的になっているな。主人公を助ける役の男子高校生・・・容姿とか、どう考えてもモデルは私だよな・・・。私の本当の立ち位置は主人公なのに・・・トホホ・・・。まあ、漫画が出たら絶対買うけどさ。




