17発目 ドキッ!不良だらけの目指せ、甲子園!乱闘もあるよ その5 殴獄高校大進撃!
桜国高校との練習試合も終わり、いよいよ地方大会もスタート。一つでも多く勝ち進んでいきたいものだが……。
「う~ん、このトーナメント表を見ると、三回戦で強豪の大正義高校と当たるぞ。」
「大正義高校?どんな相手なんだ、入間?」
「常勝無敗を理念に掲げる強豪でドラフト候補がわんさか居る。例えば……」
入間は手元のノートを広げて見る。こいつ……ホントにすごい情報収集能力持ってるよな。
「150kmの速球と多彩な変化球を持つ速水や、超高校級スラッガー世田谷など、挙げればキリがないな」
「それは……まずいな」
うちには残念ながら、バットを投げる超高校級しかいないからな……。
「俺は女子相手にホームラン打たれちまったしなあ……」
「あれは仕方なくね?だって、あの四番、一子相伝の拳法を使いそうな体格してたし」
「お前はもう、負けている……とか言ったりしてな!」
こら和田と阿部、尻バットが足りなかったか?まったく!失礼な奴だ。まあ、皆の不安も分かる。しかし、先のことばかり心配しても仕方がない。
「まあ、一つずつ丁寧に戦っていくしかないよ」
「そうだな。この間の試合から分析した、各人の弱点補強と長所の更なる強化をやってきたわけだからな。その成果を信じるしかないな」
こうして私達の熱い夏が始まった。初戦の相手は草野高校。これがまた絵に描いたような弱小高校だった。打ってはアブの2ランホームランに始まり、途中で松谷の奇跡の満塁ホームランが飛び出すなど、17安打10得点のお祭り騒ぎ。投げては岸那の要所を締めるピッチングで5安打無得点に相手を抑え込んだ。殴獄高校急造チーム公式戦初勝利であった。とりあえず一勝できて良かったよ。
続く二回戦。相手は堅守好打が光る実力校、晴嵐高校。普通に戦えば勝ち目は薄いが……。
「ふっ、俺は相手ピッチャーの癖を見つけたぜ!そこを突ければ、十分勝機はある!」
入間の助言に従い、今度は足を使った野球を試みた。機動力野球である。再三に渡りプレッシャーを受け続けた相手ピッチャーは、ランナーを背負うとコントロールが定まらなくなった。相手が自滅する形で3点をもらった私達は、そのリードを何とか守りきり、2-3で接戦をものにした。まさに作戦勝ちである。
「意外といけるんじゃね!?俺達」
「嬉しいのは分かるけど、あんまり調子に乗るなよ?阿部。次はあの大正義高校だぞ?」
「いや、まあ、そうなんだけどさ……」
そんな話をしていたら大正義高校の試合を偵察に行った入間が帰ってきた。
「ああ、お帰り、入間。大正義高校はどうだった?」
「凛堂……大正義高校は負けたぞ……」
「何だって!?相手は、そんなに強かったのか?」
「対戦相手は原黒高校という新設校だ」
「どんな学校なんだ?」
「強さは、そうでもない。ラフなプレーも特にない。イケメンぞろいの爽やかな学校だな」
「じゃあ、何で大正義高校は負けたんだ?」
「大正義高校の主力選手が怪我で出場できなかったんだ。主力を欠いては……な」
「怪我か……うちは九人しかいないんだから、余計気を付けないとな」
ちょっと引っかかるものはあったが、この時私はスルーしてしまっていた。
次の日、原黒高校との試合を目前に控え、練習に打ち込んでいた。すっかり日も暮れて辺りは闇に覆われた。空腹も手伝ってか、自然と皆でラーメンを食べに行こうという話になった。『一徹』という旨いラーメン屋が学校の近くにある。昔気質の頑固親父がやっているお店で人気も高い。殴獄高校の生徒も多いせいか、客にどんぶりを投げつけることもある。まあ、この辺ではそれぐらいの気概がないと商売できないのかもしれない。もっとも、どんぶりを投げつけられるとタダになるので、それを狙って親父を挑発する猛者もいる。採算は……たぶん取れてない。私達九人が、その一徹に向かう途中のことだった。
「お前ら、殴獄高校の野球部だな」
後ろを振り向くと覆面をした男達が何人かいた。手にはバットやらパイプやらを持っている。私は入間の話を思い出した。覆面達の目的は……言わなくても分かった。どこの連中か、も。
「はあ……一応聞くが、お前ら何者だ?」
「答えると思うのか?」
「いや、思わない」
「殴獄高校の野球部に警告だ。次の試合、棄権しろ!」
「やだ!」
そんなもん、即答だ。断固拒否する!
「大人しくしておいた方が怪我をしなくて済むぞ!」
「はいはい」
「ふざけやがって!!」
相手は一斉にかかってきた。まあ、特に説明はいらないと思うけど……殴獄高校はこの辺でも有名な不良高校だ。四六時中喧嘩ばっかりしている。こいつらは知らないみたいだけど。
5分後
「お……お前ら……こんなことして……誰かに通報されたら……出場停止だぞ……」
「お前らホントにウチのこと知らないんだな」
その辺に転がる連中を見下ろして私は悠然と言う。ああ・……私もこの学校に随分と染まってしまったものだ。それにしても皆、喧嘩をしている時の顔は生き生きしていたな。
「この辺で殴獄高校の生徒を通報するようなお節介焼きはいないよ。せめて試合は楽しませてくれ。」
私達は気を取り直して一徹に向かった。味噌ラーメン美味しかった。ごちそうさま。
二日後、原黒高校との試合だったが、相手が棄権したため不戦勝となった。何でも主力選手が車に轢かれたとか言ってたが、まあ……誤魔化すのも大変だなって思った。自業自得だ。不戦勝、ごちそうさま。




