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18発目 ドキッ!不良だらけの目指せ、甲子園!乱闘もあるよ その6 ドスの利いた応援と黄色い声援が両方備わり最強に見える

 原黒高校との試合が不戦勝になった私達殴獄ナインは、勢いに乗ったのか続く四・五回戦を危なげなく勝ち上がり、とうとう準決勝へと駒を進めた。


「間違いねえ!俺達は強い!」

「松谷、お前ホームラン一本打った以外は全部三振だぞ」

「いいの!俺は大事なところで打つんだから!」


 その0か100のどちらかというのは止めて頂きたい。見ている側はハラハラする。お前のお蔭で打順弄るの苦労するんだぞ……。


「いよいよ準決勝だが……」


 入間は岸那を心配そうに見ながら言う。


「正直、岸那の腕が限界だな」

「だよな……」


 一回戦からここまで一人で投げてるからな。長く練習してきた人間でもきついのに、つい一ヵ月前に練習を始めた素人だ。いくら野球をやったことがあっても、耐久力というのは一朝一夕に戻るものでもない。


「俺も、もう全力では投げられないな……。」

「そうだな。投球はストレートを中心にするしかないな。しかし……」


 入間が手元のノートを広げる。次の対戦相手、天竜てんりゅう高校について事細かく書いてあった。そのノートを見る限り……


「次の相手は優勝候補筆頭、天竜高校だ。弱点は……無い。冷静に分析した俺がこんなことを言うのは気が引けるが、『気合で頑張る』しかない」


 その晩、私は愛用しているネコのぬいぐるみを抱きしめながら考えた。厳しいな……。正直勝つビジョンが全く浮かんでこない。こういう時は何を考えてもマイナスの方にしかいかない。だから発想を逆転させるんだ。戦えて良かった、そういう風に考える。そう、ここまでが出来過ぎなのだ。相手は本来こんな急造チームが戦えるような存在じゃない。どうせやるなら、全力を出し切りたい。ふっ、私らしくなかったな、弱気になるなんて。凛堂葵は一度決めたことはやり通す、そういう乙女なのだ!



 そして試合当日。さすがに常連校。応援団の規模も半端じゃない。ブラスバンドもチアリーディングも豪華である。だがこの日、私達の目には信じられないものが映った。


「おい!野球部!どうせやんなら勝てよーーーー!!」

「わざわざ見に来たんだぞ!負けたら承知しねーからな!!」


 味方を鼓舞しているんだか、脅しているんだか、よく分からないが、殴獄高校側の応援席は殴獄生で一杯だった。それだけじゃない。


「殴獄高校ファイトーー!!」

「キャーッ!!凛堂くん、岸那くん!頑張ってーー!!」


 黄色い声援だ。あれは・・・桜国高校のチアリーディング部。応援に来てくれたのか……。これは、男子はテンション上がるだろう。


「うう……俺、生まれて初めて女子に頑張れって言われた……。生きてて良かった……」

「こんなことなら、ボイスレコーダー持ってくりゃよかった……」

「ママ……産んでくれて、ありがとう……」


 下がっとるがな。いや、上がりすぎて一周してしまったと言うべきか。いいから試合前に泣くなよ、阿部・和田コンビ!雷同、お前……ママって……。


「うおーーーー!!松谷君、ファイトーー!!」

「おい、アレ……練習試合の時、桜国の四番打ってた五里だよな。」

「そうだな、入間。あの体格は間違いない。よかったな、松谷。ロックオンされたぞ」

「岸那、止めてくれ……。モテない俺にだって、選ぶ権利はあるはずだ……」


 約一名、テンションダダ下がりでガクガク震えてる奴がいるが、応援に駆け付けてくれた皆の前で情けない試合をする訳にはいかない!


「優勝候補筆頭だろうが何だろうが関係ない!俺達の野球をやるぞ!」

「「「「「「「「おう!!!」」」」」」」」


 試合は天竜高校の先攻で始まった。さすが強豪校。卒のない攻撃で先制点をもぎ取ると、岸那を攻めたてて五回までに4得点を奪い取った。一方こちらも粘り強いチャンスメイクをして五回までに何とか2点をもぎ取った。一見、良い試合をしているかに見えるが岸那の腕はもう限界に達していた。


 六回の表、天竜高校の攻撃、2アウトランナー 一・二塁。


「大丈夫か?岸那?」

「ふふ……正直言って腕が上がんねー。」

「おい、無茶すんなよ!俺への恩返しとか、どうでもいいからな!」

「大丈夫だ……。俺だって伊達に体張って生きてねー。ここで降りたら、俺のプライドが……な。」

「岸那……」


 だが現実は非情だ。力を無くした岸那の球は、相手の四番に右中間に弾き返され、2点タイムリーのツーベースとなってしまった。ドンマイだ、岸那。


『ここで守備の交代をお知らせします。ピッチャー岸那くんに代わりましてショートの凛堂くんがピッチャーに、ショート凛堂くんに代わりましてピッチャーの岸那くんがショートに、ピッチャー凛堂くん』


「すまねえ……凛堂」

「お前はよく頑張ったよ。後は俺に任せとけ!」


 初めて立つマウンドが鉄火場。だが、他に投げられる奴がいないんだ。自分の精神力と腕に賭けるしかない!皆、バックは頼んだぞ!

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