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ハチオウジギア  作者: ティーマン
シーズン1 Part2
77/80

77 ザ・スレイング・オブ・殿付⑦

シーズン1最終局面 狂師VSエイトプリンス攻士・殿付



■



 高取の眼前に殿付の巨大な土で形作られた拳が迫る。拳は高速で迫っているにもかかわらず、体感ではスローモーションのように流れ、拳を形作る土や石、草などが一粒一粒までくっきりと把握できた。


 死ぬ訳にはいかない、そう思いながらも高取の身体は硬直して思うように動かない。拳があと数センチで直撃すると思われた瞬間、


「ホゲェェェェェェェェェェェェ」


 遠くで後藤の叫び声が谺して眼前の巨大な拳が砕け散った。破片が降りかかるとようやく身体の硬直が解けて、横へと転がった。


「最初に仕掛けてきた奴だなー、生きていたかー」


 殿付が破壊されて拳を失った巨大な腕を突き出す。


「分配法則!」


 殿付の叫びに答えるように破壊された拳の破片が集まり再び巨大な拳を形作った。


「ホゲェェェェェェェェェェェェ」


 再び、後藤の振動波が放たれた。殿付が巨大な拳に気を展開して振動波を耐えた。


「お返しだー! 分散!」


 巨大な拳から無数の礫が後藤がいる方角へと放たれた。射線上の木々が礫によってズタズタにされていく。遠くで後藤が呻く声が聞こえる。その時、殿付の背後に黒い影が見えた。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 米山が跳躍して殿付の頭に飛びつく。米山は右腕を振り上げると大きく開いた手を光が覆った。彼の光る手が殿付を覆う土の兜に向けて振り下ろされ、頭部を掴んだ。


「悶絶!」


 米山の叫びにより、光に覆われた手が明滅した。


 ピシリ、頭部に微かに罅が入る。米山が舌打ちをした。


「くそ! 破壊できない」


「邪魔なんだー」


 殿付の巨大な手が頭上の米山をガッチリと掴むと地面に向けて叩きつけた。


「ぐあっ」地面に叩きつけられた米山が呻く。さらに殿付は巨大な左足で彼を踏みつけた。


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「潰してやるんだー」


 殿付が足の裏で米山の全身を踏みつけながら、グリグリとすり潰すように動かした。


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「まだまだだー」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「まだまだだー」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 助ける為に高取はふらつきながら立ち上がった。


 タタタタタタタタタタタタタタ、音を響かせながらコールマンが光るペンを構えて殿付めがけて突進する。


「タァァァァァァァァァァァァァ」


 コールマンが殿付の左足めがけて光るペンを一閃。


 高取はその光景を視界に入れつつ、殿付の胴に向けて右腕の刃を勢い良く突き入れた。二人の攻撃がほぼ同時に炸裂した。


「そんな!?」高取は思わず顔を歪めた。突き刺した刃が身体まで届かずに土の壁に阻まれた。同じようにコールマンの光るペンも巨大な左足の表層を抉るだけであった。


「何度言えばわかるんだー、無駄なんだー」


 殿付の眼だけが土の兜から見下すように見えた。その瞬間、巨大な右の拳が高取の頭に叩きつけられてその場に倒れこんだ。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「キャァァァァァァァァァァァァ」


 コールマンにも同じように巨大な左の拳が頭に叩きつけられて地面に倒れ伏した。


「さー、死ぬんだぁぁぁぁぁぁぁ」


 殿付は巨大な両拳と左足を振り上げて高取とコールマン、米山に向けて叩きつけた。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 


「キャァァァァァァァァァァァァ」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 殿付の巨大な両拳と左足が何度も何度も三人に向けて叩きつけられた。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「キャァァァァァァァァァァァァ」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 殿付の巨大な両拳と左足が三人に向けて叩きつけられた。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「キャァァァァァァァァァァァァ」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 殿付の巨大な両拳と左足が何度も三人に向けて叩きつけられた。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「キャァァァァァァァァァァァァ」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 殿付の巨大な両拳と左足が何度も何度も三人に向けて叩きつけられた。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「キャァァァァァァァァァァァァ」


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 高取は巨大な拳の連打を受けながら、痛みで飛びそうになる意識を繋ぎ止めて立ち上がろうとするも再び巨大な拳が背中を直撃して地面に倒れ伏す。その連続であった。血を何度も吐き出し血塗れの仮面の中、高取の耳に足音が響いた。


「はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 後藤の叫び声がして高取は頭を上げた。後藤が跳躍して殿付の右拳に蹴りを放っていた。殿付の巨大な右拳が抉れて土が飛び散った。


「後藤さん……」


 頭上で後藤が宙返りをすると殿付に向かい合う形で地面に降り立った。


 呼応するように殿付は三人への攻撃を止め、踏みつけられた米山から足を外すと後藤へと一歩一歩近づいていった。


「殿付ブシユ、次は私が相手をしよう」後藤が咳込みながら殿付に構えをとった。


「ほー、どうやらこの虫けらよりもできるようだなー」


 後藤と殿付が向き合っている。


 その隙に高取は立ち上がり、ふらつきながら米山を助け起こした。米山から激しい息遣いが聞こえる。コールマンも近づいて高取と挟むように米山を支えた。


「後藤さんの身体は……大丈夫なんですか?」


 高取の問いにコールマンも米山も答えずじっと見守っている。



 後藤と殿付は対峙しながらお互いに相手を図るようにじっと睨みあっていた。


 先に動いたのは殿付であった。巨大な拳を空気を切り裂くようにして高速で殴りつけた。後藤は動きを察してその場で跳躍して回避。さらに後藤は両手で三角形を形作り、殿付に向けた。


「ホゲェェェェェェェェェェェェ」


 後藤の両手から振動波が放たれた。殿付は振動波を避けるようにバックステップで避けた。


「ホゲェェェェェェェェェェェェ」


 さらに後藤が空中で振動波を放つが殿付がバックステップで避けた。


「ホゲェェェェェェェェェェェェ」


 後藤がさらに振動波を放ち、殿付がバックステップで避けた。


 高取は後藤が殿付を高取たちから距離を引き離すように誘導していることに気づいた。


「今のうちに体力を回復させなさい」


 コールマンの言葉にはっとした高取は二人の戦いに目を向けながらもこの少しの時間で体力を回復させるべく、呼吸を整えながら気を集中させた。コールマンと米山も同じように整えるのが伝わった。



◆



 後藤は高取たちの位置を確認した。ここまで距離をあければ、彼らも回復する余裕があるだろう。


「ちょこまかとー、するなー」


 殿付が巨体とは思えない身軽さで跳躍して、後藤に蹴りを放った。


「スローブ!」


 後藤が叫ぶと右腕の周囲が揺らぎ、そのまま殿付の蹴りを受け止めた。後藤は右腕を覆う振動波により肉体への直撃を防いでいた。そのまま二人は轟音を響かせて地面に着地した。


「こらー、調子に乗るなー」


 殿付が怒りを露わに巨大な拳を叩きつけるも後藤の右腕によって蹴りと同じように防がれた。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


 殿付は叫び声を上げると後藤に向けて巨大な拳と蹴りを次々に放った。後藤は右腕で受けた攻撃は直撃を免れたが、やむを得ず左腕や両足で防いだ際には打撃が直撃して呻き声を上げた。


「ぬうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」


 殿付の巨体を使った乱打に防戦一方となっている。


 どこかに隙はあるはずだ。殿付が攻撃を仕掛ける際、一瞬の空白が生じた。見えた。


 後藤は左の手を広げるとそこに振動波が発生した。振動波による丸い塊が形作られていく。


「コウアギュラ!」


 後藤は左手で振動波の塊を握りしめ、殿付に叩きつけるように放った。気づいた殿付が受け止めようと右手を大きく広げた。


 ドガァン! 振動波の塊が殿付の巨大な右手を粉砕した。土と石が乱れ飛ぶ中、殿付の上腕部が剥き出しとなり、振動波で切り裂かれ血が飛び散った。


「なんだとー!? 分配法則!」


 殿付は大声を上げるも瞬時に冷静さを取り戻したのか、血が滲む右手を握り締めると土と石を纏わりつかせて巨大な拳を復元した。


「許さないんだー!」


「コウアギュラ!」


 後藤は再び左手に振動波を作り、塊を叩きつけた。殿付が左手で受け止めると巨大な左手が抉れて石や土が飛び散った。


「分散!」


「ぬぅ!?」


 飛び散った石と土が後藤の胸に向けて一斉に集まって直撃、後藤は衝撃で背後の木に激突した。


「分配法則!」


 殿付は抉れた左手に再び、土と石を纏わりつかせ、そのまま木にもたれかかった後藤に突進した。後藤も殿付に向かって駆け出し、両者が激突する。二人の激突で激しい轟音が巻き起こった。


 ドガガガガガガガ! 後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛んでいる。周囲の地面は抉れ、殿付から外れた振動波が木々にぶつかり枝を折った。後藤を外れた石や土が木にあたり幹がズタズタになっている。


「分散!」


「コウアギュラ!」


 振動波と石礫がぶつかり火花が散った。


 ドガガガガガガガ! 後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛び、振動波と石礫が衝突し火花が散った。


「分配法則!」


「スローブ!」


 ドガガガガガガガ! 後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛び、振動波と石礫が衝突し火花が散った。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」 


「はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「分散!」


「コウアギュラ!」


 ドガガガガガガガ! 後藤は振動波の塊を握ったまま、殿付の右腿にぶつけた。殿付の土による装甲が砕け散り、腿に振動波がぶつかり血が飛び散った。殿付は直ぐに腿の装甲を復元すると後藤に向けて、巨大な右拳によるボディーブローを放った。後藤の腹部に巨大な拳が叩き込まれて背後に吹き飛んだ。


 後藤は背中を擦りながら地面を滑っていく。そこに殿付が跳躍し、巨大な足で後藤を踏み潰そうとした。後藤は咄嗟に横に転がって回避、殿付に飛びかかった。


 後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛んだ。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 


「分配法則!」


「スローブ!」


 ドガガガガガガガ! 後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛び、振動波と石礫が衝突し火花が散った。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「分散!」


「コウアギュラ!」


 ドガガガガガガガ! 後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛び、振動波と石礫が衝突し火花が散った。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」 


「分散!」


「スローブ!」


 ドガガガガガガガ! 殿付は巨大な手を開いて後藤に向けると手を構成する土と石を高速で射出した。

 後藤は振動波を纏う右腕を掲げて頭を防ぐ。しかし、剥き出しの身体には容赦なく土と石の礫が叩き込まれた。


 後藤はそれでも礫の嵐を進んで殿付に向かった。後藤の拳と殿付の拳がぶつかりあい、蹴りが乱れ飛び、振動波と石礫が衝突し火花が散った。


「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなんだー」


「はいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


「コウアギュラ!」


「分配法則!」


 ドガガガガガガガ! 振動波を伴う拳が殿付の胸部を覆う土の装甲を破壊、胸部を直撃した。殿付は呻き声を上げるがすぐに胸部の装甲を復元して強烈な蹴りを後藤に放った。土でできた巨大な脛が後藤の脇腹に叩き込まれて、後藤は倒れそうになるも足を踏み締めて耐えた。


 二人の拳が再びぶつかりあい、蹴りが乱れ飛び、振動波と石礫が衝突し火花が散った。




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