10発目 凛堂の家に行こう! 後編
そして土曜日。岸那、松谷、入間の三人は手にコンビニの袋をぶら下げてやって来た。飲み物や食べ物を用意して来てくれたようだ。
「お邪魔しま~す」
「おっ、意外に綺麗じゃねーか」
「棚の中の漫画、全部少女漫画だな……」
靴を脱いで入った三人は、思い思いに部屋の中を見て言う。
「ん?バイク雑誌か。凛堂、お前もバイクに興味あんの?」
「あ、ああ、興味というか……この間乗った時に、な。まあ金が無いから免許を取るとしても大分先だな」
「そうか。まあ、取りたくなったら俺に言ってくれよ。安いところ紹介してやるから」
「ああ、その時は頼むよ」
岸那嬉しそうだな。もし免許を取れたら一緒にツーリングするのも良いよな。……完全に男の青春だけどな。でもバイクに乗る女子がいたって変じゃないだろ。
その後の話題は他愛もない事だ。バイクの話もしたし学校の気に入らない教師の話もした。薫ちゃんの最近の様子も聞いた。とりあえず元気そうで安心した。そして話題が現在の殴獄の状況に及んだ時、入間が深刻そうな顔で言った。
「凛堂、お前完全にマークされているな」
「俺が?何で?」
「お前が次々と一年を撃破しまくったせいだ。近々、上級生に呼ばれると思うぞ」
「うわ……面倒くさっ!」
何?そのステップアップ。いらないよ。私は無事に高校を卒業したいの。人生のステップアップをしたいんだよ。
「まあ凛堂だったら、良いとこまで行けるんじゃね?」
「完っ全に他人事だな、松谷。殴るぞ」
「俺はお前に一撃KOされてから、トップ取りに興味を失ったよ」
諦めの松谷。
「俺は元から興味ない」
無欲の岸那。
「俺はお前に期待している。この入間勇気の目に狂いはない!」
そして委託の入間。お前ら、言いたい放題だな。いたいけな乙女にそんなものを託すな!でも元はと言えば私の失言のせいなんだよなあ……。
「まあとりあえず、それはそれとして……」
「あれ、いっちゃいますか?」
「せーの……」
ん?どうした、お前ら?まさか……
「「「エロ本発掘タ~~イムッ!!!」」」
「ほらよ!」
私はエロ本を投げて渡した。即終了だ、そんなもの。クローゼットの中を見られる訳にはいかんのじゃ!
「えーーーーっ!?それ無いわーー、凛堂……」
三人のテンションが目に見えて落ちていく。萎えるというやつだな。って、お前らその割には本に食いついてるじゃねーか!『おおーー!』とか『これはこれは……』とか言ってんじゃねーか。こら松谷!微妙に腰浮かせるんじゃねー!
そんなこんなで、くだらない時間はあっという間に過ぎていった。このまま何事もなく終われる……そう思っていたのだが……。
「そういえば凛堂。一つ気になることがあるんだが……」
唐突に岸那が言い出した。
「うん?何?」
「お前、一人暮らしだよな?」
「そうだけど?」
「じゃあ、朝から外に干しっぱなしになっている女物の下着は何だ?」
「ファッ!?」
私は振り返ってベランダを見た。女性用のパンツとブラジャーが仲良く風に揺られていた。あ……忘れてた……。昨日部屋の中を片付けた時、せっかくだからと洗って干したんだった。夕方に干したから……すっかり……忘れてた……。葵ちゃん……失敗……失敗。
「凛堂……お前……まさか……」
三人とも疑いの眼差しで見ている。オワタ!これはアウトでしょ。ご愛読ありがとうございました、凛堂葵先生の次回作にご期待ください!……そんな感じだ。
「まさか!彼女がいるのか!?」
「……は?」
あれ?どうなってんだ?何言ってんの岸那くん?
「あれ、彼女の下着だろ!」
「あ、ああ」
「何だって!?一体誰だ!?まさか……桜国生か?チクショウ!ちょっと顔がいいからって……。悔しいですっ!」
お前も結構食いつくな……松谷。お前は桜国生の彼女が欲しいのか?つーか、泣くな!
「なるほど……棚の少女漫画は彼女の趣味か。おかしいとは思ったんだよな」
入間、お前も変な納得の仕方をするな。それは私の趣味だ。悪かったな!
「「「それで?彼女と、どこまでいった!?」」」
……お前ら仲いいな……。これが男子特有の団結力ってやつか。
結局、私は桜国生の彼女がいることになった。嘘の上塗りだ。昔からよく言うよな……。一度嘘をつくと後が大変だって。ホント、そう思う。もう二度と人を家に呼ばないと決心した日になりました。




