35発目 年賀状
「おっ!年賀状が届いてるな。」
私はポストの中身を見て言った。結構届いているな・・・。意外と皆さん律儀なことで。どれどれ、早速見てみよう。もし出し忘れている人がいたら、失礼だもんな。私は暖かい炬燵の中に足を滑り込ませると、年賀状を一枚一枚丁寧に確認していった。
『あけましておめでとう、葵ちゃん。おばあちゃんですよ。こっちは雪がたくさん降って大変だけど、そちらは大丈夫ですか?体とか悪くしていませんか?くれぐれも気をつけるんですよ?それと年賀状と一緒にお年玉を送ったので、葵ちゃんの好きなように使ってください。それでは頑張ってね。』
年賀状と一緒に届いた封筒の中には、いくらかのお金が入っていた。おばあちゃん・・・変わらないな・・・。自分も大変なのに、私のことを心配して・・・。私だって、もう高校生。いつまでも子供じゃないんだから・・・。まあ、そう思っても心配されるのは嬉しいものだな。・・・さて、次を見てみよう。
『あけましておめでとう!去年は妹の薫共々本当に世話になったな。今年も世話になることが多いかもしれないけど、もし俺にできることがあったら何でも言ってくれ!力になるぜ!今年もよろしくな!岸那進』
『あけましておめでとうございます。岸那かおるです。去年はお兄ちゃんがお世話になりました。りんどうさんが助けてくれたおかげで、私も海に行くことができて楽しかったです。今年もよろしくおねがいします。岸那かおる』
岸那兄妹からだ。去年は危険な目にあったからな・・・。二人がこうして無事に新年を迎える事が出来てよかったよ。機会があったら、また一緒にどこかへ行きたいもんだな。
『あけましておめでとう!入間勇気だ。去年は随分と派手に活躍したよな、お前。まあ、俺の目に狂いはないからな。当然の結果とも言える。といっても、まだ頂点を取ったわけじゃないからな。餅とか食い過ぎて、またデブんなよ!それじゃ今年もよろしく!学校で会おうぜ!』
これは入間からか。そういえば私は、トップを取るとか口走ったんだったな。すっかり忘れていたぞ。あいつの目はセクハラだからな・・・。油断して食い過ぎないようにしないとな。
『あけましておめでとう!去年は色々あったな。よく考えたら、俺はお前と殴りあったんだよな。だいぶ昔のように感じるけど。俺の今年の目標はズバリ彼女を作ること!今年こそ、良い年になりますように!凛堂も応援してくれよな!松谷 大樹』
これは・・・年賀状か?後半はお詣りに行った時にすればいいのに。それにお前には慕ってくれる人がいるじゃないか。そういえば、松谷の名前初めて知ったぞ。高校に入って初めて闘った奴なのに・・・。・・・いや、私が一方的に殴っただけか。
『あけましておめでとう。去年は弟のことで世話になった。あの時お前がお節介を焼かなかったら、今頃弟と笑って話なんかしていられなかっただろうな。感謝している。今後ともよろしく。木間純也』
『あけましておめでとうございます!昨年は僕も兄もお世話になりました。凛堂さんみたいな強い人になりたくて空手を始めましたが、なかなか強くなれません。よかったら稽古をつけていただけませんか?よろしくお願いします。木間優』
木間兄弟か・・・。そうだな・・・あれは完全に私のお節介だったかな?まあ、兄弟仲良くなってよかった、よかった。いつか機会があれば優くんに稽古をつけてやるとするか。・・・あの子、時々不安になるんだよな。
『オッス!俺、阿倍!あけましておめでとう!去年は充実した一年だったぜ。秋季大会はすぐ負けちゃったけどな。まあ、また今年頑張ればいいし、なんとかなるさ。んじゃ、今年もよろしくな!』
・・・軽いな、この男は。やる時はやるんだが、波の激しい奴だ。まあ、それがこいつの個性なのかもな。
『和田だ。あけましておめでとう。去年お前にハゲハゲ言われ過ぎて、俺の毛根が元気ないぜ。今年はスキンヘッドをやめてみようかな?』
・・・いや、『かな?』じゃねえよ。年賀状で言うことか?それにお前の毛根が元気ないのは、私のせいじゃないだろ。・・・髪がふさふさの和田・・・ちょっと想像できませんね。
『あけましておめでとう!雷同だ。昨年は楽しかった。お前には頭を蹴られたり尻を叩かれたりと散々だったが、お前のお陰で夏は燃えたな。ママも喜んでくれた。今年もよろしく。』
確かに・・・私に一番手酷くやられたのはこいつだな。こいつのイメージは失言と『ママ』発言が全てだな。懲りないというか、めげない男だ。
『謹賀新年あけましておめでとうございます。昨年は凛堂さんにお世話になりました。誠に厚く御礼申し上げます。今年も一生懸命に精進致します故、引き続きご指導ご鞭撻の程宜しくお願い致します。アブドーラ・ゴーダ』
誰だ、お前は!?え?どういうこと?アブの奴、片言の日本語しかしゃべらなかったのに・・・。何でこんなガチガチの挨拶なんだよ!しかも無駄に達筆だし・・・。謎が多いな・・・。
『あけましておめでとうございます。去年から始まったお付き合いですけど、末長くよろしくお願いしますわ。あまり堅苦しい挨拶はお嫌いでしょうから、少し砕けて話しますわ。葵ちゃんにね、良いお店を見つけたのでご紹介しようかと思いまして。最寄りの駅から五つ程行ったところにベルシーヌというお店があって、とても可愛らしい服が売ってありますの!きっと葵ちゃんに似合うと思いますわ!それから・・・』
以下省略。長すぎるわ!年賀状だぞ!?ノート一冊分くらいあるじゃねーか!思った以上のアホお嬢様だ!・・・でも・・・可愛らしい服か・・・。一度行ってみるか。
『あけましておめでとうございます。穂高です。今年もよろしくお願いしますね。年末は夏蓮ちゃんの件でお世話になりました。結果は聞かないけど、夏蓮ちゃん、次の日からすごく元気になったよ。ありがとうね、凛堂君。』
命か・・・。クリスマスのあれは結局、命の勘違いだったんだよな・・・。まあ、普通の人間なら・・・勘違いしても仕方がない。
『あけましておめでとうございます!昨年は凛堂さんにお世話になりました。胆試しの時の凛堂さんはいつもと違って、守ってあげたい系男子な感じでした。二面性のある人って素敵。今度は絶対に誰の邪魔も入らない空間でお話ししたいです。今年もよろしくお願いします。河野楼雅』
この子は・・・よく分からないけど苦手だ。私は男と女の二面性だけど、この子は裏にすごい闇を抱えてそうなんだよな・・・。楼雅・・・恐ろしい子。
『あけましておめでとうございます。あの・・・ご存じないですよね。一緒に海に行ったんですけど・・・。初めまして、射同慎と言います。桜国の野球部でキャッチャーをしています。今年こそお話がしたいです。よろしくお願いします。』
・・・・・・う~ん、思い出せないな。どんな子だったかな?お返しの年賀状は出しておこう。
『あけましておめでとう、葵ちゃん。もう都会の暮らしには慣れたかな?葵ちゃんは強い女の子だけど、昔から黙って無理をするところがあるから心配です。何かあったら相談してね。葵ちゃんの友達、恋より』
恋からだ。ボーッとしているようで実によく見ている。無理してたのバレていたのか・・・。昔から恋はそうだよな。私のプライドが傷つくタイミングでは絶対に言わない。そういう優しい厳しさを持っている。
『葵ちゃん、あけましておめでとう。先輩の所にはもう行ったかしら?慣れない土地で大変でしょうけど頑張ってね。もし、人手が必要ならいつでも言って。昔の仲間をかき集めてでも力になるから。魔愚和威閼初代総長平山祐子』
・・・相変わらず、仏恥義離ですね。ホント『今後とも夜露死苦!』って感じです。
『やあ、葵ちゃん。あけましておめでとう。去年は大変だったね。まあ、今年も大変だと思うけど。でも頑張って!何か欲しい発明品があったら言ってね。僕も頑張るから。真戸龍太』
色々と秘密で事を進める人だけど、私のことを考えて動いてくれる。本当にありがたい。・・・でも普通に考えたら変態だよな、あのボディースーツ。
年賀状を読み終えた。バイト先の人からも来ていたし、この一年で交遊範囲が結構広がったのが分かった。それにしても人柄が滲み出るな、文章というのは。私も女らしさが出てしまう・・・ことはないか。私が年賀状を整理して引き出しに仕舞おうとした時、一枚のハガキが足元に落ちた。あれ?まだ読んでいないのがあったか?ハガキを拾って見る。差出人は書いてなかった。そのハガキには短く
『副島道我に気をつけろ』
とだけ書かれていた。




