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19発目 ドキッ!不良だらけの目指せ、甲子園!乱闘もあるよ その7 後に残ったもの

「ストライク!バッターアウト!チェンジ!」


 な、何とか後続を断つことができた。最初のバッターは、制球が定まらなくてフォアボールにしてしまったが……。六回の表が終わって、6-2。4点差をすぐにでも縮めたい私達だったが相手は優勝候補、そうは問屋が卸さない。六回、七回と三者凡退に切って取られる。


 そして迎えた八回の表、逆に私は打ち込まれ、1アウト一・二塁のピンチ。バッターは一番、瀬川せがわ。長打は無いがバットコントロールが抜群に上手い俊足のバッターだ。これ以上は点を与えられない!どうしたら抑えられる?私が悩んでいるとキャッチャーの阿部がタイムを取ってマウンドまでやって来た。いつになく真剣な面持ちだ。


「凛堂、俺は頭が悪い。入間のようにお前に的確な助言をしてやることも岸那のように気の利いた一言を言ってやれる訳でもない。だがな俺は仮にも野球部だ。野球が好きでやってきた。それだけは嘘じゃない。だから、その……」

「……?」

「こんな時に言うのもなんだけど、お前には感謝している。お前のお蔭で俺はまた野球をすることができた。しかも、こんな大層な学校を相手に、だ。お前がいなきゃ……いつまでも燻り続けるだけだったろうよ。まあ、初めに机を蹴飛ばした時は、なんて奴だって思ったけどさ」

「阿部……」

「俺だけじゃねえ。口には出さないが、和田も雷同もアブも皆同じ気持ちだ。お前に感謝しているし、お前を支えてやりたいと思っている。だから……」


 阿部は私の後方を指差す。そこには……皆がいた。選手も応援も……。


「バックを信じろ!お前は一人じゃねえ!そしてなによりも野球を楽しめ!」


 こいつ……なんてこと……言うんだ……。誰も見てなかったらワンワン泣いてるぞ……。阿倍のくせに……。


「阿部、ちょっとクサすぎ……」

「!?う、うっせーな!俺は俺なりにだな……」

「分かってるよ。ありがとうな、阿部。お前……かっこいいぜ!」

「お、男にモテても嬉しくねえよ!」


 顔を赤くしながらドスドスと守備位置に戻っていった。阿部、私はお前を軽薄な男だと思っていた。いや、軽いのかもしれないが……なんというか、漢なんだな。お前は『男にモテても』と言ったが……ふふ、私は乙女だぞ。ちょっぴり胸がキュンとしたぞ。


 気を取り直した私は、力まずに投げられたと思う。自分では分からない。だって、野球を楽しむことにしたから。生徒会長になってしまってからここまでダッシュで駆け抜けてきたけど、それまでの間、自分が全部引っ張ってきてると思っていた。知らない間に、そう思っていた。だから、私が全部責任を取らなきゃいけないと思っていた。でも本当は違う。動いたり、お願いしたりしたのは私かもしれないけど、みんな自分の意思を持って動いていたんだ。そう思ったら気が楽になった。


 結局、試合は6-2のまま負けてしまった。私は野球を楽しんだ。心から楽しんだ。でも……涙は溢れてくる。止めどもない悔し涙が頬を伝って落ち、野球場の土に染み込んだ。こんなに泣くのはいつ振りだろう。子供の時以来かな?空手の大会で上級生相手に勝てなかった時以来……。随分……泣いてなかったんだな、私は。


「なかなか面白かったぞーー!」

「また次、頑張れよ!」

「俺、野球部に入ってみようかな?」

「うおーー!!松谷くーーーん!」


 私達は負けた。でも、惜しみ無い拍手が送られた。悔し涙と嬉し涙が混ざるのは、初めてだった。


 それから数日後


「この間の試合を観たって奴等がさ、野球部に押し掛けてきたんだ。まあ、中には女子にモテたいからって奴もいるけどさ」


 あの試合の後、大量の新入部員が入ったようだ。私達がいなくて大丈夫かと心配したが、阿部がキャプテンになって引っ張っていくとのこと。野球部は今回の躍進で脚光を浴びた。地元紙ではあるが取り上げられたくらいだ。おまけに隣の桜国高校との仲も、少しは改善したみたいで彼女を求めてナンパをする奴が後を絶たない。風紀については……もう少し様子を見よう。甲子園に行くことはできなかったが、かつてのスポーツ校の意地を見せることはできたと思う。結果的に殴獄高校の生徒のスポーツに対する気運も高まったようだ。だいぶ暑くなってきた。いよいよ本格的に夏が来るな。


「もう、夏だな……。阿部」

「ああ、来週からプールの授業もあるしな」

「…………へっ?」

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