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29発目 天高く、乙女肥ゆる秋 後編

 二週間後 学校の屋上


「結構痩せたな、凛堂。まだ太いが」

「俺もさすがにマズイと思ってね。動いたわけさ」


 努力の甲斐あって少し痩せた。しかし、まだ体のキレは戻らない。動きがぎこちないのだ。勘が戻らない、と言うべきか。何かが足りない。


「おう!凛堂。ちょっと面貸せや!」


 足りないものを考えていたら、突然声をかけられた。こいつは・・・誰だ?思い出せない。たぶん十把一絡げにできる不良だったと思うが。まあ、断るのも何だから付いていくことにした。


 体育館裏に行くと十数人の生徒が集まっていた。


「この間はよくもやってくれたな!」


 この間って、いつだよ?いや、お前ら誰だよ?ホント覚えてないぞ!


「デブになったって本当だったんだな。」

「あんなデブなら攻撃を当てられるぜ!」

「『アンタッチャブル』っつーか、『あんなデブっちゃたブタ』だな!」

「ハッハッハ!!」


 デブデブデブデブ、うるせーぞ!乙女に対して何てこと言いやがる!私は一番近くにいた生徒の胸ぐらを掴む。


「う、うおっ!?」


 片手で軽々持ち上がる。今の私は体重もあるが、パワーもあるぞ!


「死ね!!」


 掴んでいた不良の顔面に拳打を入れる。おおー、人ってあんなに飛ぶんだな~。自分でもびっくり!


「げっ……」


 圧倒的に人数が多い癖に後ずさる。ハッハッハ!一体、どこへ逃げようと言うのかね?私は指を鳴らして近づく。


「テメーら全員地の果てまでぶっ飛ばしてやる!!」



 その後の結果は言うまでもない。まあ、私も結構殴られたが。雑魚と言えど殴獄生、意外とやりおる。それにしても、かなり騒いだはずだがこの学校の人間はピクリとも動かんのな。生徒はともかく、教師は動けよ。


 私が体育館裏から出てくると知っている顔が見えた。三年の条定だ。私に生徒会長を押し付けた憎き男だ。丁度良いことに、反対の方向を向いている。私はコッソリ近づき、条定の後頭部めがけて正拳突きを放った。完全に悪乗りである。だが、決まらなかった。条定は素早く振り向き、私の腕を掴んだのだ。その時の顔は……正直言って震えた。憎しみに溢れた顔をしていた。


「ん?お前、凛堂か。」


 腕を離した条定の顔は、もう元に戻っていた。むしろ、満面の笑みだ。


「お前、頑張ってるみたいだな!生徒会長」

「あ、ああ。」

「お陰で桜国との中も良好!俺は動きやすくていいよ」

「動きやすいって……」

「モチ、ナンパだよ!」


 そう言って、立ち去ろうとした。


「おい、待てよ!」

「ん?」

「お前、何かあったのか?」

「凛堂。お前には関係ない」


 言い方は柔らかいが、完全な拒絶だった。それ以上の質問は許さない。そういう言い方だった。私は去っていく条定の背中を、ただ見送ることしかできなかった。



 それから二週間後


「すっかり元に戻ったな。痩せるスピードが速すぎる気もするが」

「うん?まあな……」

「ん?どうした?」

「いや、何でもないよ」

「そうか?」


 入間に条定のことを聞こうかと思ったが、止めた。人にはそれぞれ触れられたくない部分がある。それは私だって同じだ。ん?私が元々何キロかって?それこそアンタッチャブルだ!私は筋肉が多いの!

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