47発目 不良を描きたい! 中編
「凄いですね!不良が一杯です!」
興奮気味の夢見を連れて屋上に来ていた。今日から新学年、新学期だ。今年も新入生は悪そうな連中が多かったな・・・。
「しっかし、漫画家ってのはここまでやるのかね?」
入間が呆れ顔で言った。こいつ夢見の男装は一発で見破ったんだぜ!何で私に気づかないんだよ!?夢見の方が私より胸がデカイからか!?失礼しちゃうよな!
「私はリアリティーを追求してますからね。漫画を描くのに努力は怠りません!」
夢見は自信満々に答える。流石にプロの言うことは違うな。学校休んで取材に来ているくらいだからな。まあ、獰猛な新入生に絡まれないようにね。ん?新入生と言えば・・・
「凛堂さん!」
屋上のドアを開けて二人やって来た。この声は・・・
「優くん、殴獄に来たのか・・・。」
「はい!凛堂さんに会いたくて!」
「俺は止めたんだけどよ!」
明るい優くんと違い、木間のテンションは低い。優くんは頭が良いって言ってたからな・・・。他の学校も受けようと思えば受かっただろうに。
「まあ良いじゃないか。桜国に入るよりか。」
「何言ってんだ?殴獄に入ってるじゃないか。」
入間が怪訝そうな顔で聞く。おっと!ややこしくなるから、この話はここまでだ!大体会話の上ではややこし過ぎるんだよ、殴獄と桜国は。
「お知り合いの方ですか?」
夢見が首を傾げながら尋ねる。
「うん。木間って言って、この二人は兄弟なんだ。」
「凛堂さん、その人誰ですか?舎弟の方ですか?」
優くんは夢見をジロジロ見ながら言った。上から下へじっくりと。優くん、セクハラだよ。
「僕、この人になら勝てる気がします!」
ファイティングポーズを取りながら得意気に言う。事実を知らないとは言え、相変わらず的外れなことを言うな~優くんは!
「この子と闘わなくても大丈夫!代わりにそこのメガネの人と闘ってごらん。絶対勝てるから!」
「いっ!?俺かよ!?」
入間が首を横に振りながら反応する。喧嘩弱いからな、お前。
「ふふっ。」
「ん?どうした、夢見?」
「私、不良って皆怖い人だと思っていました。でもよく考えれば、怖いだけの人なんて現実に居るわけ無いですよね。」
「まあ・・・そうかもな。」
それは私も思った。入る前と入ってからでは不良の見方が変わったな。そりゃあ中には許せない奴もいる。だけど不良だからって悪い奴ばかりではない。何でもかんでも一括りにしちゃダメなんだよ。
「納得いった所で、私ちょっと失礼しますね。」
「ん?どこに・・・」
「お花を摘みに。」
「ああ・・・付いていこうか?」
「結構です!」
夢見は顔を赤くしながら屋上のドアから出ていった。私その表現使ったこと無い。女子力足りないのかな?サプリメントとかで補えないかな?
「なあ、凛堂。」
「何だ、木間?」
「お花摘みって何だ?」
「兄さん、常識無さすぎ・・・。流石の僕でも察したよ。」
優くんはちょっと残念そうな顔をする。どうやら気づいたようである。木間は訳が分からないという顔をしている。兄貴の方が鈍いのな・・・。
「まあ取材は良いんだけどさ、凛堂。」
急に入間が切り出す。いつの間にやら、手に『今年の目玉』と書かれたノートを持っている。新入生の情報か?
「条定が卒業して名実共にトップになったお前だが、今年の一年も中々手強いぞ!」
メガネをクイッと上げて言う。久し振りに見たな、それ。
「浜笠とか春達とかは?」
まだ三年だろ、あいつらどうした?
「あの二人、意外とやる気無いんだよな・・・。」
入間は溜め息をついた。まあ・・・意外と丸いよな、あいつら。興味が無いと言うべきか。そう言えば、浜笠に桜国の子を紹介してくれって言われてたっけ?
「それに比べて今年の一年はやる気充分。三國志だぜ!」
「三國志?三つ巴ってことか?」
「ああ。まずは北中の龍こと、橘龍馬。こいつは棒術使いだ。圧倒的なリーチから繰り出される技は相手に近づくことすら許さない。」
「ほー。」
怖い怖い。近づけない、じゃなくて近づきたくない。
「次に鏑中の虎こと、鯱童廉寺。あくまで噂だが、一子相伝の暗殺拳の使い手らしい。とにかく強いことは間違いない。」
「何それ、怖い。」
世紀末がやって来た。うちの学校にもモヒカンとかたくさん居るけどね。私は逃げる。絶対闘いたくないです。
「最後は霊豪中の鷹こと、木下鷹鷹。岸那とか松谷の後輩だな。プロボクサーを目指しているらしい。」
「じゃあ、喧嘩できないじゃん。」
「まあ、戦闘能力が高いってことだからな。評価ポイントは・・・。」
争わなくて済むなら、それに越したことはない。平和が一番だ。
「まあ細かいことは、あいつらに・・・」
入間が言いかけたところで屋上のドアが開き、岸那と松谷が入ってきた。タイムリーな連中だ。
「おっ!?何か揃ってるな・・・。優君も居るし。」
「ホントだ。夏の海以来か?うう・・・思い出したくないものまで思い出しちまった。」
確かに今日は何か揃うな。千客万来という奴だな。
「ちょうど今年の一年について話していたんだ。」
入間がノートを振りながら言う。
「ああ、さっき鷹鷹が挨拶に来たな。」
「あいつ岸那には挨拶に行った癖に、俺の所には来なかったんだぜ!岸那の右腕なのに・・・。」
「その設定、まだ生きとったんかい!」
誰も覚えてないだろ、それ。まったく・・・
「それにしても・・・」
屋上のフェンスに寄りかかっていた優くんが唐突に言い出した。
「さっきの子、遅くありませんか?」
ん。忘れてた。言われてみれば遅いな。
「ん?花を摘みに行ったんだろう?隣の桜国に行かないと無いんじゃないか?」
木間は的外れなことを言う。いや、女子トイレという意味では合っているかもしれない。殴獄には無いからな。この学校は来客者とか考えないのだろうか?
「もしかして・・・何かに巻き込まれたかも・・・」
「何の話だ?凛堂。」
「いやね、知り合いがトイレに行ったまま戻ってこないんだ。岸那はここに来る途中で何か見かけなかった?」
「一体どんな奴何だ?」
「えっと・・・背が小さくて短いリーゼントの・・・」
私が詳細を伝えると、岸那と松谷はお互いの顔を見合った。あれ?何その反応。
「もしかして知ってるのか?」
「ここに来る途中、そんな奴が絡まれていたような・・・」
「えっ!?何で助けなかったの!?」
「無茶言うなよ、凛堂。この学校では日常茶飯事過ぎてスルーしちゃうだろ。」
入間がフォローを入れる。それは分かるがヤバいんじゃないか?この状況。
「ちょっと皆聞いてくれ!」
私は夢見のことを説明した。夢見が女子だと知って、岸那は顔を引きつらせていた。まあ、私のこともあるしな。ただ夢見は私と違って闘う力は無いだろうから、早く見つけないと!
「直ぐに手分けして探そう!」
屋上の階段を駆け下りている最中に木間の呟きが聞こえた。
「お花摘みって、トイレのことか・・・。」
今更理解したんかい!




