表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/49

21発目 メイド始めました。 前編

 ある日、一徹でラーメンをすすっていた時のこと。どこを見るわけでもなく視点を動かしていたら私の目に映ったものがあった。壁に貼られた広告だ。


『バイト募集中!!身分、経歴一切問わず!時給1500円~』


 バイトか。そういえば、バイトしなきゃいけないなと思っていたのだ。いつまでも祖母に仕送りしてもらうわけにはいかない。ここで見つけたのも何かの縁だ。思い立ったが吉日だ!


「親父さん!この貼り紙もらっていい?」

「あ?構わねえよ。どのみち邪魔だから剥がそうと思ってたんだ。何だ?バイトしたいのか?」

「うん。自分の食い扶持くらいは稼がないと……。」

「だったら、ウチでも構わないんだぜ?」

「やだよ。親父さん、口よりどんぶりが先に飛んでくるから」


 私の目の前で『どんぶりコミュニケーション』が何回行われたことか。バイトの入れ替わりが激しすぎる店である。それにここは学校から近すぎる。この貼り紙のバイト先は電車の駅で言えばここから三つほど離れている。それぐらいが丁度良い。職種は喫茶店のスタッフか……。まあ、私でもできるだろう。家に帰った私は店に電話をかけた。どうしても確認しなければならないことがあるからだ。


『はい、こちら……喫茶、メルティです』

「あ、あの、バイト募集の広告を見たんですが……」

『ああ、バイトね。ウチで働きたい、ということかな?』

「はい。えっと、それでですね、身分を問わないって……」

『ああ、大丈夫!学生でもオーケー!履歴書も要らないよ。さすがに面接はするけどね。ラフな格好でいいよ』

「そうなんですか?分かりました」


 どうやら身分は隠し通せるみたいだ。これなら、働けそうだ。私は明日の放課後に面接をお願いして電話を終えた。自分でお金を稼ぐのは初めてのこと。少しワクワクするな。


 そして次の日の放課後。私は電車に乗ってバイト先まで行くことにした。


「地図では確かにここだけど。ここって……」


 とてもお洒落な喫茶店だ。大通りに面した一等地で日当たりも良い。働くにはうってつけの場所だ。ただ『メイド喫茶メルティ』と書いてある。ですよね~。随分と時給が良いとは思ってました。いっそのこと回れ右をして帰りたかったが懐事情を考えると、身分を隠して働ける場所などそう無い。暫く店の前で立ち止まって考えていたら、中から人が出てきて声をかけられた。


「もしかして君、今日面接に来た子?」

「え……あ、はい」


 綺麗な人だった。大人の女性というか何というか、化粧はしっかりしているけど決して派手ではなく、むしろ知性を感じさせるような人だった。私とは大違いだな……。というか、反射的に答えてしまったぞ。


「じゃあ、中に入ってくれるかしら?」

「は、はい」


 結局、店の事務所に招かれてしまった。うー。どうしようかな?


「じゃあ、改めまして、店長の東條(とうじょう)由実(ゆみ)よ」

「初めまして、私は……」

「ううん。本名はいいわ。働いてるのを隠しておきたいという子も珍しくないから……」

「そ、そうなんですか?」

「人によっては恥ずかしいのかも知れないわね。メイド喫茶で働いてるのが」


 私の場合はバレたら即死亡確定なので、そういうのとはまた違うんですが。ただ、本名を明かさないでも働けるなら、それに越したことはない。ん?私、今は女の子ってことになってる?じゃないと、そもそも面接してくれないよな。着ているのは男っぽい服なんだけど……。


「君はどんな名前で働きたい?」

「どんなって……採用してくれるんですか?」

「ええ、即採用。君みたいなボーイッシュな子は、ウチにいないから斬新ね。きっと、モテるわよ」

「そ、そうですかね?」


 あんまり持ち上げられると照れるな。いや、かなり嬉しいんだけど。


「そうね……名前もボーイッシュな感じで、『アオイ』なんてどうかしら?」

「えっ!?」


 それ本名です!ドンピシャです!超能力者か、あんたは!


「そ、それは……ちょっと……」

「そう、残念だわ……。じゃあ、『アイ』でどうかしら?」


 あんま、変わんねー!けど、変えすぎるとかえって反応しづらいか?


「あ、はい。それで、お願いします」

「決定!じゃあ、これからよろしくね、アイちゃん!」

「よ、よろしくお願いします!」

「そうそう、アイちゃん、最初は見習いからね」

「はい」

「教育係の先輩を付けるからね」


 そう言うと、由実さんは部屋の中に一人、招き入れた。


「教育係りのゴリちゃんよ。仲良くね」

「!?こ、こ、こここ、この人は!?」

「見た目は怖いけど、優しいから大丈夫!」


 この体のシルエットは忘れない。ええ、どうしましょうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ