36発目 全国高等学校不良選手権大会 その1 私は勧誘のプロ
「今年もこの季節がやって来たか・・・。」
新学期も始まったばかりのある日、私は校長室に呼び出された。校長は腰の後ろで手を組んで、窓の外を眺めている。おい!人を呼び出しておいて、なに黄昏てんだよ。早く私に説明しろよ。
「で?今度は何なんですか?」
「うむ。」
校長は私に振り向いて言った。
「全国高等学校不良選手権大会だ!」
・・・・・・・・・。校長はキメ顔だ。
「お断りし・・・」
「ま、待ってくれ!話だけでも聞いておくれ!」
「はあ・・・何ですか、その馬鹿っぽい大会は。」
「その名の通り、全国の高校にいる選ばれし不良達が集う大会だ。互いの技や度胸を競い合い、不良高校生の頂点を目指す。まさに無茶とロマンの結晶だな。」
何だよ・・・選ばれし不良って。選ばれたく無えよ。・・・ん?ひょっとして・・・
「俺・・・選ばれてます?」
「我が校の自慢の生徒だからな!エントリーしておいたよ!」
私は黙って校長の胸倉を掴む。よし、殴ろう!
「そんな事言ったって、しょうがないじゃないか。こんな話ができるの君しかおらんし・・・。」
「他にいるだろうが!!」
「こ・・・この大会はチーム戦なのだ。団結力も求められるという訳だな。君には、そのチームリーダーになって欲しくて・・・。」
「だからって私が参加するメリットがどこにある!?」
「凛堂君。君・・・自分の成績が分かっているのかね?このままだと留年だよ?」
「うっ・・・。」
思わず一歩、後ずさる。非常に屈辱的なことだが、私の成績は下から数えた方が早い。この不良高校に入ってから、勉強をしたことは無い。不良は皆勉強しないもの・・・そう思っていました。この学校の不良はやっぱりおかしい。
「もし凛堂君が大会に参加してくれたら・・・成績に色を付けちゃおっかな~。」
「ぐっ!脅しかよ。きたねえぞ・・・。」
「取引と言ってもらいたいな・・・。」
形勢逆転。自業自得。職権濫用。臥薪嘗胆。
「分かりましたよ・・・。やればいいんでしょ。」
「いや~凛堂君は物分かりがいいな~!私はそんな凛堂君が大好きだ!」
私はそんなお前が大嫌い。この校長、いつか必ず滅する。必滅祈願。
校長室を出た私はメンバーの選考に取り掛かった。チームは七人で構成するらしい。毎度毎度のことで申し訳ないが、岸那、松谷、入間、木間に私と五人は確定として・・・足りないな。どうしようか?入間に相談してみるか・・・。
「ああ!全国高等学校不良選手権大会な。そういえば、もうそんな季節か。」
「知ってるのか、入間!?」
「これを知らない奴はモグリだぜ?」
メガネをクイッと上げて言う。私は一生知りたくなかった。こんな大会・・・。
「でも人数が足りないんだ。誰かいないか?」
「う~ん、そうだな・・・。二年の連中に頼んでみたらどうだ?」
「二年の連中?」
「ああ。浜笠とか春達とか。」
「居たね。そんな人達・・・。」
もう記憶の彼方にポイしてたよ。私が派手に暴れまわっても、生徒会長にされても出てこないんだもん。どんな奴らだったっけ?
「『暴走機関』浜笠は柔道部のエースだな。190cmのガタイから繰り出される技は捕まえた相手を一撃で沈めると言われている。小技不要の大味な男だが、寝技の技術も持っている。味方にするなら頼もしいな。一方、『ジャックナイフ』春達は水泳部の飛び込み競技の選手だ。いわゆる優男タイプで女遊びも激しいらしい。我流剣術の使い手で相当できるらしいぞ。」
「何で春達は剣道部に入らなかったんだよ?」
「う~ん、何でも『水泳部の方が女にモテそうだったから』とか『水も滴るいい男、と言われたかったから』とか聞いたことがあるな。」
「ただのアホや・・・。」
出場停止処分は解除されているとはいえ、不良高校の部活だぞ。どの部活に入ろうがモテる訳ないだろ・・・。ん?モテるのか?ひょっとして。まあ、背に腹は代えられぬ。私の進級のためにも力になってもらうとするか。まずは柔道部に行って、浜笠に会おう。
「全国高等学校不良選手権大会?もうそんな季節か・・・。」
浜笠は少し遠い目をして言った。お前も知ってんのかよ!?
「浜笠。お前出たことあるのか?」
「いや、無えな。俺はそれどころじゃなかったからな。」
「うん?部活は出場停止で出られなかっただろ?」
「部活じゃ無えよ。恋活だよ。」
「恋活!?・・・恋人探しの事!?」
「そうだよ!俺はモテないんだよ!」
あれ?私この人に近い人知ってる。パワータイプだし・・・親戚かな?
「大体何で俺が大会に出なきゃいけないんだよ!俺はまだお前のことを認めたわけじゃねえぞ!」
「う~ん、そうか・・・。もし浜笠が参加してくれたら・・・桜国の女の子を紹介してあげようと思っていたんだけど・・・参加したくないのなら仕方がない。残念だ・・・他の人を当たろう。」
「よし、分かった!俺に任せろ、兄弟!」
お前も変わり身が速いな!意外と切実に彼女が欲しいのかもな・・・。それにしてもいい笑顔だな。顔は怖いけど。まあ、いいや。次、次。春達の所に行こう。
「全国高等学校不良選手権大会?何だい、それ?」
「お前は知らないのか、春達?」
「知らないよ。僕は興味ないもん。不良なんて・・・。」
「じゃあ、何でこの学校にいるんだよ?」
「この学校、設備が整っているスポーツ学校だって紹介されて入ったんだけど・・・。騙されたかな?」
いや・・・見れば分かりそうなものだけど・・・。やっぱりアホなのか?
「気に入らないんだったら転校するとか手があったんじゃないか?お金はかかるけど・・・。」
「いや、途中で諦めるのもかっこ悪いかな~と思ってね。芯がブレる男ってモテないでしょ?それに、不良高校から頑張ってスターになるというのも悪くないよね!」
うん、アホだ。間違いない。さて・・・こいつをどう勧誘するか・・・。
「それで?参加してくれるのか?」
「嫌だよ。さっきも言ったけど、興味ないんだ。不良なんて。それに面倒くさいし・・・」
「そうか・・・残念だ。最近は不良みたいなワイルドな男がモテると聞くんだがな・・・。」
「え?」
「それに自分の得意でない分野で頑張る男の姿・・・きっと乙女のハートを掴んで離さないだろうな。」
「そ、そうかな?」
「もし優勝するようなことになったら、一躍スターダムにのし上がることができるんだろうな~。」
「スター・・・。うん、そうだよね!何でもやってみることが大切だよね!」
「そうだ!これでお前もスターになれるぞ!」
「よ~し!頑張るぞ!」
あっはっは!いいな~、能天気は・・・。私の悩みも単純だったら良かったのに。まあ、とにかく人数の方はどうにかなったな。でも大会の内容・・・全然知らないんだけど、大丈夫かな?




