76 ザ・スレイング・オブ・殿付⑥
シーズン1最終局面 狂師VSエイトプリンス攻士・殿付
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「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
四人は斬撃、打撃を高速で繰り広げた。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
さらに四人は斬撃、打撃を高速で繰り広げた。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
四人の叫びが森の中に谺した。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
四人は斬撃、打撃を高速で繰り広げながらじょじょに足場を移していった。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
四人は激しい攻防をしながら、足場を移していくと周囲の木や枝が折れて木片が舞い、地面が抉れて土が飛び散っている。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
三対一の乱戦は、高取に息をつく暇さえ与えない。
高取の刃と土の剣がぶつかり合う甲高い音が、森に響き渡った。
光るペンを構えたコールマンが右から斬り込めば、すかさず左から拳が飛ぶ。さらに背後から米山の拳が唸りを上げて突き込まれるも、殿付の蹴りがぶつかる。
殿付はまるで風のように滑るような動きで攻撃の線を読み、最小限の動作でいなしていく。
肩口をかすめた刃の軌跡がスーツを薄く裂き、米山の拳が頬をかすめた瞬間、殿付は逆に体を沈め、光るペンを蹴り上げた。
「くっ!」
コールマンがよろめく。そこへすかさず、殿付の肘打ちが突き刺さった。
間髪入れず、高取は横薙ぎに斬り込んだ。殿付は後ろへ跳ねて刃を躱すと、着地と同時に足払いを放つ。その一撃が高取の膝を刈り、体勢を崩したところへ、鋭い蹴りが胸板を打ち抜いた。
「がはぁ」
高取は負けずに刃が再び閃き、軌跡を描く。高取はコールマン、米山と息を合わせ、間断なく攻め立てる。だが殿付は紙一重の距離で攻撃をさばき返す。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
打撃、斬撃、突き、三者三様の殺意が一点に集中するたび、戦場の空気は鋭く張り詰め、火花が散った。
わずか一人で三人を相手取りながらも殿付の眼差しには焦りがない。これが攻士の力、高取は歯軋りした。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だぁーだーーーーーーーーーー」
攻防の中で刃、光るペン、拳が殿付に接しない状況が発生した。殿付が微笑むとその一瞬に左手で土の剣を掴んで叫んだ。
「移項!」
土の剣が分解し、殿付の左手側に土が吸い寄せられるように動くのが見えた。土が球状になり左手との間に浮かんだ。
高取の目にはそれら一瞬の光景がスローモーションのように見えた。
「危ない!」
「展開!」
殿付が再び叫ぶと球状の土が光り輝いて、轟音を響かせて爆発した。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
高取は散弾のように飛び散る土の直撃を受けて背後に吹き飛ばされた。コールマンと米山も同じように爆発で吹き飛ぶのが見えた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「キャァァァァァァァァァァァァ」
二人の叫びを聞きながら高取の全身に無数の礫が激突。激しい痛みを感じながら地面へと転がるように落ちた。そこに土の礫で折れた大木が高取に向かって倒れ、高取の胴に直撃した。
「ぐはぁっ!」
木の下敷きになった高取は血を吐く。痛みを感じながらも頭を動かすと土の散弾により周囲の木々が薙ぎ倒されていた。倒木の間にコールマンも倒れており、なんとか起き上がろうとしている。その背後から殿付が跳躍して近づいた。
「コールマンさん!」
高取が叫んだ時にはコールマンの背に殿付による空中からの右膝蹴りが炸裂していた。
「キャァァァァァァァァァァァァァ」
コールマンが苦痛の悲鳴を上げた。そこに痛みを耐えているのだろう、よろめきながら米山が走ってくると拳を放った。殿付は立上がって拳を左手で受け止めると右手を米山の首にかけた。
「がぁっ、このやろ」
「苦しませてやるんだー」
殿付はコールマンの背に乗ったまま、米山の首を握ったまま、宙吊りにした。殿付の右手に力がこもり、米山が苦しそうに呻いた。
高取は気を集中する。刃を光が包んだ。倒木に挾まれたまま身体を殿付に傾けて右腕を振りかぶった。
「しっぺ!」
高取が右腕の刃を振り下ろすと刃から光の斬撃が放たれ、高速で駆け抜けた。
「なんだー!?」
気付いた殿付は驚いたように叫び、躱そうとするが脇腹に斬撃を受けて米山を振り捨てた。後ろによろめいた殿付の脇腹には二筋の裂傷がありスーツに薄っすらと血が滲んでいた。
高取は痛みを噛み殺して一気に倒木を跳ね上げて再び、刃に光を宿して殿付に向かった。
「しっぺ! しっぺ! しっぺ! しっぺ!」
高取は左右の刃を交互に袈裟に斬り、光の斬撃を殿付に向けて放った。
「この虫けらめー!」
殿付が高取を睨みつけると両腕を前に構えて防御姿勢をとり、光の斬撃を腕に受けながらバックステップで背後に向かった。斬撃が両腕のスーツを切り裂いていくが脇腹の初撃とは違い、気による防御で浅い傷に押さえられていた。
「ハァ、ハァ、大丈夫ですか?」
高取は息を切らしながら倒れたコールマンの横で立ち止まった。コールマンが頷いて立ち上がると米山も首を押さえて立ち上がった。
殿付が袖から腕にかけてボロボロになった上着をはたくと三人に憎悪の視線を向けた。
「虫けらの分際がー、よくもやってくれたんだー」
殿付はそう言うと上着とネクタイを脱ぎ脇へと放り投げた。地面に落ちた上着の内ポケットに携帯端末が見えた。
殿付が右足を振り落として地面を蹴りつけた。
「かっこ外し! 分配法則!」
地面が抉れて、再び土の塊が両腕を覆うと今度はゴツゴツとした大きな手を形成した。
「すり潰してやるんだー」
高取が殿付の声を聞いた時には殿付の巨大な右拳によるボディーブローが腹に叩き込まれた。
「うがぁぁぁ!」
高取はまたも血を吐いた。そのまま、殿付は米山の顔面に左拳を打ちつけると右拳を高取から外してコールマンにアッパーを見舞った。
高取は両足に力を込めて倒れないように踏ん張った。コールマンもアッパーを受け吹き飛ぶも片膝立ちで着地、米山もよろけながらも頭を振って立ち続けた。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
高取は右腕の刃を振るって斬りつけるが巨大な右拳が受け止めた。
「タァァァァァァァァァァァァァ」
コールマンも光るペンで突きを入れたが高取の刃を受けた拳をずらして土で防いだ。
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
米山が指を広げて殿付の頭を掴もうとするも巨大な左拳が防いだ。
「だだーだーーーーーーーーーー」
殿付が三人の攻撃を弾き飛ばすと刃、光るペン、拳、土の拳が入り乱れた攻防が開始した。
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
殿付は巨大な土の拳を高速で叩き込んできた。高取は刃で斬りつけながらも合間に打ち出される土の拳が腹や頭に打ちつけられ打撃による痛みが蓄積していく。コールマンと米山も同じように打撃を受け続けていた。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だだーだーーーーーーーーーー」
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だだーだーーーーーーーーーー」
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だだーだーーーーーーーーーー」
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
攻防を繰り返していくが高取とコールマン、米山の攻撃はなかなか届かず、殿付からの打撃のみが三人に直撃していった。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だだーだーーーーーーーーーー」
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
それでも高取は殿付を倒すために刃を繰り出し続けた。初めは高速で巨大な拳を繰り出す殿付の動きについていけなかったが、かすかに攻撃の軌道が見えてきた。少しずつ殿付に攻撃が当たるようになり、精度が高まっていく。周りを把握する余裕も少しながら出てくるとコールマン、米山も高取と同じように思っていることが感じ取れた。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だだーだーーーーーーーーーー」
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
超人に覚醒し様々な戦いを短期間に繰り返した高取は戦いの中で勘のようなものが芽生えてきたのではないかと攻撃を受けているにも関わらず冷静に考えていた。じょじょに殿付による高速の動きが僅かながら見えてくるとそこに一瞬の隙があることに気づいた。
「ハァァァァァァァァァァァァァ」
「タァァァァァァァァァァァァァ」
「うぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「だだーだーーーーーーーーーー」
ドガガガガガガガガガガガガガガ!
高取は攻防の中で殿付が三人の攻撃の軌道を読んで巨大な拳を掲げた。
「今です!」高取は殿付の隙を捉えて思わず叫ぶと身体を沈めた。殿付の巨大な拳が頭上で空を切り、高取は低姿勢で突進しながら刃で右足を薙ぎ払った。殿付の右脹脛から鮮血が迸る。
「ちっ!」
殿付が僅かにバランスを崩した。すかさずコールマンが光るペンを突いた。殿付は胸中央を浅く突かれ、後によろけるとそこに米山が脇腹に拳を叩き込んだ。
「ぐわーだぁぁー」
米山の拳を受けた殿付がついに背後に尻もちをついて倒れた。高取、コールマン、米山はここぞとばかりに刃、光るペン、拳を浴びようとするが殿付はその場で横回転して攻撃を避け、三人の攻撃がむなしく空を切る。
「ぐっ!」
横回転した殿付がバク転を繰り返して距離をとった。殿付が自らの身体についた傷を見て、舌打ちをして嫌悪感を滲ませたような表情を浮かべた。
「生意気な奴らだー、少しこらしめてフシモリに従わせてやろうとしたがー、もうやめだー、お前たち三人は完全に存在を消してやるー」
殿付は叫んで気を集中させると周囲の空気が張り詰めた。
「連立方程式!」
殿付の叫びで今度は地面が揺れた。轟音と共に地面が抉られて隆起すると土煙をあげて土や石が次々に殿付に吸い寄せられていった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ、轟音はさらに大きくなり周囲の木々が揺れ、数十羽の鳥が空を舞った。
殿付が大技を仕掛けようとしているのだろう高取に緊張感が走る。コールマンと米山が目の前の土煙に向けて構えをとると高取も刃を向けた。轟音が響く中、土煙の向こうから強力な力の蠢きを感じた。
「何が起きているんです」
「わからないが……こいつはヤバイぞ」
「これが攻士……見て!」
土煙がじょじょに晴れていき、三メートルはあろうかという歪な巨人が現れた。
「な……何です!? あれは……」
殿付の全身はゴツゴツとした巨大な岩状の土に幾重も覆われていた。岩状の土に覆われた腕や足、胸は三倍以上の太さはある。頭もドーム状の兜のように覆われ、目だけがこちらを見ていた。巨大な殿付が一歩踏み出す、震動が高取を揺らした。
「死んでもらうんだー」
殿付が冷酷に告げると巨体に似合わず俊足で突進すると巨大な足で蹴りを放った。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「キャァァァァァァァァァァァァ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
防ぐ間もなく高取、コールマン、米山に重い蹴りが直撃して三人は吹き飛ばされた。
高取は十数メートル吹き飛ばされて木に激突。木の幹を粉砕して背中から地面に落ちた。激痛が全身を襲う、高取はそれでも頭を起こすと地響きを立てながら殿付がこちらに向かってくるのが見えた。
「だだーだーーーーーーーーーー」
目の前まできた殿付はその巨大な拳を高取に振り下ろした。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
巨大な拳による一撃が高取の頭から腹にかけて直撃。重い一撃を受けて全身の骨が軋み痛みが駆け巡った。
高取は殿付が今まで戦ってきた敵とは比べ物にならない能力を持つ存在であることを痛感した。だが、このまま殿付にやられる訳にはいかない、リトルグレイに辿りつくまでは死ねない、高取は気力を振り絞って頭を上げた。
高取の霞む目に殿付がさらにもう一撃繰り出そうと巨大な拳を振り上げているのが見えた。




